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当時、小学3年生の僕は、
『趣味を作れば、魔法は暴走しない・・・』
その可能性に気付いた。
ここで、重要のは、
結局の所、
『僕にとって、魔法は、趣味・・・』
という、事実であった。
言葉の上では、美化出来るが、
僕の魔法は、遊び道具なのだ。
繰り返しに成るが、
「魔力」など存在しない。
身体の中に、魔法が溜まる事は無い。
つまり、魔法を消費する必要など、
全く無いのだ。
そこで、考えたのが、
新しい趣味を、作る事であった。
例えば、趣味として、ドラムを始めた場合、
ドラムを叩けない、ヒマな時間・・・
自分の「太もも」などを、ドラム代わりに、
そのストレスを、解消する事に成る。
これまで、僕が、魔法を暴走させていたのも、
結局の所、それと同じ事なのだ。
つまり、魔法以外の、趣味を見つけ、
それに夢中に成れば、
魔法が使えないストレスは、軽減され、
魔法の暴走は、起こらない。
それが、僕の考えた理屈であった。
しかし、問題がある。
『趣味を、どうするか・・・?』
『何を、趣味にするのか・・・?』
これは難しい。
マイブームの様に、
数週間で、終わるモノでは、駄目である。
1人で、お城を建ててしまう、変人。
割り箸で、感動的な作品を完成させる、変人。
そんな、
『変人レベルの趣味・・・』
『一生モノの趣味・・・』
それを、探す必要があった。
しかし、
僕が、何かを始めると、家族が心配する。
そして、没収される。
つまり、僕が、趣味を始める為には、
『家族に、バレない、モノであり・・・』
『僕が、心から、引き込まれるモノ・・・』
その必要があった。
『そんなモノ、あるのか・・・?』
残念ながら、これは、先にヒントを考えても、
無駄である。
答えは出ない。
僕が、趣味を持てば、
確実に、家族に止められるのだ。
この事実がある以上、
僕には、一般的な趣味など、
始める事は、出来ないのだ。
『つまり、家族に、気付かれない趣味・・・』
それを、見付ける必要が、あるのだ。
『連想ゲームでは、答えは出ない・・・』
『実在しない趣味・・・』
つまり、
『現段階では、全く興味の無い、何か・・・』
『それでも将来、一生の趣味に成る、何か・・・』
そんな何かを、連想で探す事は、不可能なのだ。
しかし、こんな場合にも、方法はある。
歩けば良いのだ。
何も考えていない場合、
歩いても、気付かない。
しかし、考えている時に、
それを見れば、それがヒントに成る。
僕は以前、5時間かけて、この方法を修得した。
翌日の下校時・・・
僕は寄り道をした。
歩く為である。
目撃されても、目立たない様に、普通に歩く。
この時間、周囲の畑には、誰もいない。
バスも来ない。
買物は、午前中に、済ませる家庭が多い。
昼から行っても、売り切れているからだ。
そんな訳で、誰とも会わずに、山の近くに来た。
10分程度、遠回りに成る距離だ。
ゴミが捨ててある。
不法投棄である。
正式に捨てると2千円かかるので、
人目の無い場所に、捨てに来るのだ。
クーラー、ブラウン管、冷蔵庫、自転車・・・
そんな中、気に成るモノを発見した。
それは、ゴミ袋に入っていた。
『ステンドグラス・・・』
それが、僕の心に引っかかった・・・
『捨てられたばかりだ・・・・』
『何を根拠にそう思うのか・・・?』
『袋が新しいから・・・?』
そんな事を考えながら、
僕は、その袋をぶら下げると、
数十メートル歩き、人目の無い草むらに入った。
そして、ゴミ袋から、中の物を出した。
それは、素人の作ったステンドグラスだった。
葉書サイズの平らな作品が11枚、
そして、もう1つが植木鉢だった。
その大半が、未完成だった。
素人が、趣味で手を出し、
思う様に出来ず、捨てたのだろう。
ビックリする程、下手クソだった。




