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七ノ書「勝手にテスト」

協会の中に入った僕達にはかなりの視線が向けられていた。周りではヒソヒソと何かを話している様子だった。


「レオ、なんかすごい見られてるよ?僕たち」


「みたい…ですね」


「なんかしちゃったのかな…?」


どうしよう、この状況すごく怖い。

そう脅えていると背後に何かおぞましい空気を感じた。


「おい!貴様ら!」


「ひっ!」


「まさか今日の試験に参加するつもりじゃないよな?」


そう言ってきたのはとてつもない巨漢だった。

背中には巨人が持つような斧を背負って顔には複数の傷をつけた悪人顔。怖すぎる。


「そうですけど?」


なんでレオはこういう時真顔で平然と答えられるのだろう…。


「ふっふっふっ…はーっはっはっはっ!!笑わせてくれるじゃねぇか!姉ちゃん!」


「何がおかしいの?」


「おかしいに決まってるだろ!お前たちみたいな貧弱な奴らが突破できるほどこの試験は甘くねぇ…。俺様はこの試験で三回目。お前達には無理だ、諦めな」


「無理…?そんな事ないと思いますけど?」


「イキがるのも大概にしときな。姉ちゃん。勇者試験がどういうものかってのは知ってるのか?」


「ええ。もちろん。試験内容は二つ。一つは指定されたクリーチャーの討伐。二つ目は一つ目の試験でクリーチャーの討伐にかかった時間が短かった上位二人による戦い。一回の勇者試験で合格できるのは勝ち残った一人」


「そうだ!そして勇者試験は一週間に一度。毎試験毎試験化け物みたいなやつがいたせいで俺様の覇道を邪魔されたが今回ばかりはそうなる事はねぇ。ただ、お前らみたいな雑魚共が参加した試験で勝ち残っちまったら要らねぇ噂が立っちまうかもしれねぇからな!今回の試験は諦めろって話だ」


「何それ、意味わかんない」


いや、意味わかんないけど!!レオさん!正直過ぎるよ…!てか再度言うけどなんでそんな冷静にこの強面相手に対応ができるの!?てかこういう時は敬語じゃないんだ…?ど、どうしよう…この状況…


「ちっ、生意気ばっか言いやがる。勝ち残る自信が相当あるみてぇだな?」


「私が?あるわけないじゃない。でもね勝ち残るのは私の勇者。彼よ」


「へっ!?ぼ、僕!?」


「こんなもやし野郎がか?ハーッハッハッハっ!笑わせるじゃねぇか!」


なんで僕に振るんだぁ!!


「てめぇ、名乗ってみろ!」


「ぼ、僕ですか…!?」


「てめぇ以外に誰がいんだよ!」


「す、すみません!僕の名前は…レント。レントです!」


「レント…。おもしれぇ、この嬢ちゃんがそんだけ大口を叩けるほどの何かがあるって訳だ。そうだろ?」


まずい…まずいぞ…この流れ…


「いいだろう…試験前の肩慣らしだ…ちょっとツラ貸せ!お前らを試してやる…!」


そう言うと大男は外に出て行った。


「レオ!ど、ど、どうするの!?」


「決まってます!あの人を倒すんです!」


「倒すって!無理だよ!あんな強そうな人!」


「レントなら行けます!」


「む、無理だよ!!」


「行けます!!いいから!やってみて下さい!」


「えぇっ…!?」


「おい!!!早く出てこい!!」


外から爆音の催促が飛んできた。僕は覚悟を決めた。

やるしかない…!


「今…い、い、行きます!」


外に出ると野次馬がゾロゾロと集まっていた。


「おい、あれ狂狼じゃねぇか…?」


「相手は誰だ?あの細っちいやつか?」


「また怪我人が増えるぞ………」


野次馬はザワザワと何かを呟いている。


「よーやく出てきたか!覚悟は決まった…ってことでいいか?」


「決まってはないです…」


「そうか…じゃあ行くぞ…!」


「結局じゃん!決まってなくても来るじゃん!」


「俺様は狂狼!狂狼のヴィンザイ!!勝手にお前が勇者に相応しいかテストしてやるよ!まぁ結果は分かっているがなぁ…お前はここで不合格だァっ!!」


狂狼と名乗る男は大きな斧を振りかぶるとこちらに凄まじいスピードで飛んできた。

死ぬ、死ぬぞこれ。


「お、終わった…僕ここで死ぬんだ…」


諦めたその時。


「レント!!」


レオの声が耳に響いた。そして思い出した。

僕はレオの勇者になると約束したことを。

こんな所で負けてられない。

僕は剣を抜き構えた。


「っふぅ…」


「死ねぇぇぇ!ヒョロがり!!!」


「『瞬光次尖』」


僕は体が動くままに動かした。僕が突き出した剣は天を指していた。目の前で斧を振っていた巨漢は居なくなっており代わりに後ろから血の吹き出る音が聞こえた。


「グハァッッッ!!!」


「へっ?」


振り返ると斧を振っていたはずの男が倒れていた。

それに気づいた途端周りからは歓声が起こった。


ウォォォォォォォォォォ!!!


「あの弱そうなやつが勝ったぞ!!」


「なんだ…今の?見えたか?」


「早すぎる…すげぇ!」


ありとあらゆる声と内容が聞こえて半ばパニックだ。


「レント!!流石です!」


そこにレオが駆け寄ってきた。そこでようやく理解した。僕があの男を倒したのだと。僕は一体どうしてしまったんだ…?この剣がまた助けてくれたのか?

まぁでもとりあえずあの男の勝手なテストには合格したってことでいいの…かな?


「レント、じゃあ行きましょう。試験へ」


「う、うん」


一瞬で色々なことがありすぎて脳の処理が追いつかない。でも本来の目的に戻るべきだとは僕も思っていた。男の周りには既に応急道具を持った人たちが集まっていた。死ぬことは無いだろう。であれば試験に向かって良さそうだ。

これでハッキリした。僕は戦える。転移前の僕とは数段違うレベルにいるんだと。覚悟が決まってきた。

レオを守る、レオの勇者になるために僕はこれから試験に挑む…。


八ノ書に続く。

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