入学式
とある桜が舞う季節――
二人の高校生が楽しそうに談笑しながら桜並木を歩いていた。
「20XX年…」
「ん?」
「普通の高校生であるオレは…」
「いきなりどうした?ワダ。」
「大阪のどこにでもあるような国立高校に入学した」
「国立高校はどこにでもねぇよ!?」
「気にすんなよ。ごく一般的な国立高校って意味だ
し」
「いやだから、国立高校って時点でもう一般的じゃ
ねぇんだよ!!全国の元受験生に恨まれるぞ!」
なんてコントを挟みながら――
はい!皆さん、はじめまして!二段ボケをかましました「ワダ」ことオレ、大和田 疾風です。平均よりちょっと頭の良い、ほぼ一般的な高校生デス。ん?なんでほぼを強調したのかって?後で話すから待ってろ。まあとりあえずよろしく!
そんでオレの二段ボケを二段ツッコミ+アルファで返して来たのはオレの幼馴染みのフジこと藤阪 大和だ。フジは、普段の一人称「僕」なのに、ツッコミの時だけ口調が荒くなるんだよな~。あ、でも「いつもは本性隠してる」とかそういうんじゃないから、そこは安心してくれ。こっちもほぼ一般的な高校生だ。
そんで、大阪の学校なのに、何故オレ達が大阪弁ではなく標準語で話しているのかというのと、学校から標準語で話してくれ、といわれているからだ。
理由?いづれ話す。
なので、オレ達もアニメとか見て練習した。でも、オレやフジは幼稚園まで東京にいたので、割とすんなり入った。
いやー、今さら標準語の練習って何か不思議な気分だったわー。
さて、実況に戻ろう。
「あんまりそういうこと外で言うなよ、ワダ。
僕達白い目で見られるよ。」
「いやでも、白い目で見られるのってだいたい
フジの大声のせいだろ。」
「ウッ…それを言われると…。で、でもワダがボケなか
ったらいいんじゃんか。」
「それを言ったらツッコミも大声じゃなくて良いだ
ろ。それにオレは白い目で見られても気にならない
しな。」
嘘ついた。実を言うと気にはなる。
気にしないようにしてるだけである。
「でも、気にした方がいいんじゃない?」
「ヘイヘイ」
「絶対またするよ…。学校ではしないでよ。」
「善処する。」
「なんで「わかった」って言わないかな…」
無責任な物言いは嫌いなんだよオレは。
とは言っても、今日はもうする気はないけどな。
今日は、入学式である。絶対にヘマしてはいけない
イベント断トツ一位のイベントである。
ここでヘマしにいけるほどオレのハートは強くない。
「んで、今日は昼には終わるんだよな?」
フジがちょうど予定を広げていたので聞いてみた。
「そうみたいだね」
「そんじゃ、昼から電車に乗るか!」
「そうしようか!」
「ほぼ」を強調した理由その1∶二人とも鉄ヲタ
とは言っても、鉄ヲタにも種類がある。
オレは「撮り鉄」、フジは「録り鉄」または「音鉄」
と呼ばれる種類で、それぞれ、「写真を撮って楽しむ」「音を録って楽しむ」タイプの鉄ヲタだ。
トレードマークは、撮り鉄は
一眼レフやカメラバック,三脚音鉄はICレコーダーと
ヘッドフォンのことが多い。
ちなみにオレ達も例外じゃない。
「あ、でも今日レコーダー充電してな
い」
「あ、オレも」
「「…スマホでいっか!」」
言ったそばから例外になるオレ達である。
「今日は接写限定だな。」とオレ。
「パソコンで補正するか。」とフジ。
そんなこんなで校門に到着した。
するといきなり、
「う~、緊張する~。」と割と大きな声でフジ。
やめろ、緊張を拡散すんな。 余計な奴らにまで緊張がうつるだろ。
「ま、どうにかなるなる。」とオレ。
「さすが、「最強の運の所持者」は言うことが違うな…。」
「それを言ったらフジも「超器用な体の所持者」だろ。」
「それでもそんな事言えないよ。」
「弱気だな~。」
「ワダが肝太過ぎるんだよ。」
「ほぼ」以下略その2∶何か変な特殊能力みたいなん
ついてる
内容としては、オレはいつでも運が味方する能力、
フジは全身(声も含む)がとんでもなく器用になる力を持っている。
確かに地味だが、オレは役に立つ能力だと思っている。
そして、この能力の名前だが、オレ達がつけた。
え?厨二病?オレ達が?そんな事ないぞ。
だって名前付けたの中二の時だし。
ちなみに、桜並木を歩いている途中にした花びら掴みゲームは二人とも百発百中でした。いや~トッテモオモシロカッタナー。
……さて、話を戻そう。
正門には、先生達が門の両側にズラーと並んでいる。
スーツなのも相まって、どっかのボディガードみたいな雰囲気だ。
何故かちょっとVIP気分になった。
「集合場所は…体育館か。」
予定には、体育館に集合とかかれていたので、オレ達はそこへ向かった。
そして、入学式では、恒例の校長先生の話が例外なく
長かった。あーあ、どっかのテレビ局のどっかのテレビ番組みたいにお笑い芸人が原稿作ってくれないかな~。
〈こんなことを思ったワダであったが、後々これが実現することになるのはまた別のお話である〉
それからしばらくして、入学式が一通り終わると、放送が入った。
『これからクラス分けをします…。今から皆さんのケータイにメールを送ります。メールに書かれたクラスに向かってください。一年生の校舎は青色の校舎です。』
おお、ハイテク。メールで送られて来るのか。
やっぱり珍しいのか、周りもガヤガヤしている。
オレとフジは顔を見合わせる。
フジも驚いた顔をしていた。
あ、言い忘れてた。
オレとフジは同じ中学校で同じタイミングで出願したので、受験番号は並んでいる。なので席も隣である。
「合格説明会の時、学校のメールアドレスを登録して
くれって言われたけど、こんなことに使うんだ。」
「なるほどな。どうりで念押ししてたわけだ。
まあ、メールの方が楽だしな。」
「なんでだろうって思ってたんだよね。」とフジ。
「オレもだ。」
と、話しているうちにメールが届いた。
「さあさあ、同じクラスかな?」
「普通はほとんどあり得ないんだろうけど、
ワダがいるとそうとも言えないな…。」
「じゃあ、「せーの、ドン」で行くぞ。」
オレが提案すると、フジがうなずいた。
「よし、行くぞ…。」
「「せーの、ドン!」」
両方とも「A組」だった。
「はい、同じ組~!」やっぱりな。
「さすが…こんなこと滅多にないと思うんだけど。」
と驚き半分、呆れ半分の顔でフジ。
オイ、「喜び」はねーのか!
『それでは、それぞれのクラスに移動を始めてくださ
い。』
お、そろそろか。
「よし、オレ達も行くか。」
「そうだね。」
こうして、オレ達はA組へと向かった……