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当時、ツバサは27歳、
就職歴の無い、外出恐怖症、
この先、どうやって生きて行く、
ツバサは、悩んだ・・・
家族は、出来る限りの協力を約束した。
そんな時期、世間では、
デイトレードという言葉が、
知られる様に成っていた。
株の取引で、利益を出す。
これまでは、株は購入後、
財産として、保有する人が多かった。
ところが、ネットの普及によって、
一般個人が、パソコンを使い、
取引が出来る環境・・・
それが実現したのだ。
結果、株価が、
一瞬、値下がりした瞬間に買い・・・
一瞬、値上がりした瞬間に売る・・・
その様な事が、可能に成り、
1日で、数百万円稼ぐ青年が、
テレビで紹介されていた。
それを見た、ツバサは、
母に、経済雑誌を買って来てもらった。
そして、それを熟読・・・
しかし、それによって、
ツバサは、株取引を断念した。
その理由は、雑誌の記事であった。
「普通の主婦の私が、株で1億円稼いだ方法・・・」
その記事を見た瞬間、
「これは無理だ・・・」
ツバサは、その様に理解した。
株式会社で、1番「えらい」のは、
その会社の株を、1番多く持っている人である。
つまり、その人物が会長である。
そして、その次に社長、
そして、重役・・・
そして、この人達は、株を売らない。
もし売った場合、
会社を乗っ取られるのだ。
その為、株券の多くは、
身内が保有している。
そして、残りの多くは、
株で稼ぐ会社が、保有している。
結果、一般人が売り買い出来る株など、
「ほんの少し」なのだ。
そして、1億円稼いだ主婦は、
「ほんの少し」
その環境で、1億円稼げだのだ。
しかし、その方法を雑誌で紹介した。
つまり、今まで、
10人で「お買物ゴッコ」をしていた環境に、
1000人が参加するのだ。
つまり、今まで通りには出来ない・・・
つまり、雑誌に掲載されている方法では、
通用しない・・・
では、どうするか・・・?
などと、雑誌を読んでいると、
FXの記事があった。
FXとは外貨取引である。
ニュースなどで、
円が買われ、ドルが売られた・・・
その様な話を聞くが、
それを個人で行うのが、
FXである。
外貨取引とは、元々、貿易の為に必要だった。
アメリカの企業が、日本の製品を買いたい。
その場合、日本円で支払う必要がある。
しかし、その金額は、10億円・・・
では、どの様にして、
10億円を用意するのか・・・?
というと、
ドルを円に両替して、もらうのだ。
ところが、誰が両替をしてくれるのか・・・?
両替する側に、
どの様なメリットがあるのか・・・?
これまでは、銀行が、手数料を受け取る事で、
両替に応じていた。
そして、その場合、ライバル銀行が存在する。
「手数料を安くします・・・」
その様に申し出る銀行が現れる。
結果、銀行間で、手数料の値引き合戦が始まる。
しかし、困った問題も起きる。
戦争が起こりそうな国・・・
戦争が始まれば、
その国のお金の価値は激減する。
誰も、その国で買物などしない・・・
だから「その国」のお金を、
必要とする外国企業など、存在しない。
ところが「その国」は、外国から、
食料や燃料を買う必要がある。
つまり、外国のお金が必要に成る。
結果、多くの手数料を払い、
外国のお金と両替してもらう事に成る。
滅茶苦茶、損をするが、
両替が必要なのだから仕方が無いのだ。
つまり、国が存続する為には、
外国のお金に、両替する必要があるのだ。
それが、外貨取引であり、
以前は、銀行など、一部の機関でしか、
その取引が出来なかった。
ところが、その取引が、一般に開放された。
それがFXである。
相手は、損であっても両替を求めて来る・・・
そこに一般人が群がる。
現在、その国の、お金を手に入れる事は、
損であっても、
その国が滅びる訳では無い。
つまり、将来的には、復活するのだ。
つまり、今、安く買って、持っていれば、
その国のお金の価値が上がるのだ。
しかし、FX参加者の多くは、
この取引を、数分刻みで行う。
その国が、危険な状況に変りは無い、
しかし、その危険な国のお金を、
奪い合うのだ。
将来、確実に値上がりするのだから、
買いたい。
その様に思って、買う。
すると、次の瞬間、
値上がりするのだ。
なぜなら、
同じ事を考える人が大勢いるので、
その危険の国の、お金が、欲しいのだ。
欲しい人が増える・・・
結果、その国の、お金の価値が上がるのだ。
結果、買った瞬間に値上がりする。
売れば、利益が得られる。
その様な状況が、生まれる事がある。
この方法を使えば、
数分で利益が出る。
ところが、毎回、上手く行く訳では無い。
その先、何が起きるか、不明の為、
リスクが高過ぎるのだ。
もちろん、その様な現象が、
毎日、起きる訳でも無い。
では、FX参加者は、
どこの国のお金を取引するのか・・・?
日本である。
日本という国は、
安定しているのだ。
その為、総理大臣が何度変わっても、
日本は変らない。
この様な国は珍しい。
例えば、アメリカは、
大統領が変る事で、
国の政策が、毎回激変する。
アメリカは超大国である。
そして、大統領には、
大きな権力がある。
その為、大統領が一言発言すると、
世界が、その影響を受ける。
つまり、
アメリカは、大統領の影響力によって、
毎回、他国の戦争に、関わってしまうのだ。
つまり、アメリカは、超大国ではあるが、
その価値は、安定しないのだ。
その為、投資家の多くは、
安全策として、日本円を買う。
結果、日本円の価値が上がるのだ。




