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第70話 新たな道



「まず私が確認したいことは全部で五つあるわ。

 一つ目は水龍さまがいる中央湖までの行程と結界を破る方法。二つ目はそれに伴う妖精達のエネルギーの消費の仕方。三つ目は水龍さまの起こす方法。

四つ目は水姫が王国内に出国不可能と言われてる点について。

 あとは宝珠と妖精達不在の状態での湖と森の維持の仕方と水龍さまが起きた後の話かな。

 何か異論や質問はあるかな?」


『とくにないわ』

『我等もじゃ』

 森の長とリリスさん、ニウさんも同じ反応だった。


「ありがとう。まず水龍さまがいる中央湖までの行程と結界を破る方法を教えて」

『わかった。まずは中央湖までは距離があるからクウの転移術を使う』

「転移術?」


『……クウが神官の家系出身だった話はしたよね。神官として修行を積む中で会得する術式もあるけど、転移術はクウの家の中で稀に産まれてくる特異な術式なの』

「そうなんだ。あれ? でも、たしか……」

『うん。妖精に身を落とした時に神官として学んで得た力は封印されたけど、生来の持って生まれた転移術は封印出来なかったみたいなの』

「そういえば、封印って誰にされたの?

 水龍さま……はもう眠ってたよね?」

『誰って……神様なの』

「かみさまーー!? 神様いるの?」

『何を今さら……。当たり前じゃろ。

 創造神様がいらっしゃるからこそ、この世界はあるのじゃ。何より水龍さまは創造神様がこの世界に遣わした神の代理なのじゃから』

『そうよ〜。ミレイ……今更よ?』

「はあ……」


 どうやらこの世界の一般常識みたいね。

 私が思ってたよりもファンタジーみたいね〜。だから全ての水を操るなんてことができるのね。


「じゃぁ。サンボウとロスも?」

『?……そうじゃ?』


『話が反れてる気もしますが……』


『おおそうじゃった。 

 中央湖まではクウの転移術を使う。そこでおそらくクウは全ての力を使い切るじゃろう。

 湖に着いてからは姫が宝珠の腕輪を身につけ、わしが指輪を身につける。姫とロス、わしの三人で湖に潜り、龍王国に通じる結界まで泳ぐのじゃ。結界に辿り着けばわしが術式で結界を破るから、その隙に姫とロスが結界内に侵入するのじゃ。

 侵入口から王宮、最奥の『王の間』までの案内と護衛はロスが務める。ただし ロスの妖力はほとんどわしがもらい受けるから 物理攻撃でしか姫を守れんのじゃ。すまんがそこは了承してくれ』


「……」


 とりあえず黙って聞いてたけど……


 なんか一人ずつ脱落?していくみたいな……。


「ちょっと待って、さらりと話してるけどそれが最善策なの……かな? 湖に到達した時点でクウは……?」

 チラリとクウを見ると、クウは目尻を下げて微笑むだけだった。


「いやいや、それは……だめでしょ!」

『大丈夫なの。それにどちらにしても湖の中までは行けないの。転移術の後にクウの力が残っていたとしても全部サンボウに渡す予定だから』

「…………なんで?」

『サンボウの妖力だけでは結界を破るには足らないから予め自分やクウの力を渡しておくのじゃ。クウは残りの力全部。自分は姫の水牢を維持する力を残して、じゃな』


『たしかにミレイは人間だから中央湖の湖底まで息が持たないわね』

「でも龍湖の湖底はいけたよ」

 ウンディーネの言葉に反論してみる


『比べ物にならないわよ〜。大きさは無いけど龍王国と人間の国を繋ぐ湖だからとんでもなく深いのよ』

 アウローラは片手を振って、その浅はかさを笑った。


『姫、大丈夫なの。前からそのシナリオだったし、覚悟はできてるから』


 妖精達はみんな笑ってる。

 ウンディーネが言ってた覚悟とはこの事だったんだ。……でも納得できないよ。



「……あのさ。その潜る日も満月の夜とか決まりがあるの?」


 妖精達は互いの顔を見てキョトンとしながら

『……いやないな』

『強いて言えば見通しが良いほうがいいから晴れの日の昼間じゃな』

「……なるほど。中央湖も森の中にあるんだよね? 

 人間が歩いて森に入ることは可能なの? そこまでの道は?」


『歩いて? 何を言ってるのじゃ?』


 ロスは心底分からないという顔をしているか、クウとサンボウは私か何を言いたいか分かったようだ。 


『姫?……まさか……』

『いや、でも無理なの』


「リリスさん。地図はありますか?」

「!!……あるよ。ちょっと待ってな」


 リリスさんはそう言うと小走りに奥の部屋に入って行った。ニウさんが私の隣にきて頭をガシガシ撫でてくれた。私はみんなに向き直り

「ここから中央湖まで馬でいけないかな? 

 もし可能ならクウの転移術を使わなくてすむでしょ?」


『なるほどね……』

「あったよ!!」

 ウンディーネの呟きとリリスさんの声が重なる。


「私はこの国のことも道もよくわからないから、ニウさん教えて」

 地図を拡げて、ニウの意見を乞う。


「……教えるのはいいけど、そもそも中央湖ってどこにあるんだ?」

「……えっ!?」


「「……」」

 沈黙が流れる。


 人間二人のコントのような遣り取りにアウローラが溜め息混じりに説明してくれた。


『……知らなくて当たり前なの。 

 中央湖は特別な場所だから人間が入れないように目眩ましがしてあるはずよ。そうでしょ?』


 サンボウがコクリと頷き、がっくり項垂れた私に妖精達がふよふよと集まってきた。


『……森の入口までは人間でも行けるの。そこからはクウの転移術を使えば入れるから。入れないのは人間だけなの』

「でも、それじゃぁクウが死んじゃうよ!?」

『大丈夫じゃ。南の龍湖から中央湖までの長距離だと負担も大きいが、森の入口から湖までなら大した距離ではない。のう、クウ?』

『うん。その距離なら大丈夫なの』


 パア〜っと表情を明るくした ミレイにロスが新たな問題を提示した


「しかし馬でと言うが、かなりの距離だぞ? 

