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これは魔法の書です。  作者: わおん
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僕が、原始人の胎児に転生して、4週間目・・・



その間に出会った狼のタロは、


元々、原始人に飼われていた様で、


我々にも従順であった。



おまけに、魔法の影響で、


僕とタロは、


心で、意思の伝える事が出来た。



つまり、無言で、


簡単な会話が、出来るのだ。



そして、それが役に立つ日が、やって来た。



いつもの様に、朝8時頃に出発・・・


と同時に、



「イノシシ」との声が・・・



それは、僕にしか聞こえない、タロの声だった。



僕は、タロに、


「イノシシ」という言葉を教えていない。



その上、この世界に転生してから、


猪を見た事も無い。



つまり、タロは、言葉を話している訳では無く、


実際には、匂いを感じて、



『あっ!この匂い知ってる!』


『みんなに知らせよう!』



という感覚、



それが、僕に伝わり、


僕の無意識が、それを言葉に変換して、


僕は「イノシシ」と認識している様である。



つまり、タロに、言葉を教えなくても、


タロと僕が、知っている。



この条件を満たせば、


タロの感覚は、言葉に成って、


僕に通じる訳である。



『という事は・・・』



僕は、タロに質問する。



「何頭?」



すると、タロは、


「1頭」と答えた。



我々は、この1週間、


タロ以外の獣を見ていない。



あくまでも僕の予想だが、


この山脈を襲った津波は、


地震とは違い、隕石によるモノである。



その為、


動物であっても、


それを察知して、事前に逃げる事など、


出来なかった。



結果、多くの動物は、津波で亡くなった。



生き延びた動物は、


安全な方角に、移動した。



そして、移動の遅い、我々だけが、


まだ、被災地域に残っている。



その様な状況なのだと思う。



そんな中、猪を発見したのだ。



僕には、まだ、その姿は見えないが、


タロは、その匂いと音を察知している。



ちなみに、3人も、まだ気付いていない。



現在、我々が居るのは・・・



津波被害を受けなかった、山の上部であり、


周囲の木々や、草によって、


地面を見る事は出来ない。



数メートル範囲の千里眼で、視点を変えて見るが、


猪の姿は、見えない。



しかし、これは、チャンスである。



砂利を試す時が、来たのだ。



僕は、母に、


「静かに! 獲物! 来た!」


と教えた。



すると、母は、手をヒラヒラさせ、


父と祖母を、無音で呼ぶ。



これは、我々で決めた、無音連絡方法の、


1つである。



タロも、それを理解している。



僕は、母に説明する。



「狼違う、熊違う、鹿違う、獲物、1」



すると、母は、猪を思い浮かべた。



そこで僕は、


「はい!」と答える。



母は、父と祖母に、説明を開始。



母は、熊の皮で作った袋から、


小豆サイズの砂利を、一握りつかみ取る。



3人は、タロが見る方向に注目する。



僕の千里眼が、猪を捕らえる。


数メートル範囲に入ったのだ。



木々と草に隠れ、


3人の肉眼では見えない。



祖母は、芋を取り出し、


少し噛み千切り、


それを、前方に優しく投げる。



僕の千里眼が、


それに反応する猪の姿を、確認・・・



猪は、多少警戒しながらも、


こちらに接近して来る。



まだ、通常視界では、確認出来ない。



木々と草木、これらによって、


数メートル先の地面など、見えないのだ。



しかし、草が動く・・・


3人には、猪の呼吸音も、聞こえている様である。



その距離、3メートル・・・



まだ、草むらの中、


肉眼では、その姿が、見えない状態・・・



しかし、視点を変えた千里眼で、


僕には、その姿は、はっきりと見える。



その瞬間、


僕は母に、


「投げて!」と言った。



猪は、まだ、草むらの中・・・



母が投げた、一握りの砂利が、


スローで見える。



次の瞬間、



『瞬間移動・・・?』



スローで見えている僕でさえ、


その様に、錯覚するスピードで、


猪の顔面に、砂利が叩き込まれた。



飛び散る草・・・


のけぞる猪・・・



その瞬間、僕は、猪を包み込み、


直立させる・・・



結果、猪の上半身が、草むらから出た。



と同時に、父が投げた石槍が、


猪のノドに刺さる・・・



魔法で、槍を包み回収・・・



父の手元に、受け取り易いスピードで返す。



タロから「凄い!」という声が聞こえた。



目潰しを喰らい、ノドを刺され、


苦しむ猪・・・



その大きさは、タロと同じくらい。



おそらく、今年が、初めての、


冬だったのだろう・・・



まだ、子供である。



父が、その猪に、とどめをさした。



タロは、仲間に成り・・・


猪は、食料に成る・・・



猪だって、芋は探せるのだ。



使えるか、使えないか、


それが外見で判断され、



その違いで殺される。



僕は、今、そんな世界に居るのだ・・・


可愛そうと思う感情は無かった。



これで、我々が助かるのだ。



『食料が得られた・・・』



その嬉しさの方が大きかった。


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