052
小学3年生・・・
不法投棄の中から、
ガラス片を持ち帰った翌日・・・
今日からは、登下校の時に、青いガラス片を、
右手に軽く握り、歩く事にした。
2日目、変化が無い、
『意味は、あるのか・・・?』
3日目、変化に気付く、
『表面が、ザラザラしている・・・?』
『すりガラス・・・』
と、までは行かないが、
表面が、若干白く成っていた。
手の平を確認、ガラスの粉末は無い。
両手を、こすり合わせたが、その感触も無い。
6日目、ガラスの角が丸く成っている。
これまでは、手を切る心配があったが、
その心配が無いレベルに、角が消えていた。
15日目、僕は、これを知っていた。
『シーグラス・・・』
実際には、海や川から流れて来たガラスが、
砂に磨かれ、角を失い、すりガラス状に成ったモノ。
それが、砂浜に打ち上げられ、
それを、ゴミとは思わない人に、
拾ってもらえれば・・・
それはシーグラスと呼ばれ、
1枚、数十円の価値に成る。
『僕の、これに、その価値があるのか・・・?』
それは解らないが、
僕は、これを、貯金箱に貯める事にした。
翌日、机の中から、
ノートで包んだガラス片を取り出し、
その中から、黄色いガラス片を選ぶ・・・
すると、そこには、小さな亀裂があった。
その瞬間、疑問を感じた。
『この亀裂は、消えるのか・・・?』
『分解出来るなら、修復も出来るのでは・・・?』
常識的に考えた場合、
分解と、修復は、別物である。
粉末に成ったラムネ菓子が、
元の形状に戻る事など、絶対に無い。
僕は、その様に理解している。
その理屈で、考えた場合、
ガラスの亀裂を、消す事など、
僕には、不可能なのだ。
しかし、僕は、魔法使いである・・・
そして、思い出す。
『ステンドグラスを埋めた日・・・』
『あの時、使った、植木鉢の破片・・・』
『植木鉢スコップは・・・』
『僕の魔法によって・・・』
『本当に、丈夫に成ったのか・・・?』
と、いうと微妙だったが、
『抜いた草は、千切れなかった・・・』
『今思えば、草を丈夫にしながら・・・』
『土を分解していたのでは・・・?』
『もし、草を丈夫に、出来るなら・・・』
『ガラスも丈夫に、出来るのでは・・・?』
『それは、つまり亀裂が・・・』
『消えるという事では・・・?』
これは、自分に都合の良い、幼稚な発想である。
しかし、当時の僕は、
本気で、その様に考えていた。
そして、その日から、僕は、
黄色いガラス片を、持ち歩いた。
15日目、結局、亀裂は消えず、
シーグラスが完成した。
『どうにかして、亀裂を消せないのか・・・?』
そして、その時、僕は気付いた。
僕は以前、水無しのラムネを、
分解する事が、出来なかった。
しかし、その後、魔法が成長した事で、
水無しの分解が、可能に成ったのだ。
つまり、初心者は、
「水あり」の方が簡単なのだ。
『つまり、このガラス片も、水に入れれば・・・』
『今よりも、簡単に分解出来る・・・?』
『つまり、亀裂を消す事が出来る・・・?』
僕は、シーグラスに成った、黄色いガラス片を、
ティッシュ包むと、水をかけ、それをラップで包み、
それをテープで、グルグル巻きにして、
それからの10日間、開封せずに、
持ち歩く事にした。
『これがストレス発散なのか・・・?』
『これが趣味なのか・・・?』
『そもそも、魔法を使っては・・・』
『ダメなのでは・・・?』
疑問はあったが、変な趣味である事は、事実である。
現実問題、小学3年生が、
家族にバレない様に、
本当に好きな趣味を、継続する事など、
困難なのだ。
『僕は、家族に監視されている・・・』
『そんな、僕が、趣味として・・・』
『納得出来るモノ・・・』
それを実行する場合、魔法を使う以外に、
選択肢が無かったのだ。
そして、シーグラス作りは、
僕の心を、つかんでいた。
『亀裂は、消えているのか・・・?』
『見たい!!!』
『水ありの効果は、出ているのか・・・?』
毎日、開封したい衝動が、湧いて来る。
『しかし、我慢・・・!』
『見たいのなら・・・』
『一生懸命に生きて、10日後に見ろ!』
僕は、自分に、そう言い聞かせた。
そして、10日後・・・開封した・・・
『え?』
『少し、小さく成った・・・・?』
『亀裂も小さく成った・・・?』
『色が濃い・・?』
これは、失態だった。
『確認が、出来ない・・・』
そこで、僕は、ノートを用意。
ノートの上に、このシーグラスを置いて、
鉛筆で輪郭を写す。
亀裂の長さも計る。
残念ながら、色は記録出来なかった。
再び、そのガラス片を、
ティッシュと、水と、ラップと、
セロハンテープで包み込み・・・
さらに10日間、持ち歩きを継続する。
そして、10日後・・・
開封した。
僕は、ガラス片を、ノートの乗せて、
サイズの変化を確認。
『少し、小さい様な・・・』
『しかし、誤差のレベル・・・』
『小さく成ったと思いたい・・・』
『その願望で、錯覚しているレベル・・・』
しかし、そんな事など、問題では無かった。
亀裂が、消えていたのだ。




