071
当時、小学5年生・・・
『僕は、すでに死んでいる・・・』
僕は、その可能性に、直面していた。
しかし、どの様に対応すれば良いのか?
他人事に思えた。
悲しくも、何とも無いのだ。
僕は、冷静に考えた。
『なぜ、僕は、死んだ・・・?』
僕は、テレビをヒントに、
魔法の仕組みを、理解した。
結果、僕の魔法は、大きな力を発揮した。
そして、それは、僕の限界を、
超えるモノだった。
おそらく、その時点で、僕は死んだのだ。
『死んだけど、意識はある・・・』
『意識があるのに、死んでいる・・・?』
『では、僕は、何を根拠に・・・』
『死んだと、考えている・・・?』
僕は、その理由を考えた。
僕の千里眼は、初期段階である。
本来、天井の文字も読めないのだ。
そんな僕に、空が見えるのは、不自然である。
なぜなら、もし、僕が、まだ生きているなら、
僕は、今、病院のベッドの上に、
居るハズである。
『では、なぜ、空や木が見えるのか・・・?』
『おそらく、現在の僕は、胎児である・・・』
『何かに噛まれ、倒れた女性・・・』
『その・・・お腹の中に・・・僕はいる・・・』
『その様に感じる・・・』
僕が、その事を認識すると、
その瞬間、千里眼の制度がアップした。
『少し、見えやすく成った・・・』
先程まで、見えていたモノが、
間違い無く、空や木であったと、確認出来た。
今まで、一点集中すると、
映像が消えていたが、消える直前に、
ぼんやり視点に戻す・・・
そして、再び、一点集中で見る・・・
これを連続5回、繰り返す事が、
出来る様に成っていた。
結果、解った事がある。
倒れている若い女性と、
それを心配する、若い男性と、中年女性、
この3人は、人間では無かった・・・
顔が猿に似ている。
『類人猿』
猿では無いが、猿顔・・・
現代にも、猿顔の人は居るが、
『そのレベルでは、ない・・・』
『それ以上に、猿顔だ・・・』
『しかし、性別や年代は・・・』
『顔を見て解るレベル・・・』
本物の猿の場合、
僕には、その見分けは出来ない。
『つまり、人間に近い猿・・・?』
『猿人?原人?原始人?』
残念ながら、僕に、それらの区別は出来ない。
『人間に進化する前の種族・・・?』
その様な印象である。
小柄で、体毛は薄い、現在、寒い時期の様で、
3人は、獣の皮を身にまとっている。
『原始人』
まさに原始人だった。
その事を理解すると、僕は、行動を開始した。
『時間が無い!』
現在、僕は、胎児である。
そして、僕の母である原始人が、
獣に噛まれて倒れている。
つまり、死ぬ危険性があるのだ。
『助けなければ・・・』
僕は、母のお腹の中を、何度か確認した。
しかし、胎児と認識出来るモノは無い。
あくまでも、僕の予想だが、
『受精して、まだ数時間・・・』
その為、現在の僕は、目視出来ないサイズ。
しかし、僕が、そこに居る事は、核心出来た。
『では、何をすれば良いのか・・・?』
『彼女、いや・・・母を治す!』
『しかし、どうやって・・・?』
『回復魔法は、どうすれば発動する・・・?』
そして、疑問を感じる。
『回復魔法で、良いのか・・・?』
僕は、自分自身の、走った疲れや、勉強の疲れを、
回復させる事は出来る。
『つまり、疲労回復は出来る・・・』
『しかし、野犬に噛まれて・・・』
『高熱が出た場合に・・・』
『僕の疲労回復が、役に立つのか・・・?』
直感的に、これでは無理だと思えた。
しかし、その時だった。
『あっ!』
僕は、思い出した。
以前、テレビで見たのだ。
正義の味方が、バイキンを倒す。
その様な単純な紙芝居を、幼稚園児に見せると、
その直後、園児の免疫力が、アップするのだ。
現在、メスの原始人は倒れており、
その足には、噛まれた跡がある。
つまり、僕の母に成る人物は、
感染症の危険性があるのだ。
実際、苦しんでいる。
放置すれば、身体に菌が周り、死んでしまう。
小学5年生の僕に、医学的知識など無い。
もし、知識があっても、
僕の魔法で、抗生物質を生成する事など出来ない。
つまり、今、僕に出来る事は、
『強いヒーローを考える・・・』
『できる限りシンプル・・・』
『幼児が見ても、強いと理解出来る姿・・・』
次に、
『バイキンを考える・・・』
『シンプルで、嫌な感じ・・・』
『幼児が見ても、恐いと認識出来る姿・・・』
『それを、戦わせる・・・』
僕が、それをイメージする。
『彼女の身体の中で、暴れるバイキン・・・』
『それを退治するヒーロー・・・』
『沢山のバイキン・・・』
『それに立ち向かう1人のヒーロー・・・』
『ヒーローを応援したく成る状況・・・』
『それをイメージする・・・』
『これで、僕の無意識魔法が・・・』
『この原始人の、免疫機能を・・・』
『向上させてくれる・・・』
『ハズだ・・・』
しかし、残念ながら、僕のイメージが続かない。
同じ空想では、マンネリ化して、
ワクワク感が減少する。
このままでは、効果が低下する可能性がある。
そこで、今度は、
『腐った水を、排出するイメージ・・・』
『乾いた地面に、雨が降り・・・』
『草木が復活するイメージ・・・』
『悪い状況が、改善するイメージ・・・』
これらを繰り返した。
『3人の原始人が、動揺している・・・』
死ぬハズのなのに、回復して行くのだ。
パンパンだった足が、
異常なスピードで治って行くのだ。
正直、僕も驚いていた。




