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これは魔法の書です。  作者: わおん
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382

マモルは、


なぜ、魔法帽を作ったのか・・・?


なぜ、作れたのか・・・?


それには、奇妙な偶然が関係していた。



半年前、マモルは、突然、


「たっつけ袴」を作りたく成った。



自分でも、その理由が解らない、


そんなモノ、全く必要無いのだ。



それなのに、作りたくて我慢出来ない・・・



それは、マモル本人でさえ、


違和感を覚える衝動だった。



そもそも、作れる訳が無いのだ。



ところが、彼は、手芸屋に行って、


生地を購入して来た。



そして、針と糸で、たっつけ袴を作り始めた。



つまり、手縫いである。


もちろん、経験など無い、


全くの素人である。



完成するとは思えない・・・



「意味はあるのか・・・?」



マモルは自分に質問した。



「作れるのか・・・?」


「完成するのか・・・?」



マモルには、真っ直ぐに縫う、


その様な技術も無かったのだ。



「無理かも知れない・・・」



マモルは、そう思った・・・



しかし、そう思った時だった・・・


突然、ミシンが手に入ったのだ。



「なぜ・・・?」



現在、マモルは、一戸建てに、


父と母との3人暮らしである。



マモルは、現在19歳、


彼が生まれる1年前に、


この家は完成した。



そして、その時、


新築祝いとして、


母は、叔母に、


ミシンをプレゼントされたのだ。



しかし、マモルの母は、


ミシンの使い方など知らなかった。



叔母の理屈では、


今後、子供が生まれる・・・


その子の為に、色々必要に成る・・・


それをミシンで作れば良い・・・



その様な考えだった様であるが、


マモルの母は、ミシンに全く興味が無く、


新築によって、新天地に引っ越して来た事もあり、



周囲に知人もおらず、


使い方を聞く相手もおらず・・・



結果、プレゼントのミシンは、


そのままクローゼットの中で20年間、


放置されていたのだ。



その為、マモルは、


ミシンの存在を知ら無かった。



そして、父と母は、


マモルが、たっつけ袴を作っている事など、


知ら無かった。



生地を買って来た事され、知らないのだ。



ところが、マモルが、


手縫いに苦戦している最中・・・



何を思ったのか、


母が、ミシンを出して来て、


「邪魔だから捨てる・・・」


その様に言ったのだ。



そこで、マモルは、


それを、もらう事にした。



「天の助け・・・?」



その様に思える瞬間だった。



しかし、母は、心配した。



母は、ミシンの使い方を知らないのだ。



その為、このミシンは使えない・・・


その事を、マモルに説明した。



当然、マモルも使えない・・・



しかし、そのミシンが、


20年眠っていた事で、


時代は変っていた。



動画サイトの存在である。



結果、様々な動画を見る事で、


マモルは、ミシンの使い方を理解した。



旧式であっても、基本操作は同じなのだ。



こうしてマモルは、たっつけ袴を作り始めた。



とは言っても、


たっつけ袴の作り方など、解らない・・・


その様な動画も存在しない・・・



ところが、


マモルの母は、元剣道部員だった。



その為、家にはまだ、


剣道着が残っていた。



つまり、袴があるのだ。



それを見れば、


袴の構造が解るのだ。



そんな袴が、先ほど、


ミシンと一緒に出て来たのだ。



「偶然なのか・・・?」



これまで、ネットで見つけた画像だけが、


参考だったが、本物の袴が手に入ったのだ。



それによって、


マモルは、初めて、袴の構造を理解した。



「生地が足りない・・・」


「思っていたのと違う・・・」



その後、マモルは、生地を買い足す為に、


手芸屋に走った。



そして、ミシンをもらった翌日に、


たっつけ袴の1作目を完成させたのだ。



とは言っても、


当時、スネの部分の作り方が解らなかった。



その為、結果的、くくり袴を作った。



そして、そちらの方が、


実用的である事に気付いた。



その後、毎日の様に、調べ、作り、考え、


ネットオークションで、布を買い、



それを、使い、くくり袴を作り続けた。



そして、そのクオリティーを上げる為、


着物を作る事にした。



くくり袴だけでは、見栄えが悪いのだ。



そこで、剣道着の上を、調べ、


ネットで、作務衣やハッピの作り方を調べ、



大河ドラマを見て、研究して、


その試行錯誤で、着物を完成させた。



着物と言っても、


それは、剣道着や野良着・・・



つまり、昔のお百姓さんが、


着ていたモノに似ている。



その為、着物の長さは、尻が隠れる程度、


通称・半着である。



それ以上長いと、


袴の中で邪魔に成るのだ。



しかし、謎であった・・・



なぜ自分は、


こんなモノを作っているのか・・・?



