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千本桜  作者: 雨世界
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2 仲良くなりたい

 仲良くなりたい


「なにぼさっとしているのよ! 明野くん。早く胡桃を追いかけてよ!」

 胡桃の親友である、(そして教室の委員長でもある)大塚舞がとても怖い顔をして、吾郎にいった。


 その舞の言葉にはっとなった吾郎は舞を見る。

 舞はじっと吾郎のことを強い目をして見つめていた。それから、吾郎が教室の中を見渡してみると、教室のみんなが吾郎を見て、吾郎に向かって、「ほら、早く行けよ」とか「明野くん。早く、胡桃のところに行ってあげて」とか、声にならない声で、言っているのか、強く吾郎に伝わってきた。

 なので吾郎は、心の中で、「わかったよ」とみんなに返事をすると、それから一度、舞ににっこりと笑ってから、「ちょっと行ってくる」と、堂々とした態度で、舞に言った。


 舞は、怖い顔をしながら、こくんと頷く。

(舞の三つ編みがその動きで、かすかに揺れた)

 それから吾郎は教室を出て、(もちろん、もうそこには胡桃の姿はどこにもなかった)そして、千桜胡桃がいきそうな場所を考えてみた。


 まずは、演劇部の部室だろうか? あるいは、食堂。体育館。もしくは学校の校舎の裏庭かもしれない。

 

 そんな場所を思いついた吾郎は、とりあえずそれらの場所に全力で走りながら、行ってみた。

 でも、演劇部の部室にも、食堂にも、体育館の中にも、そして学校の校舎の裏庭にも、教室から飛び出していった千桜胡桃の姿はどこにもなかった。


 はぁ、はぁ、と息を切らせて学校の玄関口のところまで戻ってきたとき、ふと、吾郎は、……屋上? とそんなことを思いついた。


 学校の屋上か。そこにいるのか、あいつは。


 吾郎は外履きの靴から、上履きに靴を履き替えると、それから急いで、学校の廊下を走り、(本当は走ってはいけないのだけど)階段を駆け上って、屋上まで移動した。


 屋上のドアを開けると、そこには教室からいなくなった千桜胡桃の姿があった。

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