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これは魔法の書です。  作者: わおん
7/2232

007

当時、僕は、4歳・・・



『僕は、幼稚では無い・・・』


その様に思っていた。



しかし、自分が幼児である事は、自覚していた。


知らない事が、多過ぎるのだ。



その為、不安だった。



『僕は、本当に魔法使いなのか・・・?』


『実験に、間違いは、無いのか・・・?』



その為、僕は、この数日間、


実験を、繰り返していたのだ。



しかし、もう実験は不要だった。



『僕は、魔法が使える・・・』



それは、もう間違い無かった。




実験をするのは、不安だからだ。


信じて、いないから、実験をするのだ。



でも、その不安は、もう無い。



『僕は、魔法が使える・・・』


それは、事実である。



コマが、不自然に倒れるのだ。



魔法を、意識した時だけ倒れるのだ。


これは、間違いの無い、事実なのだ。



僕は、その事を、自分に言い聞かせた。



つまり、今後、必要なのは練習である。



今後は、魔法の能力を向上させる。


それが目的と成った。



『では、何を練習すれば良いのか・・・?』



ちなみに、当時4歳だった僕に、


この様な、明確な思考などない。



実際には、


「クルクルが、ピッとなって、とまった」


「何回も、とまった」


「やめた時は、動いた」


「やった時は、とまった」


「だから、ぼくは、魔法使いだ」


「それじゃあ、今度は、力を強くする」


この程度の、判断である。



難しい言葉など、知る訳も無かった。



しかし、


根本的な事は、理解していた。



その結果、僕には、日課が出来た。



まず、スローモーションで見える為の、


仕組みを考える。



僕は、早起きなので、


母が起こしに来るまでの間、考える時間があった。



その為、僕は、毎日毎日考えた。


答えなど出ないが、それでも考えた。



次に、子供部屋のドアを開ける時には、


周囲に誰も居ない事を、確認した上で、


ドアを、指で軽く突き、


その後は、魔法で開ける様にした。



もちろん、ドアは開かない。


僕の魔法には、まだ、それ程の力は無いのだ。



しかし、魔法を使える僕が、


毎日、魔法を出す練習を、繰り返せば、必ず強く成る。


そう信じて行った。



そして、1日1回だけ、サイコロを振る様にした。


その際に、1を出す事を念じる。



サイコロの1は赤色なので、


転がっている最中でも、見分けられる。



それが上に来る様に、動かすイメージをする。


1回しか出来ない事で、集中力が高まる。



もちろん、出ない。


出ても、それは偶然である。


僕は、その事実を認めていた。



そして、その日の最後に、1日1回、


逆立ちコマを、動かす練習をする。



本当は何度でも、練習したいが、


バレると没収されるので、


1日1回、8の字に動かすイメージで行う。



もちろん、これも練習であり、


実際、8の字に動く事は無かった。



しかし、


僕は、好きな事は、一生懸命に頑張れる。



その為、全く出来ないのに、


1日も休まずに、毎日、続けたのだ。



そして、僕は、幼稚園の年長組に成っていた。



年齢は5歳、


毎日、考え試行錯誤を続けた結果・・・



ある日、スローモーションで見る為の、


練習方法が解った。



その日も、僕は、壁時計を見て、


7分間を計っていた。



僕が、時間を見る係で、


姉が、お風呂のお湯を、止めに行く係だった。



そして、気付いたのだ。



『残り3秒が長く感じる・・・』



つまり、待っている状況では、


時間が、長く感じられるのだ。



つまり、この原理を、


スローモーションで見る練習に、


取り入れれば良いのだ。



『では、何を待つ・・・?』


『何を待てば、長く感じる・・・?』



そして、お風呂の最中、思い付いた。



僕は、風呂での息止めを、禁止されている。


意識を失うまで練習して、死んでしまうからだ。



『これだ!』



お風呂から上がると、僕は、


母と姉を脱衣所に残し、早々とリビングに向かう。



そして、壁時計の前に行くと、


秒針を見ながら、息を止めた。



『もう駄目だ!』と思った瞬間から3秒我慢する。



その3秒が長い・・・


最後の1秒など3秒に感じる。



『よし、これだ!』



この日から、風呂上りの、


息止め練習も、日課に加わった。



ところが・・・



毎日続けた事で、問題が起きた。



肺活量が鍛えられ、


息切れまでの待ち時間が、長く成って行くのだ。



『これでは、いつか母や姉に、バレる・・・』


『なぜ息を止めているのか、聞かれる・・・』



『結果、風呂以外でも・・・』


『息止めが禁止され、監視される・・・』



『今後、他の練習にも、支障が出る・・・』



『どうしよう・・・』



そして、僕は気付いた。



『あっ! 息を吐いて・・・』


『スタートするれば良いんだ・・・』



翌日から、僕は、風呂上がりには、


家族にバレない様に、息を吐きながら、


リビングに向かった。



そして、壁時計の秒針を見て、


ほぼ限界の状態で、3秒耐える。



結果、秒針がスローモーションで見える体験・・・


これが、毎日、繰り返された。



しかし、この練習方法にも、問題があった。



結局の所、これは息止めである。



つまり、最終的に、息が切れ、


苦しむ姿を、家族に、見られる危険性があるのだ。



『これでは、バレる・・・』



そこで、別の方法を考えた。



当時の僕は、壁時計の秒針を見ているだけで、


時計の見方など、知らなかった。



そして、それはチャンスだった。



そこで、僕はアナログ式の、時計の見方を覚えた。


そして、近所に住んでいる、祖父母の家に行く。


そして、祖母に、時計の見方を覚えた事を自慢する。


そして、ホームセンターの話をする。


そして、腕時計の話をする。


そして、お小遣いを貯めて、腕時計を買うと宣言する。



すると・・・・



翌日、僕は、980円の腕時計を買ってもらえた。



『これでよし!』



その後、トイレで、秘密の息止め練習が、


出来る様に成った。



毎日、腕時計をする僕、


その事を知って、喜ぶ祖父母。



『上手く行った!』



しかし、必要な時に、


スローモーションが、発動する事は、無かった。



息を止めて、秒針を見ている時以外、


スローモーションが、起こらないのだ。



『何の、進歩も無い・・・』



しかし、僕の心は折れない。



僕は、練習好きである。



そして、僕は、好きな事を、


止める事が、出来ないのだ。



おまけに、バレ無い様に練習する・・・


そのスリルが、僕の気持ちを、


盛り上げていた。




子供部屋のドアを少し開き、


そのドアを、指で軽く突いて、少し動かす。



そして、その後、魔法で開ける。


実際、そんな事は、出来る訳がない。



しかし、僕は、魔法使いなのだ。



僕が魔法使いである事は、


逆立ちコマで、証明出来る。



『だからドアも、必ず開く・・・』



僕には、その様な、確信があった。



『しかし、ドアは、動かない・・・』


『改善方法を、考えるベキだ・・・』


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