第3話 妖精達の決意
良い天気だなぁ……。
ぼーっと窓の外を見ると、小鳥のさえずりが聞こえてくる。窓から差し込む朝日は木々のゆらめきで柔らかく、心地の良いものだった。
日本にいた時は私は入社三年目で、仕事にも少し慣れて新人も任され、夜は同僚と飲み歩き、朝はギリギリまで寝ているような生活だった。
不規則な生活だったけど、大きな不満は無かったし、好きな仕事に就けてやりがいも感じていた。
まぁ彼氏はいなかったけど、友達はいたし上司もなかなか良かったから満足はしていたと思う。
はぁ……。
「頑張ろう」と思ってはいても不安が無い訳ではないのだ。ため息が漏れてしまう。
──もし航海日誌とか付けていたら『遭難二日目の朝は晴天であった』とか書いているんだろうな〜。
ぐぅ〜。……お腹の主張に思考が遮られた。
「よし。起きてリリスさんを手伝おう」
窓枠に手をかけ、下から上にガッ! と開ける。その時、朝日の光に反射してキラキラしたものが部屋に入った気がした。
あれ? 今、何か……?
「ミレイ。起きてるかーい? 」
リリスさんの声だ。慌てて着替える。
「はーい。起きてますよ〜」
バサバサっと脱いだパジャマをベットの上に放り投げて部屋を出る。長年の習慣と言うものは一日二日で変わらないのだ。
バタン!
──モゾモゾ。モゾ
誰もいないはずなのに、放り投げられたパジャマが微かに動いている。
『……』
『なんじゃなんじゃ』 モゾモゾ。
『くるしいのじゃ』 モゾモゾ。
『──おい。どうしたのじゃ?』
『そうじゃ。声が聞こえぬぞ?』
『……いい匂いがするの〜』
『……』動きか止まる。
『……へんたい、と言うやつか? 』
脱ぎたてのパジャマの下である。当然の反応だ。
『!! 違うのじゃ違うのじゃ』
一人? が慌ててパジャマの下から出てきた──ようだ。その姿は淡い光を放つだけで実体がない。
『ご飯の匂いなのじゃ! おいしそうなの〜! 』
『ふむ。たしかにとても芳しい匂いじゃな』
『人間のご飯興味あるの〜』
最後の一人? も、はぁはぁと息を荒げて出てきた。
『今の、我らじゃ……無理なのだ。はぁはぁ。……姫の涙がないと……実体がもてぬ。はぁ』
『…………大丈夫か?』
『うむ』
『とにかく姫を泣かせば良いのか? 』
『そうじゃ! 』
『よし。では我らの目的の為に姫を泣かすぞー! 』
『おー! 』
『ご飯たべるのじゃー! 』
小さな体で言っている事はなかなか酷い。そんな会話がされている事など当のミレイはまったく知らなかった。