060
当時、小学4年生・・・
1週間前までの僕は、
シーグラス作りに夢中だった。
しかし、
僕には、魔法を出している感覚が無い。
その結果、僕は、
シーグラス作りに関して、自分が、
ただの見物人である事に、気付いた。
実際、僕が、やっていた事は、
ガラス片を包んで、持っていた、だけ・・・
そこには、誇りなど、無かった。
そして、僕は、恐怖を感じた。
『僕には・・・』
『鉛を純金に変える能力がある・・・』
その可能性に、気付いたのだ。
当時の僕に、純金の使い道など無く、
純金の製作には、興味が無かった。
しかし、
『未来の僕は、どうだろう・・・?』
『大人に成った僕は、純金作りを・・・』
『我慢出来るだろうか・・・?』
そう考えると、不安に成った。
もし、僕が、純金を作り、
それを換金した瞬間、
この世界の経済は、崩壊を始めるのだ。
『そんな事は、許されない・・・』
『だから、僕は、人間として・・・』
『成長する必要がある・・・』
『しかし・・・』
『その為の、時間稼ぎが必要だ・・・』
その為、シーグラス作りは、出来ないのだ。
このまま、作り続ければ、
変化魔法を、成長させる危険性が高いのだ。
『変化魔法の成長を・・・』
『1日でも遅らせたい・・・』
『その為には・・・』
『魔法以外の趣味が、必要だ・・・』
そんな時に、興味が湧いたのが、書体だった。
そして、今、その興味が発展して、
『キレイとは、何か・・・?』
『美しいとは、何か・・・?』
その事に、興味を持つ様に成った。
その為、僕は、教科書のイラストを写した。
今度は、絵を描く事で、
美しいと感じる理由を、探ろうとしたのだ。
『自分が、何をしているのか・・・?』
『何の為に、しているのか・・・?』
『もちろん・・・』
『美しさの正体を、知る為である・・・』
『しかし、それを知って、何に成る・・・?』
何も解らないまま、何かを見ては、描いていた。
ところがである。
消しゴムを、見て描き。
鉛筆を、見て描き。
左手を、見て描き。
悩む・・・
同じモノを、3回描いて比較した。
『これは綺麗なのか・・・?』
『1回目と、2回目と、3回目では・・・』
『どれが綺麗なのか・・・?』
『2回目・・・?』
『なぜ、それが綺麗なのか・・・?』
『バランスが良い・・・?』
『では、他は、駄目なのか・・・?』
『そんな事は無い・・・』
『では、バランスって何だ・・・?』
そして、気付く。
『バランスは、不要なのでは・・・?』
無茶苦茶に書いた書道作品でも、
素晴らしと感じるモノがある。
『なぜ無茶苦茶なのに、綺麗なのか・・・?』
試しに左手を見ながら、無茶苦茶に描いてみた。
『勢いがあって良い・・・』
『良い・・・?』
『良いって・・・何だ・・・?』
僕は、病的な程、夢中に成っていた。
しかし、同じモノを描き続けると、
煮詰まって来る。
しかし、学校で、見て描けるモノは、
限られる。
同級生を描く事も、立場的に、無理である。
同級生は、僕に気をつかい、何も言わない。
そんな同級生を描く事は、失礼に思えた。
『では、教室を出て、何かを描くか・・・?』
と思うが、
さすがに、教室を出て描くと、
先生も立場上、僕を止める事に成る。
当時、姉は6年生、まだ小学校にいる。
『見つかると、怒られる・・・』
『では、本は・・・?』
『本のイラストを、見て描けば・・・』
僕は、休み時間に、
本を読む事を、許されている。
ところが、当時、僕の通う学校では、
休み時間の読書は、禁止されていた。
雪国なので、外で遊べる時は、外で遊びなさい。
その様な、方針があり、この季節、
休み時間に、読書は出来ないのだ。
もちろん、僕は、
例外的に、許可をもらっている。
だから、その気に成れば、
本を見て、描く事も出来た。
『しかし、僕には、出来ない・・・』
僕の精神年齢は、成長していたのだ。
その為、当時の僕は、雰囲気的に、
読書が出来なく成っていた。
僕は、この状況に矛盾を理解していた。
僕は、休み時間も教室に居る。
校庭に出ると、先生が心配するからだ。
つまり、本を読まなくても、
結局は、教室に居るのだ。
だったら、
『本を見て描いても良いのでは・・・?』
と思う。
しかし、
誰も、文句は言わないが、気まずいのだ。
しかし、それでも描きたい。
家で描くと、母に止められる。
そこで考えた。
僕は、夜、テレビを見る時に、
その映像を、必死に記憶した。
そして、翌日、学校で、
それを描く事にしたのだ。
ところが、上手く行かない・・・
『何を、どの様に見れば良いのか・・・?』
見た時は、覚えている。
しかし、次の日、学校に行くと、
あの髪型は? 服の模様は?
水面は、どうやって描く?
覚えても、忘れる。
覚えても、描けない。
『一体、どうすれば・・・』
そんな、ある日、事件が起きた。
僕の描いた絵が、コンクールで、
金賞を取ったのだ。
何か解らないまま、話が、
トントン拍子で、進んで行った。
そして、僕は、絵を習う事に成っていた。




