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特異でいいじゃん!  作者: クロリ
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最初からへるぷみー

 


 初夏。


 さんさんと降り注ぐ太陽の暖かな光と爽やかな緑の薫りを乗せた風が頬を撫で、思わず心地の良い微睡みの中へと誘われそうになる今日この頃。


 私のいる広場の周りには多くの人々に溢れ、皆一様に幸せそうな笑顔を浮かべている。



 ーー天国のお母様、今は幸せに暮らしていますか? 私は今ーー



「これより、我が帝国に災いを招いた魔女と、それに加担した謀反人の公開処刑を行う!」


 現在進行形で命の危機に瀕しています。



 *****



 ちょい待てちょい待て!

 なんで私は処刑台にドナドナされてるの?!

 首チョンパの刃が!

 上からの圧力がすごい!


 そして足が地を離れる高さで私を羽交い締めにしている騎士と、血走った目で歓声を上げるの観客達が怖い!


 こうなりゃ力尽くで逃げ……られないわー。

 わぁ、騎士様って腕力も一流なんだぁ。


 ……すまない、騎士よ。

 もうこれしか思いつかん。



 ーー次の瞬間、体を振り子のように揺らし騎士共の股間を力の限り蹴り上げた。


 哀れな騎士達はその部分を押さえて崩れ落ちる。

 ……本当に、すまんな…



 すると、女の私には分からない痛みに悶える騎士を横目に、さっき朗らかに私とお隣さん(面識のない虚ろな目をした美女)の処刑を宣言した老人が私の長い髪を手綱のように掴み上げたので、自然と顔も上を向く。



 ギャァアア!!!

 切り落とされた生首が!

 見ないようにしてたのに!

 てか太陽眩しいんですけどぉおお!!



 老人はこちらの心中など知らないようにいやらしい手つきで私の髪を手で解く。


「ふん、魔女は民を欺くことしか出来ないと思っていたが、まさかシャンプーまで使って少女の真似事をしていたはな。オークに金貨とはこの事だ!」


 無礼な野郎の言葉に民衆は湧き上がり中には『殺セェッ!』と叫び出す者もいる。


 騎士ぃ!突っ立ってないで仕事しろやぁああ!

 というか私に手を出して、さては貴様変態がだなぁあ!



「誰か!誰か助けてっ!ロリコンに【*****】されるぅううう!!!」


「せぬわっ!忌々しい魔女がっ!!」



 へブッ!!


 いってぇ……何も蹴り倒さなくてもいいじゃん!

 あとその靴ヒヒイロカネ製だろ!しかもゴリゴリの戦闘向けの!

 セレブは靴の踵も高価なんだなあ、おい?!


 そしてオーディエンスども!

 また湧き上がるなよ!

 自分で言うのもなんか、変だけど、び、美少女が踏み躙られてるんだぞ!




 ……あー、もう恥ずかしっ!

 でも、お母様譲りの黒髪と顔立ちにはけっこう自信あるんだぞ!

 それにそこそこナイスバデーだし。



「そこのお前!この無礼者の魔女に裁きを与えよ!」



 でもってクソ野郎は例の如く偉そうに私を汚物を見るような目で見下しながら、一番近くにいた、さっきから私が一番気になっていた人物に命令する。



「……へ?私ですか?」



 鈴の音のように澄んだ声が、一瞬にしてその場の喧騒を断ち切り支配する。


 いや、なぜ皆気付かなかったのだろうか。

 民家の屋根に腰掛け、のほほんとタルトを頬張っていたのに。


 でも、それだけじゃない。

 彼女の周りだけが魔力濃度が濃く、常人であろうともその膨大で神聖な魔力を肌で感じ取れるはずなのだろうに。



 そして何よりーー




「ーー綺麗」



 真っ直ぐに私を射抜くマリンブルーの瞳に思わず硬直してしまい、そっと逃走しようと踏み出した足が前に進まない。


 そのややたれ目で大きな瞳を縁取る長い睫毛は白く透明感のある肌に影を落とす。

 太陽に照らされた、長い長い白金色の髪がそよ風に揺れるたびに輝く様は、絵画の中から出て来た天使と見間違うほどに可憐で、触れれば今にも壊れてしまいそうな儚さをも感じさせる。

 さらに、生成り色に金糸の刺繍が施された素朴だが品のあるローブは彼女の背から生えた純白の翼を際立たせており、より一層彼女の容姿を神々しいほど、に………?



 ……ぁ…?




 本物の、天使さんですか……?


クロリと申します。

本作は、基本日曜の正午に投稿させて頂いております。


拙い文章ですが、ご感想やポイント評価など、よろしくお願いします!

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