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これは魔法の書です。  作者: わおん
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昼食後、タロに肉を与えに行き、


母と祖母は、次の牛を散歩に連れて行った。



恐竜ゴンも、母の後に着いて行く。



ほのぼのとした光景である。



しかし、僕は、絶えず悩んでいる。



元々、父や母の村は、


1日2食だったのだが、


僕が、何の知識も無く、


1日3食を、導入してしまったのだ。



『1日、朝晩の2食に戻すべきか・・・?』



その日の天候によっては、


1日1食の日も、あったらしい。



それで生きられるのだ。



植物の根っ子を食べる程度で、


生きていたのだ。



川魚など、全員には配れない。


そんな環境だったのだ。



そんな原始人に、焼肉を教え、


1日3食にさせた・・・



『大丈夫なのか・・・?』



などと、不安に思うが、


我々には、回復魔法がある。



しかも、子孫を残せる訳では無い。


父と母の子供世代で滅びるのだ・・・



僕は、牛に近づかない様に、注意しながら、


そんな事を考えてたい。



その時、母が、ゴンに向けて、


ハンドサインを行った。



通常、飼い主が、指をさしても、


ペットは、その方向を見ないで、


飼い主の手を見る。



しかし、先日、母は、


恐竜ゴンに、ハンドサインを教えた。



そして、ゴンには、


それを理解する知能があった。



その為、母が指をさすと、


ゴンは、そちらを向き、



そして、母の掛け声を聞いた瞬間、


走り出した。



そして、母の指示で、戻ってくる。



本来、ペットの調教は、


その段階で1度、


ご褒美の「おやつ」を与える。



つまり、ペットは「おやつ」目当てで、


芸をするのだ。



しかし、恐竜ゴンは、


「おやつ」などもらわない。



その様なルールが存在する事を、


母もゴンも知らないのだ。



つまり、人間と同じである。



母が、喜ぶから、それをする・・・


それが家族である。



恐竜ゴンは、家族の一員に成っていた。



そして、その日の夜も、


僕は悩んでいた。



生きる事に、何も困らない・・・


平凡な毎日・・・



とても、幸せな事である。



しかし、それでは、生きる上で、


退屈なのだ。



今は、釣りに夢中に成る事で、


そのストレスから解放されているが、


それは、遊びなのだ。



僕が、用意して、3人が遊ぶ・・・



そう考えた場合、


牛の飼育も、遊びなのだ。



その様な事をしなくても、


僕が、牛の大地で狩ってくれば、


それを食べて、生きて行けるのだ。



育てる必要など無いのだ。



つまり、牛の飼育も、


娯楽なのだ・・・


趣味なのだ・・・


遊びなのだ・・・


本当は、必要無いのだ。



では、娯楽では無い・・・


『何か・・・』



それは、どの様にすれば、


作り出せるのか・・・?



答えは、簡単である。



人を増やせば良いのだ。



大勢の人が、存在して、


その人々が趣味を持つ・・・



その趣味の為の道具を作る・・・


その為の職人が必要に成る・・・



生きる上では、その様なモノなど、


全く役に立たない。



しかし、釣り遊びをする為には、


釣具が必要である。



サイクリングをしたい人が、


自分で自転車を、作れる訳では無い。



その為、自転車を作る人が必要に成る。



本当は、不要であっても、


高性能が欲しく成る。



その様な客の要望に答え、技術が進歩する。



レースが行われ、


それを見る事が、楽しみな人も現れる。



生きる上では、不要なモノ、


それを欲しがる人、


それに応える人、


多くの人は、そこに生きる意味を見つけ、


世界は成立しているのだ。



しかし、3人と2匹と、神・・・



そんな世界では、


その様な環境は、成立しない。



僕が存在する事で、


人間の努力など無意味に成り、


その存在価値が失われるのだ。



と、今までは、


その様に思っていた。



しかし、


僕には、リールが、作れない・・・


自転車を作る事も、出来ない・・・



しかし、人間を育てれば、


それを、作り出す者が、必ず現れる。



『これで、良いのでは・・・?』



つまり、医療の全ては、僕が引き受ける。



農作物も、僕が育てる。



これによって、人は、


生きる上で必要な、


健康と食事は保障される。



その代わりに、


人々には、趣味を提案してもらう。



そして、それに応える職人を募集する。



全人類が趣味を持ち、


全人類が、趣味に応える職人に成る・・・



『これなら、僕の存在が知られても・・・』


『問題無いのでは・・・?』



と、毎回の様に、


ただの思い付きを、名案の様に錯覚してしまう。



しかし、冷静に考えれば、


これが、机上の空論である事が解る。



僕が、農作物を守る場合、


それは、気象環境に悪影響を与える。



この星の環境を考えた場合、


台風も必要なのだ。



もし、火山が噴火した場合、


どうする・・・?


一体、何が起きるのか・・・?



僕の無意識は、どの様に対応する・・・?


それが、その後、どの様な後悔を生む・・・?



それを知る為には、


1度経験する必要がある。



しかし、経験してからでは、遅いのだ。



この星が、崩壊してからでは、


手遅れなのだ。



つまり、


僕が、農業に手を出す事も、


出来ないのだ。



最初は、非常に恵まれた天候が作れても、


数年後、その反動で何が起きるのか?



魔法で食い止める事が出来るのか?



そんな事は、その時まで解らないのだ。



リスクが高過ぎるのだ。



では、僕は、この星で、


医療専門の神に成れば良いのか・・・?



と思うが、


そんな決まりを、守れる訳が無いのだ。



僕が、この星の神と成り、


人が困っている。



それを無視する事など、


出来ないのだ。



例えば、


突然、氷河期が来た場合・・・



現実的に考えると、


これによって、


人類の大多数は死滅する・・・



場合によっては、


全ての動物が絶滅する。



それが、この星の性質・・・


それが、この世界の自然・・・



しかし、その場面で、


僕は、それを受け入れる事は出来ない。



僕は、人類を守ってしまう。



『しかし、何が出来る・・・?』



極寒の台風を除去する事で、


氷河期を回避出来ても。



その後、魚や牛が死に始めた場合、


『どう対応する・・・?』


結局、僕には、解らない。



氷河期を阻止する為に、


極寒の台風を除去したとして・・・



その後、


子供が、生まれない場合・・・


台風との因果関係が解らない場合・・・


どうする・・・?



それでも、次の、


極寒台風を阻止しても良いのか・・・?



『僕には、判断出来ない・・・』


『そんな責任は負えない・・・』



結局、僕は、自分の存在を秘密にする事が、


最善の方法に思えた。


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