マモルには、解らないのだ。



マモルは、元々、動画サイトで、


プラモデルの製作動画を見るのが、


好きだった。



なぜ、これ程の人物が無名なのか・・・?


なぜ、テレビで紹介されないのか・・・?



そんな不思議を感じながら、


名人の製作工程を見ていた。



ところが、マモルは、自分では、作らない。



見る事は、好きだが、


作りたいとは思わないのだ。



そんなモノを作っても、


何の役にも立たないのだ。



マモルは、それを理解していた。


だから、プラモデルを作らなかった。



ところが・・・


「では、なぜ、自分は、袴を作るのか・・・?」



そして、不安を感じた。



「自分は、何かに、誘導されているのか・・・?」



マモルは、その様な気持ちに、成る事があった。



しかし、冷静に考えれば、


その様な訳など無いのだ。



例えば、熱狂的な野球ファンが、


全員、野球経験者なのか・・・?


というと、そうでは無い。



自分は、やらない・・・


しかし、興味はある。



難しい戦略には、興味は無い。



しかし、応援しているチームが勝ったら、


うれしい・・・



実の所、その程度の人が、大半と考えられる。



つまり、自分の、プラモデル製作動画好きも、


それと同じ事なのだ。



世界的な登山家は、


「なぜ自分が登山をするのか・・・?」


理解出来ない人が多い、



「なぜ、死ぬ様なリスクを犯すのか・・・?」



凍傷で指を失う人もいる。



「なぜ、そこまでして、山に登るのか・・・?」



登山家の多くは、理解出来ないが、登ってしまう。



おそらく、自分の、袴作りも、


それと同じ事なのだ・・・



何かが存在して、


誘導している・・・



「そんな訳は無い・・・」



そう思う、


そう思いたい・・・



それが、マモルの気持ちだった。



ところが、不自然な偶然が次々と起こる。



ある日、リュックサックが必要に成ったのだ。



トイレットペーパー12本入り、


それを3パック入れるリュックサック・・・



それが必要に成った。



マモルの家には車が無い。



その為、買物は、自転車で行く。



ところが、マモルの自転車には、


前カゴも、荷台も無い。



先日まで、マモルは、ママチャリに乗っていた。



その為、大型リュックなど、必要無かったのだ。



しかし、ある日の事、マモルは、


BMXと呼ばれる自転車に、


乗り換える事になったのだ。



それは、定価が8万円するモノで、


技術のある人が乗れば、


ジャンプや宙返りも出来る。



ところが、マモルは、そんなモノに興味は無い。



そんなマモルが、


なぜ、BMXを買ったのか・・・?



それには、理由があった。



19歳、フリーターであるマモルが、


平日の昼間、ママチャリに乗っていると、


自転車泥棒と、間違えられるのだ。



それも日常的に、何度も・・・



もちろん、泥棒では無い。


間違いなく、マモルの自転車である。



しかし、警官に止められる。



そして、警察に止められ、


質問を受ける姿・・・



通行人が見れば、


その光景は、自転車泥棒と警官に見えるのだ。



そして、その日も、


バイトの帰りに、警官に止められた。



マモルは、もう、うんざりだった・・・



その時である。


大きな音がした。



その場所は、自転車屋の前であり、


そこに陳列されてたBMXが、


壁から落ちたのだ。



そして、店員がケガをした。



その為、


警官2名と、マモルと、マモルの自転車は、


その自転車屋の駐車場に移動、


店員は、鼻血を出していた。



そして、その血は、BMXにかかっていた。



そして、BMXのフレームには、


傷が着いていた。



その時であった。


マモルは、警官に聞いたのだ。



このBMXなら、


盗難車と誤解されないのでは・・・?



