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特異でいいじゃん!  作者: クロリ
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目が覚めると、そこは天国でした

 



 ……いたいよお……



「__てっ!_____さいっ!」



 ……さぃ?


 サイ……?


 なんだぁ、サイかぁ……?


「いい加減にしてくださいっ!重たいですっ!」


 やわらかくて、あったかくて、むにむにしてるぅ……


「……気持ちいぃ」


 今度はさらさらしてる……あまい、におい……する……


「首締めないでください!…くぅっ……なんで寝ぼけてる時のほうが強いんですかぁっ!」


 この匂いは……


「甘味処ハッピーの期間限定贅沢夏のフルーツミックスケーキッ!!!!」




 ………ん?


 なんで私美少女と抱き合ってるのちょっと意味分かんない。

 手で触れてるところ全部柔らかいな。

 おかしみたいな匂いするし、私なぜか布一枚だし。


 ……!


 理解した。

 やっと分かったよこのカオスな状況。



「やっと起きましたね……って、なにしてるんですか?!」

「よし、寝よう。きっと欲求不満だったんだ」

「えっ?なんでまた抱きついてくるんですか?なんでより強く抱くんですか!?」


 こんな超絶美少女と眠れる美女が見えるってことは女の子不足だったんだ。


 なんか周りも綿菓子みたいにふわふわした霧?に包まれてるし自然と幸せな気分になってくるし、きっとこれは女神様がくれた幸せな夢なんだきっとそうに違いない。



『あらぁ、魔族でも女神なんて信じるのねぇ。てっきり疎まれてると思ってたわぁ」


 そんなことないんじゃない?多分。自信持って!


『まぁ、あなたって動じないタイプなのねぇ。まあ私が選別したから予想はしてたのだけれど』


 そう?こちとら運命の方の女神に嫌がらせされまくってるからねー。

 人族が信仰してる女神の方は別に普通に好きだよ?

 こんなハーレムな夢見せてくれてるし、魔族でもけっこう評判いいと思うよ?


『うふふ、いいことを聞かせてくれてありがとうね。でもここ、天界よ?』


 あぁ、だからこんないい夢見せてくれてぇええ!?


「はわっ!」

「おやすみなさい」


 ワタシハナニモオモイダシテナインダ。

 アレハ夢ナンダ。


 再び脳筋殺戮天使こと、美少女の背に手を回し尻を揉んで、ビンタされた。

 痛かったので美少女を抱いている腕に更に力を込めたらありえない力で手の甲を抓られる。



「痛い!」

「当たり前です!というかあなた本当に女性ですか?!」

「びしょーじょでしょ!……だよね?」

「私に聞かないでください!そして答えはゴリラです!」

「ひどい!」


『ねぇ「後でにしてください!」


『ね「後で!ゴリラは認めんぞ!こちとら乙女なんだからなっ!」


『……』




『二人とも、そろそろ私にかまってくれないと、寂しいから隕石降らせちゃうわよ?』

「拗ねるの範囲のスケールじゃない!!」

「女神様、うるさいです。暇なんだったらここにいる猛獣の相手をしといてください!」


 そういうと美少女は私の唯一の装備である布を引っ剥がす!?

 おめえの方が猛獣だろぉおお!!!


 ……あれ?あの布ってよく見ると袖っぽい部分がある……?

 それに力任せに引き裂いたような後もあるし……?



 まさか自分の服を…

 ……なんだよ、優しい奴じゃんか。

 ツンデレとか可愛いな。


 すると美少女は私の視線に気がついたのか振り返って、親鳥に必死についていく雛鳥のようにトテトテと戻って来る。

 可愛い。許す。全部許しちゃう。


「許す前に感謝してしてください!あとさっきから美少女美少女ってうるさいです!天界は神と天使の領域なんですから考えていることが筒抜けなんです!少しは自重してください!」

「えっ……マジ?」

『私は女神だから記憶だって覗き放題よ?』

「変態!」

「あなたが言わないでください!!」


 ちぇー、世の中は不条理だなあ。

 女神とか論外だもん。


「今度こそもう行きますからね!」


 そう言うと天使は消えた。

 本当に消えた。

 目の前からパッと。


「なんでもありかよー……」

『細かいことは気にしないでいいじゃない?それにあの子、まだ生まれたばかりだから未完成なのよ』

「未完成?何が?天使より強いのってあんたぐらいじゃないの?」

『…ずっと思ってたのだけれど、あなたってとても恐れ知らずよねぇ』


 なにをゆっとるかこの女神は。


「もう私死んだんでしょ?あの天使に返り討ちにあって」


 今更恐怖なんて生まれるわけないのに。

 だって、私は狂っても()()()消えないし。


 それに天使が何かを言った瞬間から私の記憶はない。

 大方、一瞬で細切れとかにされたんでしょ?


 ま、これといって未練はないんだけどね。

 あぁ、でもタルトは食べたかったな。


「全部お見通しなんでしょ?私こそ未完成を表したような怪物なんだから」

『半分正解かしら?でもあなたは死んでないわよ?そこの子は真っ先に死んでしまったのだけれど』




 ……あぁ、またか。


 私はそばで眠っていると思っていた美女に視線を向けた。

 私なんかのせいで、ごめんね。



 ーー私は、またこの手で殺したんだ。



 ……私は美女の側に歩み寄り、そっと隣に蹲み込んだ。



 *****



「何故お前がッ!!_____ッ!!!」


「お前が______ッ!!!」



 *********




『やめなさい。見ているこっちの方が気が滅入っちゃうわ』

「……へ?あ、あぁ、うん…」


 気がつけば私は、またこの手で自分の首を締めていた。


 ……バッカだなあ?

 こんなこと、なんの償いにもならないのに…



「制裁パーンチ!」



 ーーガチンッ



 そんな音とともに頰に鮮烈な痛みが走り、気がつけば私は空中にいた。



 わっつ?



 数秒遅れて重力のまま地に叩きつけられた。


 ……背骨折れたかも。

 口の中が血の海だぁ……


「な、にふうんら、ふぁふぉふぁふぁふふぇふぁふぉ」(な、にするんだ、顎が外れたぞ)


 入れ歯の飛んでいった老人かのように文句を言い、ヨボヨボと立ち上がると、そこにはーー





 ーー先ほどまで死んでいた美女が、涙目で立っていた。



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