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三十路の侍女ですが何か?

楽しく、パキパキ動く明るい主人公を書いていけたらいいなと思います。

初投稿です。作品を作るのも書くのも初心者ですが、新年に見た夢が強烈で、それを書こうと思いました。


 マクベス辺境伯爵の娘に生まれ、15歳の頃にフィラオルディア侯爵家へと侍女として勤め始めて早いもので15年。


 ニーナ・マクベスと申します。今年で大台、30歳になりました。



 嫁にも行かず、最愛の可愛らしいメイリアお嬢様にお勤めして参りました。もちろんこれからも、生涯をかけがえの無い愛しいお嬢様に捧げるつもりでおります。誰が何と言おうと、それが私の幸せと信じています!



 



 フィラオルディア侯爵家の侍女の朝はとても早いです。


「んー…ふぁあ。眠い眠い。」


 眠たい目をこすりながら起きるところから、私の一日が始まります。

 20代の頃は平気だったのですが、年齢が上がるにつれて確実に長い間眠れなくなってきているのですよね。体力低下でしょうかね。やだやだ。


 侯爵家の3階の一角に与えられている、従業員用の小さな部屋の寝台から起き上がると、手早く手桶に汲んであった水で―冷たいけど我慢をして―顔を洗います。


 そして、侍女の制服をクローゼットから取り出し、ぱぱっと着替えます。制服は紺地のワンピースに白の襟とポケットのついたもので、寒いので長袖の下着を身に着けてその上から着たあと、そこにエプロンをつけます。


 質素な鏡台の前に座り鏡の中を覗き込むと、薄水色の瞳がこちらを眠そうに見たので、頬をパチンと両手で叩きました。まだ完全に目が覚めていないですね…。

 灰色の長い髪は、邪魔にならないよう器用に一つにまとめてお団子にして、足元が寒くないように、厚手の黒い長靴下をガーターで止め、紺の布靴を履いて準備完了。

 音を立てないように部屋から出ると、紅色の絨毯の上を歩いて階下へと降ります。


 朝靄立ち込める5時頃に起きて身支度を整え、ご主人様たちの本日の予定に関する細かい指示が、執事より一階の玄関前のホールにて行われます。


 わたしの生まれ育った辺境伯爵領と比べれば、王都の気候は通年通して穏やかですが、冬はやっぱり寒いですね。朝起きるときは一番苦労します。

 

 勤務場所は本館と別館に分かれておりますが、だいたい40人ほどおります。各自オールワークスで、掃除やキッチン手伝いなど、人手が足りない場合は何でもこなします。

 わたしは、基本的にはこちらの侯爵家の3番目のお嬢様、メイリア様のお世話を主にさせていただいております。


 メイリアお嬢様は、それはそれは美しい方でございまして。

 艷やかな白金髪に、湖のような深い碧の瞳。優しい顔立ちは夫人と侯爵閣下の良いところを全部合わせたような、美少女です。真っ白な肌は貴族の証、重たいものを一度も持ったことのない細い腕も細い指もころころと鈴のなるような笑い声もおっとりとした性格も。

貴族の証、正真正銘貴族の中の貴族。


 生まれたばかりの頃から、16歳になるまでずっとお傍で健やかな成長をお見守りさせていただいております。いつも幸せです。ありがとうございます。


 



 わたし自身も元は辺境伯爵の娘として生まれ、14歳になるまではそちらの方で育ちました。これでも貴族です。


 生まれた場所は、隣国との境目で、よく恐ろしい魔物が出る地域です。魔物ですよ、魔物。緑だったり紫だったり、結構カラフルなものたちです。魔物がいるからには魔法もあります。


 魔物って『日本』にはいませんでしたよね。


 あ、妖怪はいたっていう昔話はあるから、似たようなものなのでしょうか?緑といえば…カッパ?

 いや、妖怪よりも幽霊のほうが近い…?どうでしょう?