その質問に、警官は、笑った。



このBMXは、黒いフレームだったが、


パーツが、メタリック・オレンジだった。



そして、マモルは、


オレンジ色のニット帽をかぶっていた。



このニット帽は、


先日、母が捨てると言った新品を、


もらったモノである。



そして、


そのオレンジ色のニット帽をかぶった人物が、


オレンジ色の、パーツの自転車に乗っていた場合、



それは、誰が見ても、


その人に自転車と認識される。



つまり、自転車泥棒と間違われる事が無い・・・



それがマモルの理屈であり、


警官も、それを理解したのだ。



その瞬間、マモルは、何も考えずに、


「じゃあ、この自転車買います・・・」


と言ってしまった。



通常では、考えられない。



1ヶ月に3回も職務質問を受けたストレス。



自転車の落下・・・


店員がケガ・・・


非常事態特有の、高揚感・・・



その勢いで、買うと言ってしまったのだ。



定価は8万円・・・



しかし、その後、以外な展開に成る。



ママチャリが、マモルのモノと証明され、


警官が帰った後、



マモルは、自転車屋に残り、


購入に関して説明を受けていた。



このBMXは、元々、イベントの展示用だった。



その後、この自転車屋が、


安値で引き取ったのだ。



そして、今回の転落で、フレームに傷が入った。



おまけに、ペグが無い・・・


「ペグとは何か・・・?」



自転車のタイヤは、ボルトで固定されている。



このBMXの場合、その部分に、


長さ10センチ、


太さ3センチ程度の、


パイプを固定するらしい・・・



そして、BMXでジャンプして、


階段の手すりに、そのペグで着地する・・・


そして、滑り下りる・・・



「一体、何を言っているのか・・・?」



マモルには、解らなかった。



すると、店員は、DVDを見せてくれた。



それは、衝撃映像だった。


「なるほど・・・」


「曲芸用の部品か・・・」



マモルには、全く不要な部品であった。



つまり、そんなモノが無くても、


全く困らないのだ。



むしろ、それが邪魔に成る為、


取り外す人も、居るらしい・・・



では、価格は、いくらに成るのか・・・?


と思ったら、店員の説明は続いた。



展示用と、販売用では、


ブレーキに変更があったらしい・・・



販売用は、ジャイロブレーキと言って、


ハンドルを360度回転させても、


ブレーキワイヤーが・・・



などと、説明を続けるが、



要するに、このBMXには、


一般的なブレーキが装備されていて、


使用には、全く問題が無いらしい。



ところが、問題は、シートであった。



BMXのシートとは、


座る為のモノでは無い・・・



ジャンプする時に、


ヒザで、はさむ為のモノ・・・



結果、そのシートは、悪ふざけの様に、低く、


それ以上は上がらない。



その上、シート先端が、上を向いている・・・


これでは、使えない・・・



ところが、そのシートにも、


転落時に傷が入っていた。



結果、定価8万円のBMXが、


今回は、特別に、3万2千円・・・



しかし、ママチャリと比べれば、高い・・・



おまけに、シートの問題がある。



とこが、店員が続けた。



店のジャンクパーツを、


無料で差し上げます・・・



結果、普通に買えば、


それ成りに高価なシートポスト・・・



つまり、シートを固定するパイプと、


比較的状態の良いシート、


それを取り付けてくれた。



これによって、BMXは、


街乗り用の小型自転車として、


使える様に成ったのだ。



結果、その流れでマモルは、


3万2千円を支払った。



その日、偶然、持っていたのだ。



マモルは、3ヶ月に1度銀行に行って、


3万円下ろして、


それを3ヶ月分の、小遣いにしているのだ。



だから、その日は、偶然、代金が払えたのだ。



そして、その後、マモルは、


ママチャリを、下取りしてもらった。



もう、警察に止められるのは、


ウンザリだったのだ。



結果、5千円が返ってきた。



つまり、マモルは、8万円の自転車を、


2万7千円で買えたのだ。



ある意味、ラッキーであった。


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