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当時、小学5年生・・・
ある日、テレビを見ていて、僕は知った。
全てのモノは、素粒子によって作られている。
つまり、1つの物質を、半分に切って・・・
それを、半分に切って・・・
これを繰り返すと、最終的には、
半分に出来なく成る。
それが素粒子である。
素粒子は、数種類あり、
その組み合わせで、世界の全てが作られている。
水や、空気や、光さえも、
素粒子で作られているのだ。
つまり・・・
僕は直感した。
『これが魔法の正体だ・・・』
おそらく、僕は、素粒子の操作が出来るのだ。
『それが、魔法なのだ・・・』
空気も光も、素粒子である。
だから、その素粒子を使い、ドアを動かした。
動かせたのだ。
そして、衝撃的な事実を知る。
『素粒子は、振動している・・・』
つまり、全ての物質は、
目には見えないが、動いているのだ。
人間の目には、見れないレベルで、
振動しているのだ。
『これだ・・・』
実は、見えるのだ。
先日から、僕には、
それが見えていたのだ。
僕は、毎日、ティッシュの箱を見ている。
見えないハズの、紙の弾力を、見ようとしている。
すると、見える様に成ったのだ。
最初は、錯覚や、思い込みだと、考えていた。
しかし、僕は、ティッシュの箱の弾力が、
見える様に成ったのだ。
そして、僕は、この現象に、心当たりがあった。
『ボヨン・・・?』
僕は、以前、魔法で、ドアの開閉を行っていた。
しかし、それは、とても、不思議な事であった。
僕は、動いているモノしか、動かせないのだ。
だから、最初、動かす時には、指で突く。
ところが、魔法による開閉は、
開いた時点で、1度、完全停止する。
つまり、僕は、開いたドアを、
魔法で閉じる事が、出来ないのだ。
ところが、スローモーションで、
その光景を見ると、
完全停止したハズのドアが、
一瞬「ボヨン」と動くのだ。
実際には、錯覚レベルの動きである。
本当に動いているのか・・・?
実の所、解らない。
しかし、事実として、
ドアが「ボヨン」と動く様に見え、
その結果、完全停止したハズのドアを、
再び動かす事が出来たのだ。
そして、今、その謎が解明された。
『僕は、素粒子の振動を、見ていたんだ・・・』
『実際には、ドアは動いて無かった・・・』
『でも、当時の僕は・・・』
『異常な、集中力で、ドアを見ていた・・・』
『その結果・・・』
『素粒子の振動を、感知していたんだ・・・』
『なるほど、謎は解けた・・・』
僕は、この数日、不思議に思っていたのだ。
毎日、ティッシュの箱の絵を描き、
異常なレベルで、観察を続けた結果・・・
箱の弾力が、見える様に成っていたのだ。
『なぜ、見えるのか・・・?』
もちろん、誰にも聞けなかった。
ところが、僕は、
テレビで、素粒子の存在を、知ったのだ。
そして、弾力が見える理由を、理解したのだ。
僕は、半分眠った状態に成ると、
目を閉じていても、天井が見える。
なぜ見えるのか?
それが疑問だった。
しかし、答えは簡単だった。
見えている訳では、無いのだ。
素粒子の振動を、感知していたのだ。
見えないハズの、紙の弾力も、
それで感知していたのだ。
僕は、この時、リビングで、
テレビを見ている最中だった。
まだ、番組は続いている。
台所で母が、夕飯の片付けを始めた。
姉は、勉強する為に部屋戻った。
そこで、僕は、心を静め、
絵を描く時の感覚を、再現した。
そして、ぼんやりと見る・・・
その瞬間、僕は、ピンク色の光に包まれた。
以前、ドアを押した瞬間、
なぜか見えた、ピンク色の光のトンネル。
それが、僕を包み込んだ。
その瞬間、周囲の全てが、認識出来た。
テーブルの上の、ラムネのボトル・・・
見てはいない、しかし、認識出来た。
そして、僕は、それを、動かす事が出来た。
ラムネのボトルが、
僕の方へと向かって来る。
僕は、動いていないモノでも、
動かせる様に成っていた。
素粒子は、振動しているのだ。
そして、その素粒子によって、
世界は作られているのだ。
だから、動かせるのだ。
だから、全ての存在を、
感じ取る事が出来るのだ。
台所で母が、コップを洗っている。
僕は、見ていない。
母は、僕の背中側にいる。
その為、本当なら見えない。
しかし、僕には、母の動きが、
はっきりと感じられた。
その最中も、ラムネのボトルは、
テーブルの上を移動する・・・
現在、姉は、自分の部屋で勉強をしている。
この時の僕には、
その状況まで、感じとる事が出来た。
ラムネのボトルは、テーブルの端まで来ると、
空中を移動して・・・
僕の手の中へと収まった。
僕は、自分の手で、ラムネのボトルを開けた・・・
内心あせっていた・・・
しかし、手遅れだった・・・
僕は、久しぶりに、意識を失った。




