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これは魔法の書です。  作者: わおん
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076

当時、小学5年生・・・


僕は、原始人の胎児に転生していた。



ここは、未知の世界である。



『過去の地球なのか・・・?』


『それとも、別の星・・・?』



狼を撃退した後も、周囲を警戒する3人、



『何を警戒しているのか・・・?』


『目の前には、狼の死体が2つ・・・』



正確には、最初に倒した1頭は、


まだ、少し息があった。



しかし、母が棍棒で殴り、息の根を止めた。



その後、通称・父は、


その1頭を選ぶと、


当然の様に、解体を始めた。



『手慣れている・・・』


『日常的な事なのか・・・?』



『先程の、警戒は、何だったのか・・・?』



石のナイフで、腹を裂き、


内蔵を取り出し、それを地面に放置する。



僕は、成長した千里眼で、


その光景を2階から見る様な、視点で見ていた。



父は、狼の解体を続けている。


母は、キョロキョロしている。


祖母は、倒木から小枝を、切り集めている。



僕は、数メートル範囲しか見えないが、



『ここは、水害で壊滅した村の跡だ・・・』



何も残っていないが、


母の未練の感情から、その事が理解出来た。



狼の解体を終えた父が、巨木によじ登る。


僕は、その光景を、千里眼で観察した。



どうやら、木の皮を削り取っている。


その木の皮でさえ、ドロで汚れている。



『どんな水害だったのか・・・?』



母と、祖母は、指をクシ代わりに使い、


頭から抜け毛を集めている。



『髪の毛を、丸めて作った小皿・・・?』


『それで、何をするのか・・・?』



祖母が、毛皮の包みから、


木の棒と、木片を取り出した。



父が、それらを、こすり合わせる。



『火を起こすのか・・・?』


『これで本当に、火が起こるのか・・・?』



数分後、煙が出る。



先程、父が削り出した木の皮を、


母が指でつまみ、煙に近づけ、息を吹きかける。



その間も、父は、手を休めない。



『しめっている・・・?』



水害の影響で、乾燥した材料が無いのだ。


その為、父は、苦戦している。



更に数分後、


木片から、黒いコゲが、モコモコと出て来た。



と思ったら、その黒いコゲが、一瞬、赤く光る。



『種火が出来た!』



と、同時に、祖母が、


髪の毛で作った小皿で、それを包む。



そして、振り回す。


煙が出る。



髪の毛の玉が、火の玉に変わる。



これを使い、焚き火を起こす。



3人が笑っている。



倒木から切り集めた小枝は、


水分を含んでおり、大量の煙が出るのだ。



『なぜ、枯れ木を使わない・・・?』



そう思い、地面を見たが、


そこは、ドロだらけで、


落ち葉さえ、見付からなかった。



つまり、焚き火に使える枝など、


落ちていないのだ。



だから、倒木から、枝を切り集めたのだ。



『落ち葉も、枝も、落ちていない・・・』


『全てが流された・・・』



『木が抜けた跡・・・』



『地面が、えぐれ、地中の石が出ている・・・』


『一体、どんな水害だったのか・・・?』



先程、内蔵を取り出した狼から、


父が、肉を切り出す。



石のナイフで、肉を、一口サイズに切り分けている。



そして、それを、枝に刺し、


火で炙って、食べている。



おそらくは、食中毒の予防なのだと思うが、


それは、とても、臆病な行為に思えた。



『生き残る為の、知恵なのだろうか・・・?』



そして、思い出した。



以前、僕は、テレビで、蛇の毒を飲む人を見た。


その人は、それを得意気に見せていた。



自分の勇気を、アピールしているのだ。


愚かである。



その蛇の毒は、飲んでも無害だが、


口の中に、少しでも傷があれば、


そこから毒が入り、死んでしまうのだ。



そんなモノは、勇気では無い。



本当の勇気とは、恥かしがらずに、


正しい事をする。



それが、本当の勇気である。



愚かな行為を、自慢する事では無いのだ。



原始人なのだから、生肉を食べても平気・・・


原始人なのだから、もっと野性的な方が良い・・・



そんなモノは、僕の愚かな考えである。



本当に、正しいのは、肉を細かく切って・・・


それを、しっかりと焼いて・・・


本当に焼けているのか・・・


それを確認してから食べる・・・



3人は、それを守っているのだ。


3人は、正しいのだ。



僕は、以前の、コマ回し教室で、それを学んだ。



無能な人間ほど、他人に口出しをする。


自分には出来ないから、退屈なのだ。



一定量の肉を食べ終わると、


残りの肉・・・


つまり、狼の死体ほぼ1頭分を、


火の上に、直接置いた。



『食べないのか・・・?』



その間に、父が、狼の残り1頭を背負い、


巨木によじ登る。



そして、それを、巨木の上部に縛り付けた。



『一体、何の意味があるのか・・・?』



その後、3人は、移動を開始する。



『村を出るのか・・・?』


『木の上の狼は・・・?』



『生き残った仲間への連絡・・・?』


『腐り具合で、日数を伝える・・・?』



『焼いた狼は・・・?』



『その臭いで、獣をココに引き付け・・・』


『その間に、逃げる為・・・?』



実際、3人は、食料を持っていない。


狼の毛皮さえ、持って行かない。



母の感情から察すると、


もう、ここには、戻らない様に思えた。



母は、棍棒を握っている。



祖母は、火起こし道具と、石のナイフを、


元々持っていた毛皮に包み、それを左手に持ち、


右手には、木の棒を、杖の様に持っている。



『どうやら、ヒザが痛い様だ・・・』



父は、石槍を、


左手に2本、右手に1本持っている。



荷物は、これだけである。



僕の千里眼では、数メートル先は、


白いモヤで見えない。



しかし、



『空や太陽は認識出来る・・・』


『なぜ、見える・・・?』



僕は、理由を考えた。



『おそらく、大きいからだ・・・』



視力が弱くても、巨大なら見える。


その理屈だと思う。



つまり、この先、山があれば、


僕にも、見えるハズである。



『ここは、どの様な場所なのか・・・?』


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