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これは魔法の書です。  作者: わおん
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044

小学1年生、2学期・・・



僕の魔法に、希望が生まれていた。



これまで、僕の魔法は、


ある意味、無駄な遊びだった。



逆立ちコマの、逆立ちを阻止して、



『一体、何に成るのか・・・?』



実の所、全くの無意味だったのだ。



しかし、この日、僕は、魔法で、


ガンの治療が、出来る可能性に、気付いた。



『僕は、ガンを溶かせるのか・・・?』


『それなら、僕が・・・』


『婆ちゃんの、ガンを治す!』



次の日から、僕の実験が、スタートした。



僕は、ラムネの空ボトルを、4本用意した。



このラムネは、当時、祖父が箱買いで、


1本あたり55円で買ってくれていた。



僕は、それを毎日1本以上食べていた。



その為、ラムネの空ボトルは、


沢山あったのだ。



学校の帰り道、僕は、神社に向かった。


見付かるのは嫌だが、時間が無かった。



以前、


知らない、お婆さんが涙を流し、


僕に、手を合わせていた場所。



そこを通ったが、その姿は無かった。



『助かった・・・』



ラムネを6粒食べて、ブドウ糖を補給する。



石段を登り、神社に到着。



ランドセルから腕時計を出して、左手首に装着。



ラムネの空ボトルに、水筒の麦茶を入れる。



水でも良いのだが、水筒に水を入れていると、


誰かに見られ、無駄な噂話を、


広められる危険性があった。



だから、今日の分の、麦茶を飲まずに、


持って来たのだ。



では、実験開始である。



まず、ラムネの空ボトルに、


麦茶と、ラムネを1粒入れる。



手に持った状態。


魔法で回転開始。



ボトルの形状は、底面が六角形で、


内壁は、平面と曲面の組み合わせ。



結果、目線を外しても、


回転が振動と成って、手に伝わる。



時計で2分を確認。



『ラムネは、溶けていない・・・』


『ラジコンカーと、同じだ・・・』



ラジコンカーは、目線を外しても、


その音によって、その存在を意識出来る。



結果、目を閉じていても、ラジコンカーを、


走らせる事が、出来たのだ。



つまり、ボトルを手に持った場合、


ラムネは、溶ける魔法では無く、


動く魔法の影響を、受けるのだ。



では次である。



手に持っているボトルを、石の上に置く。


そして、ラムネを回転させる。



すると、ボトルが動いて、倒れてしまった。



仕方無いので、ランドセルと石でボトルを固定。


ボトル内の、ラムネを見る。



すると、せまいボトル内で、ラムネが動き出す。


少し音が聞こえる。


目線を外す。



しかし、音が認識出来るので、結局、溶けなかった。



そこで、今後は、ランドセルのポケットに、


ボトルをはさみ、上から見て、


ラムネが動いている事を確認。



指で耳を閉じ、それでもラムネが、


回っている事を確認。



しかし、そこで気付いた。



『溶かす事が目的なら、回す必要は無い・・・』



実験をやり直す。



まず、


麦茶と、ラムネ1粒の入ったボトルを、手に持つ。



『僕は、今、ボトルを手に持っている・・・』


『ラムネは回っていない・・・』



それを確認すると、ボトルから目線を外す。


時計で30秒計り、視線を戻す。



すると、ラムネが半分ほど溶けいた。



そこで、新しいボトルを用意。



麦茶と、ラムネを1粒入れ、


今度は、石の上に置く。



『ボトルを、石の上に置いた・・・』


『ラムネが回って、いない・・・』



それを確認して、目線を外し2分後・・・



『溶けていない・・・』



そこで、今度は、


目を閉じて、120秒数えた後・・・



『溶けていない・・・』



そこで、今度は、


目線を外し、ボトルに手をかざし、



『溶かすイメージ・・・』



時計で2分計る。



すると、



『ラムネが溶けている・・・』


『これだ・・・!』



では、次である。



麦茶入りの、ボトルに、


昨日、僕が割ったコップの、ガラス片を、入れる。



今朝、台所の棚の下から、


ガラス片を取り出し、持って来たのだ。



ガラス片入りの、ボトルを手に持って、


回っていない事を確認。



目線を外し、時計で2分計る。



『ガラスは、溶けない・・・』



残念ながら、ガラスは、溶けない様である。



『では・・・』



『ガンは、溶けるのか、溶けないのか・・・?』


『ガンは、ラムネとガラス・・・どっちだ・・・?』



『ラムネは、食べ物・・・』


『ガンは、肉・・・?』


『つまり、ガンは、食べ物に近い・・・?』



などと、幼稚な理屈で考えながら、


僕は、帰宅する為、ボトルと水筒の、麦茶を飲み干し、


それらを、片付けると、石段を下って行く。



すると、お婆さんがいた。



『あの、お婆さんだ・・・』



以前、涙を流しながら、


僕に手を合わせていた・・・



『あの、お婆さんだ・・・』



僕が挨拶をすると、お婆さんは話しかけて来た。



お婆さんは、ヒザが悪くて、


この石段を、登れないそうである。



だから、毎日、この石段の下から、


神社を拝んでいるそうである。



僕は、何か力に、成りたかった。


しかし、何も出来なかった。



お婆さんが、なぜ拝みに来るのかも、


聞けなかった。



知るのが恐かった。


僕には、何も出来ないのだ。



神様なんて居ないから、時間の無駄ですよ・・・



などと、言える訳が無かった。



だから、僕は、頭を下げると、そのまま帰った。



僕は無力だった。


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