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第171話 王の間①



『王の間』


 そこは王族と一部の高位官僚しか入室することができない、王宮の中でも最重要となる特別な部屋である。唯一の扉には認証機能がついており、資格のない者は龍王の妖力が組み込まれたカード──『アディラ』が必要となる。



 室内には、既にヒルダーおじいちゃんとカリアス外務宰相。それから大神官様がいた。そして何故かその隣にはモノクロを掛けたクウのお父さん──マルティーノ卿までいるではないか。


 なんであの人がここにいるの?


 無意識に眉根が寄ったのか、クウのお父さんは軽く一礼をして視線をそらした。


 ……やらかした。

 今のはいくらなんでも大人げないよね。


 自分の幼稚さに溜め息がでる。



『お待ちしておりましたぞ』


 そう言いながら、水龍さまとシリック様の三人で言葉を交わすヒルダーおじいちゃんを見て、ミレイは違和感を覚えた。


 ……なんだろ。あ〜服装?

 いつもきっちりした服を着てるけど、どちらかと言うとシンプルな服が多い気がするし。


 でも今夜は、グレーのジャケットに黒のトラウザーズを着用し、トラウザーズのサイドには銀糸の凝った刺繍が入っていて、少し前に見た『浄化の儀式』の礼服を彷彿とさせた。


 そういえば……。


 チラリと視線を移してロスを見ると、やはりロスも違う。いつもは団服を着崩しているロスでさえ、今日は左肩にハーフマントを身に付けて、詰め襟もきっちり留めている。


 これは私の服も指定されるわけよねぇ。


 日中来ていた楽なサンドレスから、今はくるぶし丈のドレスに衣装チェンジしている。

 いつもなら夕食も終えたこの時刻、ラフな格好で部屋で寛いでいるだけに、ドレスを着るように言われて、正直、面倒くさかった。それでも夜会で着るようなゴテゴテした物でないだけマシと、思うことにしたのだ。


 みんなもいつもと違うし、これから何が始まるの?



『ここまでのメンツが一同に集まるとなかなか圧巻ですね。それでシリック様、本日の御用件を伺ってもよろしいでしょうか』


 そう切り出したのは外務宰相のカリアスだった。


 ……たしかに。王様と二人の宰相、式部と警務の長官に騎士団長かぁ。近侍頭は王宮の裏側を取り仕切ってるしね。まぁ一番は神殿のトップ二人まで呼び出したことでしょうねぇ。これは余程の案件じゃないと、納得しないよねぇ。


 ──と、まさに傍観者の気分で新旧二人の宰相のバトル勃発を、ワクワクしながら見守っていたミレイは、次の瞬間、目を剥くこととなる。


『水姫様に関することですから、必要部署と関わりのある方々に声をかけたまでです』


 ………えっ。わたし!!


 『旧宰相』がとんでもないことを言い出した。

 声にならない声は、もちろん誰にも拾われることもなく、話は淡々と進んでいく。


『ふむ。……警務は必要部署ですか?』


 不思議そうにラウザが声をあげる。

 たしかに関わりがあるというほど交流はない。

 ラウザ自身、ミレイのことは興味深く思ってはいても急ぎの仕事が立て込んでいる現状を顧みると、本音は『あとで資料にまとめて報告してくれ』と、言いたいのだろう。それでも警務のトップとして参加しろと言われれば、ノーと言えないのが、宮務めの辛いところだ。


『ふむ。実際、これからお話しすることは、まだ公にしたくないので、ラウザ卿は周囲の警戒と、王宮側で不審な動きがないか注意して頂きたい』


『はぁーー。そんなのは団長様がいるから不要でしょぉ?』


『ヤン団長は当事者ですから。注意力が霧散すると思いまして、事前に対策した次第です』


『……おいおい』


『……シリック卿。それは騎士団を預かる方に対して、些か礼を失する発言のように思えますが』


 ラウザはもとより、ロスも何も言わないのでサンボウが父親に苦言を呈した


『そのやり取りはまだ続きますか? いい加減話を進めて貰いたいのですが……時間は有限です』


 その不毛ともいえるやり取りを、一刀両断したのはマルティーニ卿だった。


『そうですね、失礼しました。では進めましょう。

 水姫様もよろしいですか?』


「えっ! あっ……はい」


 な、なに? いきなりこっちに話振らないでよぉ。

 


『では、皆様ご多忙の中、お集まり頂きありがとうございます』


 そう、ありきたりの挨拶から始まった『シリック劇場』は、ミレイの今までの人生を根底から覆すと言っても、過分ではない内容だった。

それだけに、自由に喋らせなければ良かったと、後のミレイは後悔するのだが、今はまだ傍観者気分で楽しむばかりだった。



区切りの良いところでまとめたら、今回は少し短めになりました。次回はいつもの長さになりますので、よろしくお願いします。

 このお話もそろそろ終盤を迎えます。最後までお付き合い頂けたら幸いです。


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