039
小学1年生、2学期・・・
過剰な勉強と、全力疾走を繰り返せば、
その必要に応じて、魔法が発動する。
結果、僕は、魔法を使った達成感が、得られる。
その結果、ストレスが発散され、
魔法の暴走は、起こらない。
これは、事実である。
しかし、解決方法を、知っていても、
それが、実践出来ない・・・
『出来る訳が無い・・・』
今でも、泣きながら勉強する姉、
勉強で、僕に負けている事が、悔しいのだ。
洋裁を覚え、僕の服だって作れるのだ。
そして、姉は、充分に、勉強が出来るのだ。
姉は、凄い人なのだ。
過剰に、勉強する必要など無いのだ。
姉には、何の落ち度も無いのだ。
『僕が、異常なのだ・・・』
『僕に、問題があるのだ・・・』
しかし、その為に、姉は、今日も、
僕の、お古の参考書で、勉強をしている。
『心が苦しい・・・』
だから、僕は、過剰な勉強をして、
その脳の疲れを、魔法で回復させる事など、
出来ないのだ。
『もう、勉強をする訳には、行かない・・・』
『では、走れるのか・・・?』
『それも、出来ない・・・』
下校中、毎日「お婆さん」が僕を見ている。
僕は、その人が、誰なのかも知らない。
その人は、祖母の知り合いでも無い。
本当に、知らない「お婆さん」なのだ。
しかし、その「お婆さん」は、
毎日、涙を流しながら、僕に手を合わせている。
『一体、何を祈っているのか・・・?』
そんな人の気持ちなど、僕は背負えない。
『耐えられない・・・』
だから、僕は、全力疾走をして、
自分の背中を、魔法で押す事など、出来ない。
神社に、行く事も、出来ないのだ。
『僕が・・・』
『勉強する事は、許されない・・・』
『走る事も、許されない・・・』
『僕が、必死に成れば・・・』
『誰かが、傷付く・・・』
『僕には、耐えられない・・・』
『しかし、これでは、魔法が使えない・・・』
『どうすれば、良いのか・・・』
そこで、考えたのが、
魔法で、身体を動かす練習だった。
当時、小学1年生、僕の幼稚は、健在だった。
まずは、水を沢山飲む。
そして『もう一生動かない!』と心に誓う。
もちろん、そんな事は、不可能なのだが、
それでも、その後の尿意を、我慢する。
『トイレに行きたい・・・』
『しかし、行かない・・・』
『我慢・・・我慢・・・我慢・・・』
本来であれば、座っている事が出来ない。
それ程、トイレに行きたい。
しかし、我慢する。
僕は、考えたのだ。
これは、僕のピンチである。
結果、この状況から、僕を助ける為に、
僕の魔法が、勝手に発動して、
『僕の身体を動かし、トイレに行ってくれる・・・』
『つまり、僕が納得行くレベルの・・・』
『魔法が使える・・・』
僕は、そう信じていた。
しかし、現実は、違った様だ。
僕は、オシッコを漏らして、母に怒られた。
そんな中、僕は考えた。
『なぜ、魔法が、発動しない・・・?』
『なぜ、僕を押して、トイレに向かわない・・・?』
神社に行く時は、魔法が勝手に、僕の背中を押す。
『それなのに、なぜ・・・』
『トイレ行きたい時には、魔法が出ない・・・?』
そして気付く。
『神社の時は、走るから押す・・・』
『トイレの時は、走らないから、押さない・・・』
『走らないと、押さない・・・?』
しかし、現実問題、
尿意を我慢して、家の中を走り回る事など、
不可能である。
必ず注意される。
結局、僕は、
『家の中でも・・・』
『近所でも、走れない・・・』
そして、その時、僕は、気付いた。
『あれっ・・・?』
『近所では、走れない・・・?』
『つまり、家の遠くなら、走れる・・・?』




