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これは魔法の書です。  作者: わおん
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当時、小学3年生・・・



僕が、黄色いガラス片を、持ち歩き35日目・・・



ガラス片は、シーグラスと成り、


その亀裂も消えていた。



『なぜ、ガラスの亀裂が消えたのか・・・?』



僕は、以前、テレビで見た事があった。



ガラス食器を作る為に、ガラスを溶かし、


それを固め作っていた。



つまり、ガラス片の、亀裂を消す為には、


1度、溶かして、固める必要があるのだ。



しかし、それには、


千度を超える高温が必要である。



僕の右手で、出来る訳が無い。



『では、なぜ、亀裂が消えた・・・?』



結局、何も解らない。



僕は、この黄色いシーグラスを、


手さげ金庫にしまった。



祖父の不用品を、貯金箱として使っているのだ。



そして、机の中の、ガラス片の中から、


亀裂のあるモノを探した。



『残念ながら無い・・・』



しかし、傷モノはあった。


「ガラス切り」の、失敗傷の様である。



ステンドグラスは、ガラスを割って使う。



その際、「ガラス切り」という道具で、


スジ傷を付け、叩いて、その部分を割る。



僕は、以前、テレビで、それを見て、知っていた。



もしかすると、


このステンドグラスを、捨てた雑作家も、



『あの放送を見て、始めたのか・・・?』



僕は、スジ傷入りの、黄色いガラス片を選ぶと、


ノートに輪郭を写し、傷の長さを記入した。



しかし、実の所、これは、無駄な作業であった。



シーグラス化した時、ガラス片は、角を失っている。


その為、完成後に、ノートと比較した場合、


そのガラス片は、小さく成っている。



これは、当然の結果であり、


それを見ても、何も、知る事など出来ないのだ。



しかし、



『どの様な原理で・・・』


『シーグラス化しているのか・・・?』



それには、興味があった。



しかし、それを調べる方法が解らない。



『では、色は・・・?』


『色が濃く成っていた場合・・・』


『圧縮の可能性が考えられる・・・』



そこで、写真を撮る事も考えたが、


写真の色と、実物の色は違う。



つまり、無駄である。



シーグラス完成後に、他の黄色のガラス片と、


比較する方法もあるが・・・



シーグラス化したガラスは、白っぽく成る。



そして、僕の技術では、前作の白と、今回の白を、


全く同じにする事など、出来ない。



割って、断面を比較する場合も、


2つのサイズを統一する事は、不可能である。



つまり、光の加減が違う為、


大きい方が、濃く見えるのだ。



その為、純粋な比較が、出来ないのだ。



『一体、どの様な原理で、亀裂れが消えた・・・?』



例えば、


ガラスを分解している場合、


僕の右手には、ガラスの粉末が残るハズである。



しかし、それが無い・・・



ちなみに、重さを計っても、


台所レベルの計りでは、その変化は解らない。



そもそも、表面を分解しても、亀裂は消えない。



『つまり、ガラス片は、魔法の力で・・』


『圧縮され、小さく成っているのでは・・・?』



『その結果、ガラス片の角が丸まり・・・』


『亀裂も消えるのでは・・・?』



『それを、どの様に確認する・・・?』



しかし、冷静に考える。



『それを知って、どう成る・・・?』



僕にとって、最も重要なのは、


これが趣味という事である。



この趣味の目的は、シーグラスを作る事であり、


魔法の謎を、解明する事では無い。



だから、1枚のガラス片を1年間持ち歩き、



『消滅するのか・・・?』



などと、実験する気持ちにも成らない。



僕は、本来の目的を、思い出した。



『僕の目的は、魔法の暴走を止める事だ・・・』


『その為に、魔法に代わる趣味を探した・・・』



しかし、家族に監視されている僕が、


一般的な趣味に専念する事は、不可能だった。



その為、隠れて行う必要があった。



その結果、結局は、魔法を使う以外に、


選択肢が無かった。



『本当は、魔法を使いたく無い・・・』


