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八ノ書「溢れ者勇者」

訳の分からない理由で戦いを挑んできた大男を倒した後僕は試験を受ける為に勇者協会の受付まで来ていた。さっきまで僕を見てヒソヒソ何かを話していた人たちが僕に対してさっきとは違う何か怯えるような様子になっている気がする…


「ようこそ、勇者協会運営の勇者試験受付へ」


「あ、どうも…」


「今週の勇者試験の参加受付でお間違いないですか?」


「はい、お願いします」


「ではこの書類に必要事項を記入してきてください」


「分かりました」


なんか勇者の試験って聞いてたからもっと厳しい感じなのかと思っていたが銀行みたいにすんなり進んだ。

書類に目を通すと知らない文字のはずが何故か読めるようになっている。


「なんか不思議な感覚だな…」


「どうしたんですか?」


「あぁ、レオ。これって何を書けば…?」


「注意事項だけ読んであとは名前書くだけでいいっぽいですね」


「あ、そんな簡単なんだ。ありがとう。えーっと注意事項っと…..。なになに?この試験は当協会の直接の運営で行われており、不正や命の危険行為に関わる行動した者はモントールの騎士団に報告後捕縛されます、クリーチャーは近辺の洞窟や巣から捕獲してきた個体です、試験中に命を落としても責任等は当協会は取る事は出来ません。ご了承…くださ…い…」


「どうしたの?レント」


「い、い、命を落とす!!?」


「わぁっ!びっくりした!」


「命を落とすって!そんな危険な試験なの?!」


「そ、そりゃそうだよ!クリーチャーとも戦わなきゃだし最後は一対一の対決、人によっては殺す気で来る人もいるから…」


「えぇ…こ、怖っ」


「でも、レントなら大丈夫です!絶対勝てます!」


正直命を落とすかもしれないと聞いてやめたいと思ったけど、レオの言葉は何故か信じれる。さっきも勝てると言ってくれた。おかげで勇気が出てあの大男に勝てたし。ここまで来たんだ。レオを最後まで信じよう。僕は名前を書き書類を提出した。


「ご記入ありがとうございます!試験開始まで今しばらくお待ちください」


ふう、何とかエントリーまで行けた。

試験開始までどのくらい時間があるんだろう。

出来ればここに居たくないけど……離れたら分からなくなりそうだしやめとこうかな


「レント、私は試験の観戦席に行きます。早く行かないと席無くなっちゃうし…。応援してますね!」


「うん、分かった。ありがとう」


さて本格的にまずいぞ。レオも居なくなってしまった。この周りからの目に耐えながら開始までここで待つのはかなりの地獄だ。


「あのーすみません」


「は、はいっ!?」


突然後ろから声をかけられた。振り返るとそこには緑髪で短髪の中性的な見た目の青年が立っていた。


「あぁっ!すみません脅かしてしまって!さっき外で狂狼と戦ってた方ですよね?」


「狂…狼…?」


『俺は狂狼!狂狼のヴィンザイ!』


あぁー、あいつそういえばそんな二つ名だったな。


「そうです…けど」


「僕はヘルフーリヤ。ヘルフって呼んでください」


「は、はぁ…」


「あぁ!!すみませんいきなり名乗っても意味わからないですよね!あは、あはあははは!ぼ、僕この街に初めて来て…っていうか自分の村から出るのも初めての経験なんですけど…そのせいで知り合いがいない状況がちょっと不安で…。で、でもあなたのあの戦いを見て勇気をもらいました!あんな体格差がある相手に怖気付くことなく立ち向かう…僕の勇者像まんまのかっこよさでした!」


「あ、ありがとう…?」


なんなんだ?この人。凄いグイグイと僕のパーソナルスペースに入ってくる。


「その剣かっこいいですね!どこの鍛冶屋で作ってもらったんですか?やっぱドルグンテとかみたいな鍛冶が盛んな国ですか!?」


「え、えっとぉ…」


まずい。光の剣は伝説の剣って言われてるくらいだから伝承やおとぎ話の中のものみたいな認識で合ってるはずだ。それを持ってるなんて言ったら騒ぎになりかねないぞ…ここはテキトーに嘘つかなきゃ…どうしよう。そうだ!レオみたいに…!


「これはうちの兄が僕に預けてくれたやつなんだ。兄は元々勇者だったんだけどとてつもない怪我をしてしまってそこから僕が兄の勇者継ぐためにここに来たんだ」


「そうだったんですね…!勇者はいつも死と隣り合わせの命をかけた職ですからね。さぞ立派なお兄さんなのでしょうね」


「そうだね。すごく立派な兄だよ」


全く疑ってない。良かった。

死と隣り合わせ…か。


「あの、良かったら試験が始まるまで一緒にいませんか?僕たちこの中で絶妙にあぶれてる感じもしますし」


「…たしかにな。連れも観戦に行っちゃったし……じゃあそうしようか」


「やったぁ!!ありがとうございます!」


試験はまだ始まってないのに凄い疲れる一日な気がする。でも僕なりにこの世界についての理解がかなり深まってきた。このヘルフという青年からレオとは違う世界についての情報が得られるかもしれない。



九ノ書に続く

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