第4話 妖精達の出陣
「何だか変ね〜」
今日は朝から変なのだ。
キッチンで野菜を洗っていたら、くるぶしの辺りがずっとチクチクするし、耳の辺りて蚊が飛んでるような気配もする。お裁縫をしている時は何故か布が反射して見えづらくなり、針で思いきり刺してしまった。
「疲れてるのかしら? 」
リリスさんは朝から村長さんの家に行っていて居ないのだ。お世話になっているし、出来るだけの事はしたい。
「水汲みの前に少し休もうかな」
ソファーで少しごろんとする。
心地よい疲れと、暖かな日差しで不意に眠気がやってくる。
「少しだけ〜……」
ミレイが眠りに落ちた頃、ソファーの上に投げ出された足元に三つの光がふよふよしていた。
『今、なのじゃ? 』
『チャンスなの〜 』
『敵はソファーにあり!──なのじゃ』
『なんじゃそれは? 』
『? 』
『前に読んだ本に書いてあったのじゃ。
ヒゲおやじが寺? というところで殺されての。可哀想なお話だったのじゃ〜』
内容を思い出したのか、小さな木の枝を片手にしくしく泣き始めた。
『お主が泣いてどうするのじゃ』
『そうなの』
『すまぬ……』
『各々、スプーンは持ってきているな? 姫の涙はおそらく一瞬じゃ。心してすくうぞ』
『うむ』
木の棒を捨て、小さなスプーンを取り出す。それぞれが腰のベルトにスプーンを指す。
『よし。では──敵はソファーにあり!──じゃったか? 』ぽそりと呟く。
『!! 』
泣いていた顔がぱあっと輝くも、もう一人が訂正を入れる。
『いや。敵ではないし、姫なの〜』
『良いのじゃ。雰囲気作りも大事なのじゃ! 』
フイと横を向く。もう一人は無言でコクコク頷いている。
『……わかったの』
『コホン。では皆の者、しゅつじん、じゃー! 』
『? なんじゃそれは? 』
『? それも本の内容なの? 』
『そうじゃ。一度、言って見たかったのじゃ』
頬に手を当て、腰をクネクネさせている。
少しの間を置いて、残りの二人も顔を見合わせ……
『しゅつじんじゃー! 』
──微笑ましいものである。