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原始人の胎児に成って2日目・・・
僕は、母の夢を見る事には、成功した。
その結果、災害が起きた事は、理解出来た。
しかし、その様な事は、
周囲を見れば解る事であった。
その後、母は目を覚ました。
母は、起き上がると、父と祖母に、
何かを言った。
『あいさつ・・・?』
『しかし、その後の会話が無い・・・』
『どの程度の、知的レベルなのか・・・?』
猿顔・・・
原始人・・・
シッポは無い・・・
身長は、推定160センチ以下・・・
体毛は、あるが薄い・・・
現在、季節は、冬の直前の様である・・・
獣の毛皮を、まっとっている・・・
しかし、裸足・・・
石槍を持っている・・・
火起こしが出来る・・・
残念ながら僕には、そこから、
何かを割り出す事は、出来なかった。
日の出から、数時間後・・・
『太陽の位置から察すると、朝8時・・・?』
田舎育ちの僕は、多少ではあるが、
その様な知識があった。
しかし、それは、
生前、僕が住んでいた地域を、
基準としたモノなので、
実際には、何時なのかは、解らない。
しかし、
朝ではあるが、早朝では無い事は、
事実である。
3人は出発した。
『目的地は、あるのか・・・?』
母の感情からは、解らない。
山の中腹部まで下りて、水分を補給する。
川に流れ込む湧き水が、所々残っていて、
斜面から、流れ出しているのだ。
その後、3人は、川の様子を見に行く。
『元々、水量の少ない川だったのか・・・?』
現在は、ほどんど流れておらず、
倒木に埋め尽くされ、ドロ溜まりに成っている。
『来年、ここに蚊が湧いたら・・・』
『とても、住める状態では無く成るだろう・・・』
『では、川の倒木を全て・・・』
『燃やしてしまえば・・・?』
と考えたが、その様な技術は無い。
倒木は、昨日まで、山に生えていた木なのだ。
そんな倒木を燃やす為には、高い火力が必要である。
火を着けただけでは、
「こげた倒木」に成るだけである。
つまり、川の流れが悪い状況は、改善出来ないのだ。
つまり、蚊が湧く事態は、防げないのだ。
『それなら、山を捨てて・・・』
『平地に出ては、どうだろうか・・・?』
僕は、その様に思うが、
それを伝える方法が、解らない。
3人は、山を登り、
山の斜面を、横ばいに歩く・・・
中腹部は、土砂崩れ現場であり、
歩き続ける事は、困難なのだ。
その為、移動の為には、
木々の残る、山頂付近を歩く・・・
道など無い。
途中で、水分補給の為に、
山頂付近から、再び、中腹部まで下りる。
すると、倒木とドロで、歩く事が、困難に成る。
それでも、無理をして進み、水を飲む必要があった。
倒木は、斜面を下ると多く成り、
ドロの量も増えて行く・・・
下山する事は、困難に思えた。
倒木が、山の下に集まっているのだ。
そして、気付く・・・
『平地に出れば、狼と戦う方法が無い・・・』
『囲まれれば、3人では対応出来ない・・・』
しかし・・・・
『では、なぜ、3人の先祖は・・・』
『2足歩行に進化したのか・・・?』
『猿のままでいれば・・・』
『多くの仲間が、助かったのでは・・・?』
『人類は、平地で生きる為に・・・』
『2足歩行に、進化したのでは・・・?』
『それなのに、なぜ、この原始人は・・・』
『山で生活して居たのか・・・?』
『平地では、獲物にされる・・・?』
『だから、山で生きている・・・?』
『平地には、原始人を狩る、何かが居る・・・?』
『それなら、進化した意味は・・・?』
もちろん、本人の意思で、進化した訳ではない。
何世代も、生き抜き、その結果・・・
効率良く、生き延びた個体が、子孫を残し・・・
それが、少しづつ、2足歩行へと進化したのだ。
平地で、周囲を見渡す為、
2足歩行が必要に成ったのだ。
と思う・・・
そして、この3人は、すでに、
2足歩行をしている。
つまり、何世代も、
平地で生活していた証拠である。
ところが、3人の村は、山中にあった。
おそらく、この種族が、平地で生活する為には、
『多くの原始人で、村を作り・・・』
『役割りを分担して・・・』
『肉食動物の襲撃に備える・・・』
『この条件を満たさなければ・・・』
『生きて行けない・・・』
『3人の先祖達は・・・』
『一時期、平地で生活出来た・・・』
『そんな時代が、何世代も続いた・・・』
『その為、2足歩行に、進化した・・・』
『しかし、何かが現れ・・・』
『平地での生活が困難に成って・・・』
『再び、山中で暮らす事に成った・・・』
これが、僕の、判断だった。
『この原始人を狩る、何か・・・』
『平地には、その何かが、存在するのか・・・?』
『今回の津波で、どう成った・・・?』
『しかし、そんな肉食動物が居るなら・・・』
『なぜ、山に入って来なかった・・・?』
そして、もう1つの仮説が浮かぶ。
『あるいは、この原始人は・・・』
『先祖代々、山中暮らしなのでは・・・?』
『1度も平地に出た事が無く・・・』
『山暮らしで、2足歩行に進化したのでは・・・?』
『例えば、果物を運ぶ必要があった・・・』
『結果、4足歩行よりも・・・』
『2足歩行の方が効率が良かった・・・』
他に、やる事が無いので、
僕は、その様な事を考えた。
今現在、僕は、役立たずである。
『父と祖母が、疲労で倒れた場合・・・』
『母1人が元気でも、その先は無い・・・』
『母は、2人を見捨てる事など出来ない・・・』
『結果、2人に何かあった場合・・・』
『母は、この腐り行く山で・・・』
『2人の介護を続け・・・』
『そして、墓を作り・・・』
『一生、その場で生きて行くだろう・・・』
『このままでは、その様に成ってしまう・・・』
『待っているのは、絶望だけ・・・』
『しかし、僕は、魔法使いであり・・・』
『脳が無くても、魔法が使えるのだ・・・』
『つまり、僕の魔法は・・・』
『今後、大きく成長する・・・』
『生前、脳に負担がかかるので・・・』
『不可能だった事が・・・』
『この世界では、可能に成るのだ・・・』
この原始人達は、僕の家族である。
『僕は、3人の命を、守る必要がある・・・』
遊びでは無い。
『現在、言葉は通じないが、僕の存在は・・・』
『必ず3人の役に立つ・・・』
『その為、今、僕に、必要なのは・・・』
3人との、会話方法であった。




