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これは魔法の書です。  作者: わおん
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077

僕が、原始人の胎児に転生して、半日目・・・



3人は、村を捨てた。



水害で、壊滅した村である。


元々、村があった痕跡さえ無い。



つまり、そこに残っても、何も無いのだ。



全てが、ドロに包まれた斜面・・・


そこを、横ばいに進む。



倒木が邪魔で、思う様に進めない。



途中、谷に出た。



『底が見えない・・・』


『空は見えるのに、谷底は見えない・・・』


『なぜ・・・?』


『理由が解らない・・・』



数メートル範囲しか見えない僕には、


この谷の底が、見えなかった。



谷を見下ろす母から、恐怖が伝わって来る。



『それほど、深い谷なのか・・・?』


『つまり、僕は今・・・』


『山の高い場所にいるのか・・・?』



しかし、それでは、不自然であった。



『山の中で水害・・・?』


『木が、なぎ倒される程の水害・・・』


『山の高い位置で・・・?』



答えは出ていた。


しかし、僕の常識が、それを否定する。



斜面を、1時間ほど、横ばいに歩く。


その間、多くの木々が、なぎ倒されている。



『土砂崩れの範囲を、越えている・・・』



土砂崩れとは、部分的に起こるモノである。



ところが、この1時間、


全てが崩れた跡なのだ。



つまり、



『津波・・・・?』


『山の木が、倒れる程の・・・?』



『平地なら解るが、ここは山の中だ・・・』


『そんな訳が無い・・・』


『そんな津波が、ある訳が無い・・・』



先程、僕は、


自分は植物人間、だの。


震災、だの。


津波、だの。


女性を植物人間にしてしまった、だの。



散々、勘違いを連発していた。



そして、僕は、


それを、恥ずかしく感じていた。



結果、素直に、考える事が出来ないのだ。


しかし、答えは、出ていた。



『山の木々を、なぎ倒す巨大津波・・・』



おそらく、その津波の原因は、隕石である。


それが海に堕ちたのだ。



そして、人類を滅亡させる程の、津波が起きた。



我ながら幼稚にも思えるが、


僕は、正直に、そう考えた。



おそらく、津波の発生時、3人は、


高い山の、山頂にいたのだ。



現在、我々が居るのも、山頂の様だが、


ここは、全てが、津波を受けている。



つまり、津波発生時、3人は、


特別に高い山の、山頂に居たのだ。



そこから、多くの山が、水に飲まれる光景、


それを見たのだろう。



だから、村を捨てたのだ。



生き残りは居ない。


待っていても、戻って来ない。



それが解る光景・・・


それを見たのだ。



僕が、その様な事を考えている最中も、


3人の移動は続く・・・



その後、父の提案で、山を下り始めた。



そして2時間後、川に出た。


しかし、そこも、斜面である。



『つまり、ここも山中・・・?』


『2時間下っても、山中・・・』



『どれ程、高い山なのか・・・?』



現在、僕は、


おそらく、山の中腹部に居る。



そして、目の前には、川がある。



しかし、



『本当に川なのか・・・?』



そこは、ドロと倒木で、埋め尽くされていた。


津波で流れて来たのだ。



『これでは水が確保出来ない・・・』



現在も、ドロ水が流れている。



今後、雨が降れば、ドロは流れて、


無くなる可能性もある。



しかし、倒木の撤去は出来ない。



樹齢、数百年・・・


全長30メートル以上・・・



そんな倒木が、川を埋め尽くして居るのだ。


原始人に、何とか出来る問題では無い。



現在は、寒い季節の様だが、


数ヵ月後、夏が来れば、


木の皮が腐り、異臭を放ち、虫が大量発生して、


人が住める環境では、なく成る。



それまでに、新天地を見つける必要がある。


生活の拠点を移すのだ。



もちろん、3人で生きて行く事は、困難である。



今後は、他の部族であっても、合流して、


力を合わせ、生きて行く必要がある。



3人は、周囲を確認して、何かを話している。


川沿いは、倒木や落石で、歩ける状態では無い。



その為、3人は、再び、山の上部に移動して、


山中を移動する。



実際、僕に見えているのは、


数メートル範囲なので、


はっきりとは、解らないが、


山の上には、木々が残っている。



まさに、原始時代の様な、森である。


しかし、その為、道など無い・・・



僕は、妙に納得していた。



ファンタジー作品では、


誰も近付かない様な、異界の地であっても、


なぜか道がある。



しかし、現実は違う、


誰も来ない地面には、木と草が生え・・・


地面は、落ち葉や、枯れ草で、滑りやすく・・・


枯れた木が、進路をふさぐ・・・



つまり、カッコ良く戦える環境など、無いのだ。



『なるほど・・・』



僕が、そんな無駄な事を、考えている間も、


3人の移動は続く。



時々、山の「中腹部分」まで下りて、


斜面の湧き水で、水分補給を行う。



それは、川の近くである。



『近々、確実に腐る川・・・』


『倒木で、埋め尽くされた元渓流・・・』



ここには、住めない。



その後、山を登り、


2時間ほど、横ばいに移動・・・



周囲が暗く成ってきた。



どうやら、今日は、ここで野宿をする様である。



今回の火起こしは、スムーズだった。



先程の焚き火で、火起こし道具を、


乾かしておいた様である。



1分程度で火が点いた。



しかし、切り集めた小枝は、


水分を含んでおり、白い煙がモクモクと出た。



3人は、何も食べていない。



『1日1食なのか・・・?』



母からは、空腹の感情が伝わって来る。



おそらく、何か意味があって、


食事を抜いているのだ。



僕は、無知だった。



3人は、眠らない。



『狼の襲撃を、恐れているのか・・・?』



実際、母からは、恐怖の感情が伝わって来る。


3人に会話は無い。



『高度な会話が、出来ないのか・・・?』



『なぜ、この方角に進んで来たのか・・・?』


『目的地は、あるのか・・・?』


『他の村を、目指しているのか・・・?』



僕には、何も解らない。



『では、どうする・・・?』



明け方、3人は、交代で眠り始めた。


母の番である。



僕は、この時を待っていた。



千里眼で、母の夢の中を見る。


それが目的である。



『では、一体、どの様にすれば見えるのか・・・?』



僕の影響で、母の回復力は向上している。


実際、母に、疲れの感情が無い。



父や、祖母の感情が解らないので、


比較する事は、出来ない。



しかし、普通に考えれば、


疲労で倒れても、不思議ではない。



その様な状況に思える。



実際、父や祖母は、自分の番が来ると、直ぐに眠っていた。



そして、最後に、


本当は眠くない母に、寝る順番が回って来たのだ。


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