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小学1年生、2学期・・・
ラムネ菓子を使った、ガンの治療実験を終え、
神社を後にする。
僕は、振り向かない、
『振り向けない・・・』
おそらく、あの、お婆さんは、
『僕に、手を合わせているだろう・・・』
名前も知らない、お婆さんは、
『僕に「何か」を期待している・・・』
でも、僕には、
それに応える「何か」など無いのだ。
『本当に、何も出来ないのか・・・?』
そんな事を、考えてしまうが、
『こんなモノ、雑念だ・・・!』
僕は、自分に、そう言い聞かせると、
気持ちを切り替えて、考えた。
『実験は、出来た・・・』
『ラムネは、消えた・・・』
しかし、
『ガンを消せる保証は、無い・・・』
『僕は、役に立たないカモ、知れない・・・』
『不安で、たまらない・・・』
家に帰った僕は、気力を失いそうに成った。
『魔法が使えるのに、有効には使えない・・・』
そんな無力感が、あったのだ。
しかし、やるしか無いのだ。
心が苦しい芝居など、している場合では無いのだ。
翌日、僕は、祖父母の家に遊びに行った。
祖母の肩叩きを、する為である。
肩叩きをしながら、ガンを消す事が、狙いであった。
『手術まで2週間、それまでにガンを消す・・・!』
当時の僕にとって、ガンとは、
日に日に大きく成り・・・
そして、人間を殺す病気であった。
しかし、医師は、
そんな病気を、夏休み前から、
2ヶ月間も、放置しているのだ。
それが、僕には、我慢出来なかった。
僕は、医師に言いたかった。
『もし、自分が、ガンで・・・』
『その病気が、身体の中で大きく成っている・・・』
『そんな状況で・・・』
『2ヶ月間も、放置するのか・・・?』
『それに、何の意味がある・・・?』
『その間に死んだら、どうする・・・?』
『先生の、お母さんがガンでも・・・』
『同じ事をするのか・・・?』
父に聞いた話では、2ヶ月放置しても、
大丈夫の様ではあるが、怖いのは事実である。
祖母は、誰にも言わないが、怖いハズである。
『僕だったら泣いている・・・』
死ぬなんて、無茶苦茶怖いのだ。
『だから僕が、ガンを治す・・・!』
僕は、その為に、
祖父母の家に、やって来たのだ。
ところが・・・
僕が、肩叩きを申し出ても、祖母は遠慮した。
断られたのだ。
そこで、祖父の肩を叩き、
僕が、上手である事をアピールする。
しかし・・・
祖母は遠慮する。
『それなら、睡眠薬で眠らせて・・・』
などと幼稚な事を、考えている場合ではない、
実現可能な事を、実行する必要がある。
仕方が無いので、僕は、祖母に話をした。
それは、残酷な方法だった。
祖母は、ガンである。
そして、手術をする。
もしかすると、助からないカモ、知れない。
つまり、もう会えないカモ、知れない。
だから、生きている間に、
僕に出来る、お返しがしたい。
この事を、僕は、小学1年生の言葉で説明した。
涙が出た。
祖母も、泣いていた。
僕は、残酷な事をしたのだ。
僕は、僕の満足の為に、祖母を、傷付けたのだ。
しかし、今後、僕は、毎日、
祖母の、肩叩きをする権利を、得たのだ。
とても、しんみりした雰囲気だったが、
これにより、ガン治療が出来るのだ。
『絶対に助ける!』
僕は決意した。
ところが、現実は・・・
僕には、魔法を出している感覚が無い。
その為、ガンを消している感覚も無い。
毎日が、無意味に思えていた。
毎日が、無力に思えていた。
『本当に、消えるのか・・・?』
『本当に、効果があるのか・・・?』
毎日が、不安だった。
毎日が、苦痛だった。
しかし、ここで止める訳には、行かない・・・
『魔法は、出ている・・・』
それを信じて、僕は、毎日、肩叩きに通った。
そして、1週間が経過した。
翌日から、祖母は
総合病院で、準備入院をする事に、成っていた。
体調不良では、手術が出来ないので、
残りの1週間は病院で、体調管理をするらしい。
しかし、その3日後・・・
祖母は、退院して来た。
『奇跡は起きていた・・・』
祖母のガンは、消えていたのだ。