 我等は人混みで姿を見せるわけにも行かないし、誰が道案内をして、どうやって姫を守るのじゃ? 

 ……姫の黒髪黒目はこの世界では異質じゃ」

 場がシーーンとなる。


 そっか。人攫い……。

 先日のアリッサの一件を思い出す。たしかにあれは少し怖かった。


「それなら任せてくれ」

 沈黙を破るようにニウが身を乗り出した。


「超常現象みたいなことは無理だけど、人の力でできることなら協力させてくれ」

「ニウさん!」


 嬉しくて思わず 満面の笑みでニウを見つめると照れくさそうに笑った


『……わかった。協力してくれ。

 中央湖の場所は…………ここじゃ』


 サンボウが躊躇いながらも地図の一箇所を指さした。てっきり山の奥深くに存在するのかと思いきや、以外にも平地だった。離れてはいるが、近隣の村も点在しているみたいだ。


「えっ? ここ?」

 私以上にリリスさんとニウさんは驚いていた。


「ここはたしか……昔神殿があったはずだよ。今は廃墟となって動物もいないから狩猟もできないし、森が深いから誰も近寄らな……あっ!?」


『そうじゃ。力寄らないのではない、近寄れないのじゃ』


「ここだと……馬を飛ばして三日、いや、馴れないミレイと一緒だと四日はかかるだろうな」

「そんなに……? ニウさんも一緒に来てくれる?」

「もちろん行くよ、行くけど……」

 そこまで言って少しの間考えこむ。


「途中の街で馬を乗り換える必要があるけど、ミレイを街に泊めて人攫いに目をつけられるのは避けたいんだ。ミレイ自身の危険もあるけと、やつらが追ってきた場合、森の前で人が消えたら森に興味をもつだろう?」

『……それは避けたいわ』


「そうするとミレイは野営することにならないかい? 夜は治安も悪いし野犬も出るよ」

「……そうだよな」

「野営は大丈夫だけど……」


『身を隠しつつ野営をするつもりなら、うちのワズを二匹連れて行って下さい。人間はワズを恐れるのでそれだけで近寄らないでしょうし、夜の番も出来るので、他の獣からも守れます』

「それはありがたい!」


 長の提案にニウが食いつく。


「よし、それなら街からそれたこの古い街道をつかおう。二日目にこのハプン村の近くで馬を入れ替え、食糧と水を補給する。でもミレイは街に入らず、ワズと休憩だ。その間に俺が街まで往復する」

「それだとニウさん疲れちゃうよ」

「俺は慣れてるから平気だよ。そこからさらに行軍して、森まで行くはどうだろう?」


「ハプン村で馬を入れ替えるなら馬車にしたらどうだい? だってミレイは中央湖に着いたら潜るんだろう。疲れた体で潜るのは危険だよ」

「たしかに……。でも馬車が廃神殿のある森の前で停まったら目立つんじゃないか?」


 今度はリリスさんがたしかに……と言って黙り込む。


『それなら馬車に水甕を多めに乗せなさい。森の前と転移術を行使してる間、精霊が馬車を隠すわ』

「そんなことできるの?」

『ミレイあなたね〜。私を誰だと思ってるの水の上位精霊よ』

「そうだった」


 ハハッと笑う。私の思いつきにみんなが次々と案を出してくれること嬉しい。


『……それなら他の精霊を呼びましょ。ウンディーネは妖精達と湖に潜って、ミレイを水牢で護ってちょうだい。それなら騎士団長さんの力も温存できるんじゃないの〜』


 アウローラの提案にロスが目を剥き、サンボウはみんなに頭を下げた。


『……みな、ありがとう。みなの力添えをもらえるならクウもロスも失わずにすむかもしれん』

 サンボウは肩を震わせて、声を殺しながらなら伝えた。


『サンボウもなの! 転移術に使わない分、クウの妖力のほとんどをサンボウにあげることができるの。そしたらサンボウの生命を燃やさなくても大丈夫なんじゃないの?』

『それは……』

『精霊が力を貸してくれるなら自分の妖力も多目に渡せるぞ! 上手くいけば、再びみんなで龍王国にもどれるかもしれん!』


 ロスもサンボウの肩を掴み、熱を帯びた口調で話かける。妖精達にとっては消えるしかないと思っていたのに、もしかしたら消えずにすむかもしれない、再び水龍さまに会えるかもしれないと希望が湧き上がってきた。


「私の涙は回復薬なんでしょ? 涙を瓶に詰めたら携帯できないかな?」

「まだ出発日も決まってないんだから、いろいろと試してみるといいさ」


 リリスさんの提案にみんなが頷いた。


 「とりあえず行程と妖精達については目処がたったね。次は水龍さまを起こす方法だけど、何か知ってる?」


みんなが意見を出し合い、思いのほか早めに次の議題に進むことができた。この調子ならサクサク進むかも!

 ミレイは一人心を踊らせていた。







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