 あ、すみません。申し遅れました。


 そうなのです。

 わたし、よくある例のアレです。皆様おなじみの転生者というやつです。


 前世の記憶は、日本のお正月の夜が最後で。


 残念なことに自宅で、さっきまで食べていたみかんの皮に滑って転んで、頭を壁に強かに打ち付けてしまったのですよね。


 それってどんな確率?どういうこと?と思われるでしょう。薄れてゆく意識の中、私も思いました。しかも新年早々、そんな場面を見てしまった家族には大変申し訳無いことをしてしまったとも。


 自分のマヌケさ加減に若干嫌気が差しますが、済んでしまったことはどうしようもできません。皆さま、みかんの皮にはお気をつけくださいね。あれは滑りますので。


 そんなこんなで、気がつけば今の伯爵のお家で、ゆりかごに揺られていたわけです。

 そこから成長するにつれて、前世の記憶がどんどんとはっきり蘇ってしまいまして。物心つく頃にはすでに26歳まで生きた記憶があったわけですから、親から見るとどうだったのでしょう。


 2つ歳の離れた兄がいるのですが、それと比べても泣きませんし。わがまま言いませんし。

 それでも幼児ですので、色々とお手間をかけてしまうのが申し訳なさ過ぎて、言葉を覚えたての頃には「けっこうでしゅ」とか「もんだいありましぇん」とか言ってましたし。

 立ちあがるときの掛け声が『どっこいせ』でしたし。流石にその言葉を言うのは止められましたね。何かの呪文か!と。


 一度大人をしているので、色々便利でしたが、子どもらしくするというのがとても難しかったです。子どもの時間って、こうやって記憶を持って生まれてしまうと体験できない貴重な時間なのだということを知りました。


 純真無垢で天真爛漫、好奇心と恐怖が混ざった感情や、新しいことを次々に知ってゆく新鮮で強烈な喜びは一生のうちであの頃だけなのに、なんとももったいないことをした気分です。


 あ、もちろん、日本に住んでいたのでこっちとは勝手が違う事もたくさんあって、そういう部分では新しいことをたくさん知れました。日本の文明進みすぎという事も。あの国、色んな事が便利です。本当に。


 魔法はあるけど、電気がない。魔物はいるけど、自動車はない。ファンタジーです。



 ちょっと話が脱線してしまいました。


 とりあえずそんな感じで、可愛さの欠片もなかったはずなのですが、そんな風変わりな幼女でも両親は可愛いと思っていてくれたようで、しっかりと教育を施してくださいまして。何不自由ない幼少期を過ごすことができました。


 あ、そうそう。その頃、友達になった魔物もいるのです。

 白いふわふわの小さい犬。家の近くの森で、昼間散歩をしていたら後ろをぴょこぴょこついてきたので、『ホワイティ』という名前を付けてあげました。何と言う命名センス。いや、ふわふわ感がホワイティっぽかったんです…。


 最初は普通に犬を拾ったつもりで、父に飼ってもいいか許可を取るために見せに行ったのですが、父は、


『お父さん、見えないな…アレかな、心の目が曇ってるからかな…?』


 と、泣きそうな顔で言っていたので、どうやら普通の犬ではなかったことにその時気が付きましたが、もう名前を上げていたので後の祭りでした。


 それにしても、あの時の父は寛大でした。『飼ってもいいか』と問いかけるわたしに、涙ぐみながら頷いたのです。


 あとで考えてみたら、目に見えない何かを娘が抱っこして『みてみて〜』って言ってるわけですから、泣く以外ありませんよね。ご心配をおかけいたしました。




 ちなみに、わたしは魔力が強いわけではありません。


 ちょっとだけお天気占いができる程度です。(魔力というのかは分かりませんが。)


 この世界では、魔力は皆それぞれ持っているようなのですが、その力の大きさは個々によって変わりますし、強い魔力を持っていてそれで上手に魔法が使える方は、そう多くはいないようです。

(そういった力を持っていると、宮廷にお使えしていたり、冒険者をしている方が多いそうです。何かの物語やゲームの世界みたいですね。)


 


 あ、その子は今でもずっとわたくしの近くにおりますよ。ほら、後ろを尻尾を振りながら付いてきております。

 誰にも見えておりませんが。


 

 さて、今日も元気に、お嬢様の元へ参ります!

 

目に留めてくださってありがとうございます。30歳もまだまだ若い、と思われるかと思いますが、中世ヨーロッパ風になる予定のこの世界では、かなりいき遅れている主人公です。

のんびり、書いていこうと思います。よろしくお願いします。

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