『しかし、身体が成長するだけで・・・』


『僕の魔法は、成長してしまう・・・』



そして、僕には、その魔法を、



『コントロールする義務がある・・・』


『その為には、練習する必要がある・・・』



『結局は、魔法からは逃げられない・・・』



そして、今、僕の右手には、


新しく取り出した、傷入りのガラス片がある。



僕は、魔法を、使いたい訳では無いのだ。



『シーグラスの完成度を、上げる為に・・・』


『この傷を、消したい・・・』



僕は「シーグラス作り」という趣味に、


ハマっていた。




そこで、今回は、


名刺サイズに切った新聞紙を5枚用意、


1枚目を水で濡らして、ガラス片を包み、


その後、2枚目を濡らして、さらに包む・・・



これを繰り返した。



『インクが、ガラスの色に変化を与えるのか・・・?』



その実験でもある。



これを、ラップとテープで包んで、


そして、考える。



『これを、学校の「うわばき」に入れたら・・・?』


『授業中も出来るのでは・・・・?』



『そんな事をしたら、水が漏れるか・・・?』


『魔法の使い過ぎて、倒れるのでは・・・?』



これまで、何度も考えた事である。



ちなみに、空ボトルに、ラムネを1粒入れて、


それを、腹巻きに入れて寝ても、


ラムネは、分解しない。



分解するには、それ成りの、意識が必要である。



そうで無ければ、僕が持ち歩くラムネは、


全て粉末に成っている。



しかし、授業中なら意識が出来る。


しかし、意識を失う危険性がある。



ラムネを食べ過ぎると、


魔法の暴走が、起こりやすく成る。



『結局、我慢・・・・』


『我慢・我慢・我慢・・・』


『このストレスは、問題無いのか・・・?』



一瞬不安に成ったが、


僕は、シーグラスが完成して行く事に、


満足している。



『それが、ストレスを、軽くしている・・・?』


『これは、趣味として、成功しているのか・・・?』



実際、


ベッドの中で行う、ラムネ分解の時間も、


シーグラス作りに、使う様に成っていた。



つまり、夢中に成っていたのだ。



10日後、


新聞で包んだ、黄色いガラス片を開封。



シーグラスは完成していた。



『・・・・』



しかし、少し残念な気持ちに成った。


ガラス片は黄色かった。



僕の予想では、新聞紙の影響で、変色が起こり、



『黄緑に成るのでは・・・?』



と期待していたのだ。



しかし、前回の、黄色いシーグラスと比較しても、


色の違いは無い。



サイズの変化は、誤差のレベル。


やはり解らない。



スジ傷に関しては、


『浅く成っている・・・?』



傷の長さは、記録出来るが、深さは無理だった。


結局、包み直して、さらに10日継続。



傷無しの、シーグラスが完成。



『本当に、消えている・・・』


『どの様な原理で消えた・・・?』


『傷を埋めた分、どこかが減ったのか・・・?』



などと、観察するが・・・



シーグラスに成るという事は、


ガラス片の角が、無く成っているのだ。



『それは、どこに消えた・・・?』


『傷を埋めには、多過ぎる量だ・・・』



『それが消えて、どう成った・・・?』



僕は、ワクワクしながら、何度も考えた。



もちろん、答えなど出ない。


しかし、楽しかった。



では、次の段階である。



新たに、シーグラスを製作する。


今後は、毎日開封して、中身を確認する事にする。



8日目で、シーグラス化が完了していた。


15日目で、スジ傷が消えていた。



その次、


7日目で、シーグラスが完成。


12日で、スジ傷が消えた。



『成長している・・・・』



僕にとって、魔法の成長は、危険である。



しかし、このシーグラス作りが、



『魔法の消費・・・』



つまり、魔法を使った達成感を得る事に、


役立っている事も、事実である。



『では、素手なら・・・?』


『水新聞で包まずに、直接、にぎったら・・・?』



最初のシーグラスは、素手で作ったのだ。



『完成までに、時間がかかるから・・・』


『魔法の成長も、遅いのでは・・・?』


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