表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これは魔法の書です。  作者: わおん
88/2330

088

僕が、原始人の胎児に成って、 7日目・・・



現在、山頂・・・



おそらく、我々は、これまで、


北を目指し、山脈を移動して来た様である。



そして、現在、北に進む我々の、


東側、つまり、右側に、


壁の様な山脈が見えている。



現在、我々が居るのは、充分に高い山である。



ところが、右側に見えるのは、


それ以上に高い山だった。



『登った先に、川など無いだろう・・・』



『生き残りが、生息出来る環境では・・・』


『無いだろう・・・』



『何より、崖の様な斜面を登るリスク・・・』


『それを考えた場合・・・』


『そちらを目指す意味は無い・・・』



『決断の時が来た・・・』



『このまま、山脈を北に進むか・・・』


『下山して、平地に出るか・・・』



今まで、平地に出る事など、


夢の様な話だった。



これまでは、山の下半分は、


全てが、津波の被害地・・・



つまり、山を下りるには、


土砂崩れの跡を歩く事に成る。



いつ崩れるか解らない。



しかも、山を下りた後は、


土砂と倒木の、バリケードが待っている。



結果、その先の森を進む事など、


不可能だったのだ。



その事を、母は、毎日、


「山、下、木、全部、寝る」


「森、行く、歩く、いいえ」


と教えてくれていた。



ところが、今日に成って、


その状況に、変化があったのだ。



母が言うには、


「山、木、起きる、歩く、はい!」



つまり、下山できるルートが、


見付かったのだ。



おそらく、壁の様な山脈の方角に、海があり、


この通称・壁山脈が、津波を防いだのだ。



結果、現在、我々の居る山は、守られ、


下山が可能に成ったと、考えられた。



『本当に、大丈夫だろうか・・・?』



現在、僕は、数メートル範囲しか見えず。



今回、見つかったルートは、


あくまでも、3人が、


現在の地点から、見ての判断である。



つまり、本当に、下山できる保証は無い。



しかし、


3人が、行けると判断したのだ。


僕に、それを否定する事など出来ない。



我々は、相談の上、下山する事にした。



万が一の、土砂崩れを心配して、


野宿は無しで、回復魔法を使いながら、


2日がかりで、山を下りた。



しかし、回復魔法を使っても、精神的には疲れる。


そこで、山を下りた所で、野宿。



翌朝・・・



森の中を進む。


森の木々は立っていた。


葉っぱも、少し残っている。



しかし、本来、あるハズの、落ち葉が無い。



地面は、ドロで埋め尽くされている。


つまり、津波被害を受けたのだ。



『この森は、海水の影響で枯れてしまう・・・』



つまり、この土地には、住めない。



木が枯れると、湧き水や、


池の水が、無くなってしまう。



僕は、生前、社会の授業で、それを習った。



『森の木々は、全て同じ方向に、傾いている・・・』



明らかに、津波の影響であった。



『つまり、傾いている方向に進めば・・・』



津波被害を、受けていない土地に、到達出来るのだ。



我々は、期待を胸に進んだ。



回復魔法を使い、眠るのは木の上・・・


食料は、地面を掘って探す・・・


ほぼ、休まずに進んで行く・・・


約2日半・・・



森が途切れ、ドロの平原に出た。



3人は、驚いている。



生まれて初めて、平原を見たのだ。


母の不安な気持ちで、それが理解出来た。



元々、ここは、草原だった様である。


地面には、所々、草の痕跡が残っていた。



母の説明によると、


「全部、ドロ、地面、全部、ドロ」という事らしい。



『楽観的に考えれば、平地の肉食動物は・・・』


『津波で絶滅している・・・』


『つまり、安全・・・?』



しかし、保障は無い。


数キロ先は、被害を受けていない可能性もある。



3人は、狼よりも足が遅く、


平地では、圧倒的に不利なのだ。



高い知能があっても、


それを生かせる環境が、必要なのだ。



環境が無ければ、知能など、無意味なのだ。



『では、山の中は有利なのか・・・?』というと、



山の中は、海水を含んだドロ、


腐り始めた倒木・・・



これにより、3人は、


「臭い」という、現代語を覚えた。



現在の僕に、匂いは解らないが、


とにかく、臭いらしい。



その上、繰り返し起きる土砂崩れ・・・


環境が悪すぎた。



だから、3人は、命がけで、平地まで来たのだ。



ところが・・・



平地を進むには、情報が少なかった。



この先に、川が流れている保障は無い。



つまり、生きる為に必要な水が、


確保出来ない・・・



その可能性もあった。



山からは、この平地は見えない、


森が、徒歩2日分続いたのだ。



結果、山頂から、見えていたのは、


森の一部だった様である。



つまり、3人も、今日まで、


この平原がある事を、知らなかったのだ。



そんな未知の環境で、川を探し、


平地を歩く事は、自殺行為である。



獣に見付かれば、逃げられない。



獣の群れに囲まれたら、3人では戦えない。


魔法が発動する保障も無い。



『腐臭と土砂崩れの、山に戻るか・・・?』



しかし、夏には、倒木が腐り、


虫が異常繁殖して、住める環境では、無く成る。



『では、自殺行為で、平地を進むのか・・・?』



そんな事を考えていると、母の絶望を感じた。



『駄目だ! 僕が悲観的に考えると・・・』


『母に伝わってしまう・・・』



と考えた。



ところが・・・



『違う!』



3人の表情を確認すると、


遠くを見て、後退りをしている。



祖母など、腰を抜かしそうである。



母は、祖母を支えると、


ゆっくりと、森の中へ引き返し・・・


木の陰に、身を隠す・・・



本当は、逃げたいのだが、動けば死ぬ・・・


その様な恐怖が、母から伝わって来る・・・



僕は、相変らず、数メートル範囲しか見えない。


その先は、霧に覆われた様である。



その為、3人が何を見たのか解らない・・・



僕は、母に聞いた「狼?熊?」



すると、母は、心の声で、


「いいえ・狼・食べる」と答えた。



『狼を食べる獣・・・?』


『平地で、狼を追いかけ・・・』


『捕獲して、食べる・・・?』


『ライオン・・・?』



その時だった・・・



母の恐怖が膨れ上がる。



そして、次の瞬間、僕も、それを理解した。



必死に逃げる、1頭の狼・・・



母の隠れる木の、数メートル前を横切る。



次の瞬間、狼の首が、噛み砕かれた・・・・



『恐竜・・・!』



それは、2足歩行の恐竜だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