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これは魔法の書です。  作者: わおん
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原始人の胎児に成って、3日目・・・



3人は、熊皮の防寒着と、皮袋を装備した。


いつでも、出発出来る。



しかし、3人に出発する意思は無い。


出発を1日遅らせ、熊肉を食べるのだ。



『なるほど・・・』



僕は、納得した。



先程まで、


なぜ、防寒着を作るだけで


出発を1日遅らせるのか?



その理由が、解らなかったのだ。



3人は、熊の皮を切る事が、決まった時点で、


もう1晩、ここで野宿する事を、決めていた。



現在、僕が質問をした場合、


3人にとって、その回答は、とても困難であった。



それを表現する言葉が無いのだ。



その為、僕は、あまり質問をしない様にしていた。


しかし、今、母の感情で、それが解った。



あくまでも、僕の予想だが、


村の男が1人で、熊を倒した場合。



その熊の毛皮は、1枚モノとして剥ぎ取られ、


村の宝と成る。



しかし、その場合、


その熊の肉を食べる事は、許されない。



ところが、数人で熊を倒した場合、


その皮は切られ、お金の様な存在と成る。



結果、他の部族との、取引に使われる。



その場合、熊肉を食べる事が許される。



あくまでも、母の感情と、


3人の雰囲気から、僕が考え出した答えである。



その為、正解である保証は無い。



しかし、それ程、特別な毛皮を、僕は切らせたのだ。


僕の罪悪感は増して行く。



生前の僕は、自分は、人種差別などしない、


その様に思っていた。



しかし、猿の様な顔の原始人・・・



僕は、この3人が、優秀である事は理解している。


しかし、僕の心は、この3人を見下しているのだ。



もちろん、僕には、見下している意思など無い。



しかし、事実として、


僕は、3人の気持ちよりも、


僕の判断を優先してしまう。



これは事実なのだ。



『これでは、駄目だ・・・』



3人が、出発を遅らせるという事は、


命を危険にさらす行為である。



血の匂いによって、


他の獣が集まる危険性があるのだ。



もちろん、3人は、


その事を充分に理解している。



理解した上で、ここに残り、


大切な肉を食べるのだ。



3人にとって、それは、とても大切な事なのだ。


命をかける程、重要な、何かなのだ。



僕は、苦悩していた。



『それ程、誇りを重視する部族・・・』


『その部族から・・・』


『原始語を奪っても良いのか・・・?』



しかし、原始語では、


今回の様な、複雑な事柄は、説明出来ない。



我々は、昨日の出来事を知っている・・・


だから、ジェスチャーで通じる。



その補足程度に発する声・・・


それが原始語なのだ。



『それでも、残すベキなのか・・・?』


『実用を考えた場合、残すベキでは無い・・・』


『答えは出ている・・・』



しかし、僕には、


それを実行する事が、出来なかった。



『原始語を、うばう事など出来ない・・・』



その後、我々は、2日間、


山頂付近を横ばいに移動した。



水分補給の為に、山の斜面を少し下ると、


『津波のよる倒木がある・・・』


『その状況に変化がない・・・』



僕が、この世界に来て、


6日が経過していた。



その間、3人の村を背に、移動を続けて来た。



『それでも変化が無い・・・』


『一体、どの様な津波だったのか・・・?』



その間、3人は、僕から単語を学んだ。


残念なのは、僕に、その声が聞こえない事である。



『早く、聞く能力を修得しないと・・・』



この3日間、獣の襲撃を受けていない。


それ所か、獣さえ見ていない。



原始人の痕跡もない・・・



『絶滅したのか・・・?』



3人は、地面を掘り、


幼虫やミミズを食料にしていた。



運が良いと、冬眠中の、


トカゲや、蛇を食べる事も出来た。



『今は、何月なのか・・・?』


『吐く息が白い・・・』



『今が、冬なのか・・・?』


『それとも・・・』


『これから本格的な冬が、来るのか・・・?』



母に、雪の存在を知っているか、聞いてみた。



「質問、雨、冷たい雨、白い雨、地面、白いドロ」



すると、母は、雪を思い浮かべ、



「はい、知ってる。 名前、何?」



と聞いてきた。



僕は「雪」と教え、続けて、



「質問、雪、たくさん、地面雪? 地面見えない?」


と質問した。



すると、母が、父と祖母に、話をして・・・



それから、


「いいえ、地面、見える」


と答えた。



『なるほど・・・・』


『それほど、雪は降らない・・・』



当然と言えば、当然である。



ここが雪国だとは、思えない。



体毛の薄い3人が、


豪雪地帯で、生活出来る訳が無い。



寒くて死んでしまうだろう。



ちなみに、3人は、裸足である。



靴を、作る技術が無い事と、


原始人としての能力を、考えた場合、


裸足の方が、木登りなど、


都合が良いと考えられる。



とはいえ、吐く息が白いのだ。


寒い事には、代わりない。



『洞穴で生活出来れば・・・・』



しかし、それを実現するには、


安心して暮らせる場所に、到達する必要があった。



『千里眼なのだから・・・』


『もっと遠くが、見えれば良いのに・・・』


僕の千里眼では、数メートル範囲しか見えない。



3人は、獣の襲撃に備え、


夜中は、眠らずに、明け方、1人ずつ順番に眠った。



その際、僕の回復を受けてから、寝てもらった。



結果、数秒で眠る事が可能で、


疲労回復効果も大きく成った。



そして、祖母のヒザの痛みが、


少しずつ、小さく成っているらしい。



翌日・・・


倒木が少なく成ってきた。


中腹部に、立っている木がある。



そして、その先には、高い山が存在した。


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