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当時、小学5年生・・・
実力以上の魔法を使った結果、
僕の脳は、破壊され、
植物人間に成ってしまった。
ところが、その破壊されたハズの脳には、
魔法を発動する機能が、残っていて、
それによって僕は、
目を閉じていても、見る事が出来た。
『魔法の反射を受け取る・・・』
出来てしまえば、
『なぜ、今まで、気付かなかったのか・・・?』
と、不思議に思う程度の、簡単な理屈だった。
そして、それを理解した事で、
千里眼が開眼したのだ。
とはいえ、僕の千里眼は、
本物の千里眼の様に、高性能では無い。
ただ、ぼんやりと見るだけ・・・
究極の薄目・・・
ほぼ何も見えない・・・
その様な状態である。
しかし、そんな状態ではあるが、
『何かが、見える・・・』
『おそらく・・・2人いる・・・?』
その瞬間、その光景は消えた。
集中して、見てしまったのだ。
集中して一点を見ると、
反射量が減り、見えなく成る。
『父と母?』
『それとも看護師さん?』
何度か繰り返したが、誰であるのかは、
特定出来ない。
ほぼ見えていない。
見えないに等しい。
何度も試したが、進歩がない、
そこで、別の方法を考えてみる。
『僕の身体を、見てみよう・・・』
『魔法を、自分に反射させれば・・・』
『僕の姿が、見えるハズ・・・』
自分の姿が、見えた場合、特別な何かが、
起こる可能性が、考えられた。
以前、僕は、走っている時に、
背中を押されている感覚を、経験している。
つまり、僕が発した魔法で、
『僕を見る事も可能なハズ・・・』
『そして、見えた場合・・・』
『自分の存在が、認識出来た場合・・・』
『回復魔法の効果が、上がるのでは・・・?』
『走っていた時は・・・』
『無意識魔法は、僕の背中を押した・・・』
つまり、
『僕を助けていた・・・』
つまり、
『植物人間の僕が、僕を認識出来れば・・・』
『回復魔法の効果が、上がるのでは・・・?』
僕は、自分に、そう言い聞かせると、
自分から1メートル前方の、空気を意識する。
そして、絵を描く時の感覚で、
「見る」イメージをする。
実際にモノがある訳では無い・・・
空気なのだら、見える訳が無い・・・
それを反射板に使うのだ。
その為、苦戦する。
1メートルという距離も、
あくまでも、僕の感覚なので、固定出来ない。
ところが、
『時間は、沢山ある・・・』
『他に、やる事が無いのだ・・・』
と思ったら、
『ぼんやりと、見えた・・・』
実際には、ほとんで見えていない。
しかし、多少は理解出来た。
それは、僕の姿では無かった。
『誰かが、僕を見ている・・・』
『2人が、こっちを見ている・・・?』
結局、見えたのは、先程の2人だった。
しかし、その2人は・・・
『見ている・・・?』
『僕を見ている・・・?』
『僕に、意識がある事に、気付いている・・・?』
『それとも、ただ見ているだけ・・・?』
『何か、必死に話しかけている・・・?』
ほどんど見えない、
千里眼が途切れる。
もう1度、挑戦する。
すると、見えた。
相変らず、ほとんど見えない。
『おそらく、1人は、若い男性・・・?』
千里眼が途切れる。
もう1度、挑戦する。
『もう1人は、おばさん・・・?』
そこで、僕の集中力が途切れ、見えなく成った。
『本来なら、ここで意識を失う程・・・』
『魔法を使ったんだ・・・』
しばらくの間、回復が必要らしい。
不安を感じる・・・
そこで、僕は、今、ぼんやりと見えた光景を、
思い返してみる。
『医者と看護師だったのか・・・?』
『何か違う・・・・』
『男性が若すぎる・・・?』
『必死だった・・・?』
『空・・・!』
『空が見えた・・・?』
『明るかった・・・!』
『木・・・!』
『木が見えた・・・!』
『僕は・・・』
『つまり、僕は、木の根元で寝ていた・・・?』
僕は、直感した。
『災害・・・・』
『津波・・・・』
おそらく、大震災が起きたのだ。
津波の危険性があるのだ。
だから、山に避難したのだ。
僕は、以前、学校で、
その為の訓練を、受けた事があった。
『本当に、震災が起きたのか・・・?』
『津波の危険性があるのか・・・?』
『植物人間の僕を・・・』
『誰かが運んでくれたのか・・・?』
『この2人が運んでくれたのか・・・?』
そして、僕は、恐怖を感じた。
『・・・・』
『皆は!』
僕は、家族が心配に成った。
再び、絵を描く感覚を呼び戻し、
ぼんやりと見る。
周囲、数メートル範囲が、
ぼんやりと見える。
『空、木、あの2人の男女・・・』
『それらが、何となく見えるレベル・・・』
『何も解らない・・・』
集中して見てしまう。
また、消える。
心を静める。
見える。
集中して見てしまう。
また、消える。
これを、何度繰り返しただろうか?
『家族の事は、心配だが・・・』
『この2人しか確認出来ない・・・』
『仕方が無い・・・』
そこで、僕は、一旦、自分の姿を見る事にした。
すると、視点が変わった。
『・・・』
『あれ・・・?』
『違う・・・』
『早とちりだ・・・』
そこには、おそらく、
若い女性が倒れていて、
先ほどの2人が、必死に声をかけている。
残念ながら、声は聞こえない。
『・・・』
再び、見えなく成る。
僕は、何となく解った。
動揺する・・・
『しまった・・・!』
災害など起こっていない。
それは、僕の勘違いだ。
どういう理屈かは、解らない。
しかし・・・・
『僕が千里眼を使った結果、この女性が・・・』
『僕の目の代わりに、成ってしまった・・・!』
つまり、僕は、
この女性が見た光景を、見ていたのだ。
『そして、その女性が倒れている・・・』
『つまり、僕は、彼女の脳に・・・』
『負担をかけてしまった・・・』
後悔しても、手遅れ、それが現実である。




