四ノ書 「いざモントールへ」
あの洞窟の戦いから2日後。
僕達は森を抜けモントールという国の近くまで来ていた。この国にはこの世界中にいる勇者のサポートや管理を行う「勇者協会」というものがあるらしい。
正式な勇者になるには勇者協会の承認を得ることが必要なんだとか。要は僕はこの勇者教会で勇者として認めてもらう為にモントールに向かっているのだ。
「レント、見えま…見える?あれがモントールの城門で……城門よ」
「ようやくかぁ…あれが城門…」
「あの城門以外にモントールに入る方法はないんで……ないの」
「あの…レオ…?」
「城門に入る前に荷物や目的を申告しなきゃいけないので注意してください。あっ…注意して」
「やっぱ…無理しなくてもいいよ?言葉使い」
「いいえ!そーゆ訳には行かないの!約束だから…初めて対等になんて…言われたから…頑張ります…!いえ、頑張る」
「そっか…ありがとう」
「こちらこそ………」
何?この…空気
「とにかく、あの城門を潜ろう。さぁ行くわよレント」
「う、うん」
レオは僕の腕を引っ張りグングンと進んで行った。
ある程度門に近づいたところでレオはマントを取り出した。
そして僕に持っている荷物を全部押し付けるとマントのフードを深めに被った。
「あの、レオさん?これは…?」
「色々…あるんだ…。とりあえず荷物の検査はレントが行ってくださ…行ってほしい」
「…まぁいいけど」
どこかレオの表情は曇っていたように見えた
深く被ったフードでよく見えなかったけど…。
門の目の前まで行くと衛兵と思われる門前に立っていた怖い男に声を掛けられた。
「おい、そこの2人」
「は、はひっ!」
「入国希望者か?」
「そ、そうです…」
「……怪しいな。荷物と目的を申告しろ」
「え、えーっと…その…」
「なにか…やましい事でもあるのか?」
あーどうしよう。怖すぎてなんか言おうとしてもなんも言えない。こういう時に陰キャな自分がより嫌いになるんだよなぁ…
なんて考えてたら見兼ねたレオが前に出てくれた。
「私たち、兄妹なんです」
「兄妹だと?」
「はい。私たちは兄妹でずっと旅をしてて、兄は人見知りをするので私は仕方なく着いてきてるだけなんですけど…。本当は家の農家を継いで欲しいんです。でも兄は勇者になりたいって聞かなくて。だから諦めさせるために勇者協会で試験を受けさせようと思って」
「ほう…」
凄い。息をするように純度99%の嘘を吹き込んでる。後しれっと僕が陰キャで人見知りをするっていう1%の真実だけ入れてる…。
「まぁ…いいだろう。荷物を見せてもらう」
「は…はい…」
「怪しものは持ってなさそうだな…。よし。荷物はいいだろう。そこの女。お前はマントの中を見せろ」
「分かりました」
レオは頷くとマントを捲りあげた。フードは外さずに。
「怪しい物は…無いな」
「ではもうよろしいですか?」
「…一つだけ確認だ」
「なんでしょう」
「亜人では無いだろうな」
「っ!……違います」
「そうか。ならいい。通れ」
亜人という響きにレオが少し怯えるような反応をしたようにみえたのは気のせいだろうか。
まぁ何はともあれ街に入ることが出来た。
「なんとか…入れましたね」
「レオ、息するように嘘つくからびっくりしたよ」
「あぁでもしないと納得してくれないと思ったんです。結果通れたから良しですよね!」
「そう…だね」
「とりあえず宿を探しますか」
「宿?勇者協会に行くんじゃ?」
「私たち2日も森の中にいたんですよ?今日はゆっくり休んで万全の状態で試験に臨みましょう」
「まぁ、それもそうか。よし、宿屋に行こう!」
「はい!」
僕たちは宿屋に向かう事にした。
明日の試験はどんな感じになるのだろう。
それも気になるけど1番気になるのは、亜人という言葉。レオがそれをどう思っててこの世界ではどういうものなのか。僕はそれが気になって仕方がなかった。
レオに聞けたら聞こう。どんなに重い理由があるかも知らずに僕はそう思ってしまっていた。
「あっ!!」
「どうした?レオ」
「また敬語になっちゃってたァァァ!!!」
「はははは…」
この調子で大丈夫なのだろうか。不安だ。
五ノ書に続く