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これは魔法の書です。  作者: わおん
9/2235

009

当時、僕は、5歳、


毎日、休まずに、


魔法の練習を、続けていた。



しかし、練習をしても、


その成果は、無かった。



ドアが開かないのだ。



1度開いた事があったが、


それ以来、開いていない。



『あれは、偶然だったのか・・・?』


『あれは、本当に魔法の力だったのか・・・?』


『力の加減だったのでは・・・?』



正直、不安を感じる。



しかし、不安に成った時、


僕には、心の支えがあった。



逆立ちコマは、僕の魔法で倒れるのだ。



僕が魔法を意識した瞬間、


回転中のコマが、必ず倒れるのだ。



これは、事実である。



コマを8の字に動かす事は、


相変わらず、出来ないが、



『それでも良い・・・』


『倒す事は、出来るんだ・・・』



『もし、僕が、魔法を意識しても・・・』


『何も起こらないなら・・・』



『僕の魔法は、妄想であり・・・』


『続けても無駄である・・・』



『しかし、僕は、コマを・・・』


『必ず、倒す事が出来るのだ・・・』



『これは、魔法の力なのだ・・・』


『続ければ、必ず鍛えられて行く・・・』



僕は、その様に、信じていた。


しかし、疑問も生まれる。



『では、なぜ、逆立ちコマは、倒れるのか・・・?』


『なぜ、ドアは、開かないのか・・・?』



『その理由は・・・?』


『その違いは・・・?』



『力の加減・・・?』


『手加減・・・?』



『僕は魔法を、手加減しているのか・・・?』



『コマは、手加減無しで・・・』


『ドアは、手加減あり・・・』



『この違いは・・・?』



この瞬間、僕は、気付いた。



『コマは倒れても問題ない・・・』


『しかし、ドアが壊れると大問題だ・・・』



『修理すれば直るが・・・』


『その様な話では無い・・・』


『壊れる事が、問題なのだ・・・』



『絶対に怒られる・・・』



『だから、僕は、ドアと壁の間に・・・』


『クッションを、はさんでいる・・・』



『これで、大丈夫だと・・・』


『自分を、納得させている・・・』



『しかし・・・』


『それでは、駄目なのか・・・?』



『幼児の僕が・・・』


『クッションを、用意している・・・』



『幼児の僕が・・・』


『安全対策を、必要としている・・・』



『つまり、僕は・・・』


『大変危険な事を、している・・・』



『駄目な事を、している・・・』



『クッションを、用意したのは・・・』


『その気持ちの、現れなのだ・・・』



『だから、魔法が出ないんだ・・・』



『では、どうすれば良いのか・・・?』



僕は、必死に考え続けた。



『修理も、駄目・・・』


『クッションも、駄目・・・』



僕の本心は、壊れる事に、恐怖を感じていた。


これは、事実である。



恐怖を感じていない「つもり」でも、


それは芝居なのだ。



僕は、その様な事実を、素直に認める事が出来た。



なぜなら、僕は、魔法の危険性を、


理解しているのだ。



魔法とは、未知の力である。



クッションで守れる保証など、無いのだ。


家が壊れるかも、知れないのだ。



その為、僕の本心は、


家が壊れる事に、恐怖を感じているのだ。



『では、どうするか・・・?』



などと、考えていると、


母が、僕の様子を見に来た。



僕は、1人で子供部屋にいる事を、


禁止されている。



その為、リビングに、戻る様にいわれた。



テレビを見ながら、


今後の、練習方法を考える僕。



『壊れるモノでの、練習は、不可能だ・・・』



そんな事を考えながら、リビングを見渡し、


そして、僕は、ひらめいた。



『それなら、壊れても良いモノで、練習しよう!』



まず、ティッシュで、鼻をかむ、


『これはゴミだ・・・』


壊れても、全く問題無い。



これは、暗示でも、芝居でも無い。


事実である。


本当に、ゴミなのだ。



僕は、丸めたティッシュを、


ゴミ箱に向かって投げた。



『偶然・・・・?』



ティッシュが、綺麗な軌道を描き、


ゴミ箱に入ったのだ。



『これじゃ駄目だ』



僕は、もう1度、鼻をかみ、挑戦した。



今度は、思いっきり投げる。


結果、勢い良く飛んで行くティッシュ・・・



『あれ?僕の魔法で・・・』


『このまま飛び続けるんじゃ・・・?』



と感じた瞬間。



ゴミ箱を、飛び越えるハズの、ティッシュが、


垂直落下した。



そして、ゴミ箱に入った。



『これだ!』



直ぐにでも、鼻をかみ、もう1度、


『ティッシュを投げたい・・・』


そんな、気持ちだった。



しかし、我慢する。



そんな事をしたら、


母や姉に、練習がバレる。



今は、まだバレていない。



姉は、テレビを見ているし、


母は、台所にいる。



『だから、その気に成れば・・・』


『もう1度、挑戦出来る・・・』



しかし、そんな事をしたら、


僕は、夢中に成ってしまうのだ。



周囲を気にせずに、


練習に集中してしまう。



そんな事をすれば、


姉が、何かに気付く、


母が、心配して見に来る。



僕は、何をするか解らないのだ。



だから、リビングに居る事が、


我が家の、ルールに成ったのだ。



つまり、僕は、今、見張られて居るのだ。



それに、ゴミを投げる行為は、


1度注意されると、今後出来なく成る。



姉に「行儀が悪い」と文句を言われ、


泣かされる事に、成るだろう。



つまり、リビングに居る限り、


ティッシュを投げる練習は、


不可能なのだ。



『では、どうする・・・?』



そして気付く。



『トイレで練習すれば・・・!』



僕は、そう思い、トイレに駆け込んだ。



しかし、便器までの距離が近過ぎて、


練習には成らなかった。



仕方が無いので、僕は、妥協した。



僕は、子供部屋に居る事は、


禁止されている。



しかし、幼稚園から帰った後であれば、


子供部屋に行って、着替える事が、


許されている。



そこで、明日からは、着替えの時に、


鼻をかんで、練習するにした。



つまり、これも1日1回の、


日課と成ったのだ。



『思う様に、練習が出来ない・・・』



それが僕の、悩みに成った。


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