六ノ書「ここが勇者協会」
翌朝。目が覚めるとレオの姿はなかった。
前日の夜はとても重たい話をさせてしまったから、どこか気分が悪かったりするのかもと心配になった。
「おはようございます!レント!!」
「うわぁっ!」
急に部屋のドアが開きパンを持ったレオが現れた。
「パン買ってきたの!朝はちゃんと食べないとね!
今日は勇者協会に行くんですから!はい、どーぞ!」
「あ、ありがとう」
レオは昨日の話をまるでしてなかったかのように天真爛漫な様子だった。敬語とタメ口が混じりあっててそこはまだ頑張ってる感じだけど………。まぁそれはそれでレオらしくていいのかな。
「お、このパン美味しい!」
「ですよね!昨日宿屋に来る途中に美味しそうだなぁって目つけてたんです!!」
「さすがレオさん」
「むっ。その言い方私が食いしん坊とでも?」
「いや、別にそういう意味ではァ…」
「というかそんな事言ってないで早く食べてください!早速行きますよ!勇者協会!!」
「あぁ!ちょっと待って!!」
パンを食べ終わるや否や落ち着く暇もなく宿屋から引きずり出されてしまった。
街中には剣や武器を背負った人達が大勢見えた。
それも強そうな人とか強面の人とか…
「レオ…なんだか危なそうな人達ばっかだね…」
「ここは勇者協会の本部がある国ですよ?そりゃ勇者が集まって当然よ」
「勇者…?彼らも勇者なの?」
「少なくともこの国で武器を装備してるってことはそういう事。勇者協会の認定を受けていない人は武具の所持は認められないから」
「そうなんだ…。って…僕やばくないですか…?」
「あ、えっと勇者協会が運営している勇者候補選別試験って言うのがあって、そこに参加する予定の人も武器の所有は大丈夫なの。でも試験がある日以外は装備してちゃダメなんです」
「今日はじゃあその試験があるってことか」
「そうですよ?それにレントも参加するんですから」
「そっかそっか。………………ってえぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」
し、試験だって?!不味いことになった。
確かに冷静に考えれば書類を書くだけで勇者になれるはずはないけど…そんな試験なんてものがあるなんて…間違いなく落ちる…てか死ぬ
「レオ…僕にはちょっと無理だよ」
「無理じゃないですよ!!ポイズンウルフを斬ったあの時私は確信しました。この人は本物の勇者だって。だから自信を持って!」
「あれは…!その…僕が僕じゃなかった…というかなんというか…そもそもなんであんな剣術が使えたのかも分からないし…」
「そんなうじうじしなくても大丈夫ですよ!レントならできる。そう信じる!」
「そんなテキトーな…」
「ほら、着きましたよ!!」
「えっ…?」
僕がウジウジしている間に勇者協会の本部に着いてしまった。大きな建物の入口上にはこれまた大きな看板が着いており入口もかなりの大きさだった。
「さ、中に入りますよ!」
「あ、レオ…待ってよ!」
中に入ると当然広く人がわなわなと集まっていた。
これが勇者協会。これから僕はどうなってしまうんだろう。不安だ。まずは何とかして試験を乗り越えなきゃ…
七ノ書に続く。