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五ノ書「亜人類」

モントールに着いた僕達は宿屋に泊まることになった。着いた宿屋はなかなかにボロ………趣がある宿屋だった。レオ曰く、


「2人分の宿屋のゴールドはここがギリギリなので我慢してください!!」


との事。そりゃそうだ。僕はこの世界のお金なんで持ってないし。ボロボロなのは仕方ない、でもひとつだけ思うことがあるとするなら…


「レント?もう寝る?」


「なぁんで同じ部屋なんだぁぁぁぁぁ!!」


まさかの同部屋。女子と2人屋根の下。まずいぞ。

僕はこんな状況味わった事なんて無い。洞窟の中とかではなるべく離れて寝るようにしていたけれどこの部屋ではひとつのベッドで一緒に寝るしかない……。

要するに離れようにも離れらない。どうしよう。


「嫌…?私と同じ部屋は」


「いや、そういう訳じゃないけど…、その色々とまずいかなと」


「まぁ嫌って言われても変えられないですけどね!ここしか空いてないって言うし!」


「そ、そうだよね!」


落ち着け僕。変な気を起こして嫌われてこの宿屋から出てかれたらこの世界にコミュニケーションの取れない別世界人が一人ぼっちになってしまう。

そうなれば………即死だ…。

平常心を持て。落ち着け。僧のような気持ちでいるのだ。


「レント…?大丈夫……?」


「だ、大丈夫。大丈夫。南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…」


「大丈夫そうに見えないけど…まぁもう寝ようか。

明日は早いよ?」


「南無…」


「それ返事なんだ。おやすみレント」


レオが部屋の証明を消すと部屋には月明かりが差し込んでいることに気づいた。

背中に感じるレオの温かさに心のドキドキが地震のように鳴り響いた。

静まれ、静まれ、頼む。


「ねぇ…レント…」


「ひゃ、ひゃい!?」


「気になってるよね…亜人って言葉が」


「!」


「聞かないの?亜人について」


「なんでそれを…?」


「あの衛兵が亜人かどうか聞いた時私の事すごく見てたから。気になったのかなって。違う?」


「正直…気になってはいるよ。聞いても…いいかな?」


「うん。この世界では常識だからね。忘れてしまっているならお話しなきゃ」


レオは浅く息を吸うと少し溜めてから話し始めた。


「この世界にはね。色々な種族がいるの。人間、クリーチャー、悪魔、神、そして亜人類。クリーチャーは知性を有していない本能で動く害をなす者。悪魔は知性を持った上位のクリーチャー。神は普通の人間は関わることの出来ない絶対の存在。そして亜人類は人間を裏切った五族を意味する…」


「人間を裏切った…?」


「そう。数千年前。今とは違って亜人類は人間と親しかった。亜人類の里や村だっていっぱいあったわ。でも三千年前、闇の神が中央公国ヴァルキリアに現れて世界中に向けて闇を放った。その時スアイ、リーン、ワンド、三つの強大な王国のそれぞれの王は剣を取り戦った。そう、人間は闇の神と戦ったの。でも亜人類の五族のうちの三つの族が人間を裏切り闇の神に着いた…」


「なぜ…?」


「自分達を守る為…。闇の神の力は絶大だった。勝てるはずがない状況だった。最初に裏切ったのはオーガ族。闇の軍勢がオーガの里に攻めてきているのが分かったオーガたちは近くの人里を襲い、生贄と称して人間の命を差し出したの」


「そんな…」


「次に裏切ったのは、ドラゴニュート族。彼らは国の門を開き中央公国から三大国に繋がる道を明け渡してしまった。マーマン族は人間との共同戦線に応じていたにも関わらず海の底に逃げていってしまった。残りのドリュアス族と…私達エルフ族は人間と共に戦っていたけど、他の三族の裏切りを聞きつけた人間達に制圧されてしまったの」


「じゃあ…」


「そう。私たちの村もその時に………。今でも覚えてる。味方だと思っていた人間達が鬼の形相でこちらに剣を振るってくるあの悪夢を…。でも裏切ったのは亜人族。仕方の無いこと…。それ以来人間達の間では亜人に対して敵対の念が生まれてしまった。特にスアイの周辺では亜人は嫌われていて数少ないドリュアスやエルフの仲間も見つかって処刑されたなんて話も聞いたことがあるくらい…。人間にとって私達亜人はクリーチャーと変わらないのよ…」


「…………」


「ごめんなさい…。重たい話をしちゃって。私がバレないように必死にしていたのにはそーゆー理由があったんです…。この話を聞いてレントが私の事どう思うかは自由です。私達亜人は受け入れなきゃ行けない罪があるから。話してたら疲れちゃいました…。おやすみなさい。レント」


「うん……おやすみ…レオ…」


亜人族の罪……。この世界での亜人の扱いは大体分かった。嫌われている理由も。レオが感じた恐怖や疑問は僕は痛いほど理解できる。でもそれを憎いと思わず受け入れ耐えているレオはきっと僕なんかよりも辛い思いをしていると思う。だから僕はこの日決めた。

何があっても僕はレオの味方で居ると。

闇の神が放つ闇よりも深い差別の闇から必ずレオを守ってみせる…。



六ノ書に続く。

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