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十六ノ書「雨後」

勇者試験は無事に終わり僕たちは宿に戻ってきた。

試験が終わるや否やレオはしばらくの間僕に抱きつき泣いたまま離してくれなかった。


「よがったぁぁぁぁあ!!よがっだですぅ!!レントおぉぉぉぉ!!!うわぁぁぁぁぁん!」


「わ、分かったから!離してよレオォ…!」


試験が終わったからと言ってすぐに勇者になれる訳ではないらしくまた明日正式な勇者登録に行かなきゃいけないらしい。


「今晩は豪華なご飯にしましょう!私が奢りますよ!レント!」


「ほんと!?嬉しい!」


「じゃあ、この国の一番人気の酒場でもどうですか?」


「酒場?ぼ、僕未成年ですけど…」


「えぇ…じゃあ…ジュースですねレントは」


「な、なんかごめん」


「まぁ!それはいいとして!行きますよ!レント!」


「あ、あぁ。もちろん行くんだけど。先に行っててくれない?一つ行かなきゃいけない場所があって」


「行かなきゃいけない場所?どこですか?私も行きます!」


「あぁいいよ。大した用事じゃないから。すぐ行くよ。待ってて」


「じゃあ…分かりました。ほんとすぐ来てくださいね!」


レオはすたこらと宿屋を出ていった。

さて向かおう。ちゃんと話しておかなきゃ。

僕は宿を出るとモントールの裏門へとやってきた。

空はすっかり暗くなり綺麗な星空が広がっている。

これは都会じゃ見れない景色だ。転移してきてよかった。この景色だけでもそう思える気がする。

しばらくするとフード姿の男が歩いてきた。


「やぁ。待ってたよ」


「なんでここに……!」


「君はスアイに向かうと思ったんだ。ヘルフ」


男がフードをとるとヘルフの姿があった。


「ふんっ…よく顔を出せたな…僕の夢を途絶えさせた癖に」


「僕にも譲れない理由があった。そこはお互い恨みっこ無しの約束だったろ?それに君のことが気になって仕方なかったんだよ」


「どこまで馬鹿でお人好しだよ。僕は君を殺そうとしたんだぞ」


「それも真剣勝負の約束だった」


「話になんねぇな」


ヘルフは僕の横を通り過ぎ裏門を出ようとした。


「ヘルフ」


「…」


「やめとけ。捕まるのがオチだぞ」


「説教なんか聞かないさ。それにお前が負けてくれてれば捕まらなかった」


「ヘルフ…。頼む。君と本当の友達になりたいんだ。過去ばかりでなく未来を見て欲しい。僕なら君の未来を照らせる」


「余計なお世話だ。馬鹿野郎」


「ヘルフ…なんで…」


「……レント。お前は僕とは違う。真の勇者になれるだろうな。僕は勇者の道は諦める。悪魔だなんだと言われてもいい。目的を果たすまでだ。じゃあな。レント二度と会う事は無い。せいぜい頑張って生きろ」


ヘルフは夜の闇へと消えていった。


「僕は諦めないぞ。ヘルフ。必ず阻止してみせる」


ヘルフは多分諦めていない。勇者になれなかったからといって復讐をやめることは無いだろう。僕は何としても止めなければヘルフがこれ以上辛い思いをするのを止めなきゃ。次に向かうのはスアイにしよう。

そう星空を見ながら心に誓った。


「おっそーーーい!!どこにいるんですかぁ!!レントぉぉ!!!」


待ち合わせの酒場がどこか聞き忘れたせいで街で迷った結果レオとの合流に三十分もかかりこっぴどく怒られてしまった。レオは食になると怖いと再認識した。トホホ…


十七ノ書に続く

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