十四ノ書「竜巻は蝶の羽ばたきで起こる」
ガキンッ!キンッ!
何度も何度も剣をぶつけに向かってくるヘルフ。
僕は反撃もできず一方的に受けているだけだ。
「守ってるだけか!臆病者!!」
「君が…そうなった理由を教えろよ!ヘルフ!」
「黙れ!お前に言ったところで何もわからん!」
ガキン!
「クソっ!なぜ届かない!!諦めろ!レントォ!」
「さぁさぁ!どーする!レント君!豹変したヘルフ君の攻撃に何も出来ない様子だぞ!!!」
「ヘルフ…っ!」
ガキンッ!
お互いに弾かれれて飛ばされた。体勢を整え向かい合う。
「お前の夢なんて甘いんだよ…。レント…!」
「ヘルフ…」
ビュンッ!ガキンッ!
「くっ!!諦めろよ!!!」
「嫌だ!僕は勇者になるんだぁ…っ!」
「そんなに兄が大事か!!人の為なんかに勇者を目指すやつはいつか死ぬっ!お前は勇者にふさわしくない!!!」
「君はっ……!君はどうなんだ!ヘルフ!君も誰かの為に勇者を目指したんだろ!!」
「ふんっ、あんな嘘をまだ信じてるのか??僕が誰かの為に?ふざけるな!」
キンッ!
「はぁっ!」
キンッ!
「くっ!じゃ、じゃあ!なんの為に勇者になるんだよ!君が本当に命を懸ける理由はなんなんだよ!」
ガキン
剣と剣がぶつかり、金属が擦れる音が響く。
ヘルフの絶え間ない攻撃は落ち着き、俯いたまま動かなくなってしまった。
「ヘルフ…?」
キンッ!
「うっ!!」
急に動いたと思ったら弾かれただけでやはり追撃はしてこない。
「…………ふっ…ふっ…あはははッ!」
急に笑いだした。怖。
「そんなに気になるなら教えてやる。レント…。お前がいかにぬるい甘ったれた覚悟で戦っているか。それを知るいい機会だ…」
「…。頼む」
「裏切り者の五族の話は知ってるな。亜人と呼ばれる奴らの中にドラゴニュート族という奴らがいた。あいつらは元々人間と敵対関係にあった種族だったのだがあるスアイ周辺国家付属の村の村長らは奴らとの和平を結ぶことに成功した。以降ドラゴニュート族は人間と対等で平等な関係を約束した。スアイはその功績を称えその村はスアイからの永遠の加護と竜天人という小中国の公爵レベルの地位を村の全員とその末裔までにも与えるという大層な報酬を授け村のヤツらも大いに喜んだ。その村の名前はタツマキ。平穏な日々を過ごし幸せだった。しかし三千年前。ドラゴニュート族が闇の神との戦いで人間を裏切った。国境の門を自ら開け闇の軍勢の中央諸国への侵攻を手助けしてしまった。これにスアイの当時の皇帝は激怒しドラゴニュート族とそれと親しい竜天人を滅ぼそうとした」
「なぜ…竜天人も…」
「裏切ったその当時スアイ皇帝は竜天人にもドラゴニュート族掃討作戦の協力を頼んでいた。しかし竜天人はこれを拒否。結果反逆罪の汚名を着せられたんだ」
「…」
「竜天人はスアイが自分達も殺すつもりだということにいち早く気づき村を捨て誰も知らない山奥へと移住しそこに新たなタツマキを作って暮らした。三千年間見つからずに暮らしてきた。………でもそれも終わってしまった…。馬鹿な現村長が外の旅人を助け、その旅人が伝記に出てくる竜天人のようだったとスアイ中に情報を流してしまった。結果タツマキは見つかり馬鹿たれ以外の竜天人は殺された…」
「ヘルフ…君は…」
「僕のせいだ…。僕が弱かったせいで…愛する者も子供も救うことが出来なかった…。残された僕にできる唯一の償い…それは仇をとる事…スアイの現皇帝とその跡継ぎも全員僕が殺す…。僕たちにしたように」
「そんな事したって君が失ったものは戻らない。殺された人たちも喜ばないぞ!ヘルフ、賢い君なら理解できるだろう!」
「関係あるか!僕は復讐を果たすと故郷と死んでった仲間たちに誓ったんだ…!勇者になればスアイにも武器を持ったまま堂々と入れる…!後は謁見とでも嘘をついて王族を殺すだけだ…」
「そんな事…させない。僕がここで君を倒す」
「理解できないか。お前には」
「いや、痛いほど分かるよ…理不尽に奪われる。傷付けられる悲しみや辛さが…」
「じゃあ…どけよ。勇者の席を譲れよ!!」
ヘルフはまた僕に向かって突っ込んできた。
ヘルフが抱えている闇を知った今僕に何が出来る…?
僕の声はヘルフに届かない。ならここでヘルフを倒して僕が勇者になる。そうすればヘルフの計画は達成できない。僕はヘルフを倒す。ヘルフの為にも…。
十五ノ書に続く




