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マモルは、19歳である。
その為、強い固定概念が存在する。
結果、マモルは、宇宙人など信じていない。
しかし、この防御魔法に関しては、
素直に受け入れる事が出来た。
だからこそ悩む。
なぜ、魔法帽をかぶると、
防御魔法が使えるのか・・・?
自分以外の人間でも、
その効果はあるのか・・・?
父や母に、かぶってもらい、
10円玉を落としてもらえば、
解る事である。
しかし、そんな事は、たのめない・・・
マモルの父や母は、
彼が手芸をしている事を知っている。
袴を作っていた事も、
リュックを作った事も知っている。
魔法帽を作っている事も、
もしかすると、知っているかも知れない。
しかし、両親は、マモルの性格を考え、
あえて、手芸の話はしない。
マモルは、以前、袴の洗濯実験を行う為に、
洗濯機を使った。
その時、洗濯機を無断で使う事は出来ないので、
マモルは、袴を作っている事を、母に知らせ、
そして、洗濯機を使う事を伝えた。
そして、その時、両親は、マモルをほめた。
親としては、当然の事である。
ミシンを手に入れて2日目で、
袴を作ったのだ。
驚きであった。
しかし、ほめられても、
マモルは喜ばない・・・
両親は、その事を、知っていた。
だから、その後は、
手芸の話は、しなく成った。
だから、その後、マモルが、
リュックを自作して使っていても、
その事に関して、何も言わない・・・
両親は、マモルを気づかっているのだ。
それなのに、自分から、
魔法帽をかぶってくれ・・・
足に10円玉を落としてくれ・・・
そんな意味不明で失礼な事を、
両親に、たのめる訳など無いのだ。
その結果、マモルは、悩む事に成った。
では、この魔法帽は、
自分以外にも、
使えるのか・・・?
使えないのか・・・?
どの様にして確認すれば良いのか・・・?
この確認は、大変重要である。
もし、携帯用魔法帽が、完成して、
それを持ち歩いた場合、
紛失の危険性があるのだ。
スマホは、大切である。
紛失したら、大問題である。
しかし、毎日、多くの人が、
スマホを紛失している。
その事実を考えた場合、
携帯用の魔法帽も、
紛失する危険性があるのだ。
そんな訳が無い・・・
そう思っていても、
盗まれる可能性・・・
誰かが、勝手に、かぶる可能性・・・
そして、その時、
魔法が発動する可能性・・・
絶対に無いとは、言い切れないのだ。
拾った帽子を、かぶる様な人間・・・
人のモノを、盗む様な人間・・・
その様な、人間が、
防御魔法を手に入れた場合、
その人間は、考え無しに、
行動する危険性がある。
つまり、他人の迷惑など考えず、
その後の事など考えず、
車道に飛び出す・・・?
本人は、無事かも知れない・・・
しかし、
その直撃を受けた人は?
クッションの効果で、
激突の衝撃が無くても、
人は、とっさにハンドルを切る。
結果、歩道の人を跳ねてしまう。
その様な危険性を考えた場合、
魔法帽など、持ち歩けないのだ。
しかし、
本当に、自分以外の人間でも、
「防御魔法が発動するのだろうか・・・?」
先ほど「めまい」を経験した事で、
マモルは、この能力を得たのだ。
その時、魔法帽をかぶっていた・・・
結果、防御魔法を発動させる条件として、
この自作の魔法帽が、必要と成った・・・
つまり、
マモル以外が「この魔法帽」をかぶっても、
防御魔法は発動しない・・・
その様に考えられる。
しかし、その保障は無い・・・
だから、とても気に成る・・・
マモルは一人っ子である。
その為、兄弟を使った実験など出来ない。
そこで、マモルは、考えた。
「この魔法帽」とは、
100円ショップで売られている「デニムはぎれ」
それを3枚使い、完成させたモノである。
1作目から5作目まで、
全てが、それで作られているのだ。
「では、1枚で作ったら・・・?」
「小型を作ったら・・・?」
コピー用紙で作った魔法帽では、
防御魔法は発動しなかった。
しかし、正式な材料・・・
つまり、100円ショップのデニム・・・
「それを使って、小型を作ったら・・・?」
「それでも防御魔法は発動するのか・・・?」
ポケットに入るサイズ、
キーホルダーサイズ、
そんな小さなモノでも、
「魔法帽として、認められるのか・・・?」
もし、それが、本当に機能するなら、
それを持って、猫カフェに行って・・・
猫にかぶせ・・・
その猫に、
カリカリのエサを1粒投げつける・・・
これにより、
防御魔法の発動が確認出来る・・・
しかし、
「出来ない・・・」
自分の安全確認の為に・・・
猫にカリカリを投げつける・・・
マモルには、そんな事は出来ないのだ。
しかし、
「猫に帽子を、かぶせ・・・」
「それが、落ちなかったら・・・?」
「これだ・・・!」
「これで確認出来る・・・!」
こうして、マモルは、
5作目を作った時の、あまった生地で、
小型の6作目を作り始めた。
本来、魔法帽を作る為には、
3時間程、かかるのだが、
小型である為、
製図や切り出しが、簡単であり、
1時間程度で、完成した。
「では・・・」
と言って、キーホルダーサイズの、魔法帽を、
頭に乗せようとした、その時・・・
マモルは、自分が5作目を、
かぶったままであった事に気付いた・・・
マモルは、その事で、一瞬、喜んだ。
帽子をかぶっているのに、気付かない・・・
それは、帽子にとって、素晴らしい事である。
帽子とは、
小さいと痛い・・・
大きいとズレる・・・
結果、帽子の存在を意識してしまう。
ところが、今回、
5作目の魔法帽をかぶっていても、
その事を忘れていたのだ。
ストレスを感じない帽子・・・
それは、最高の帽子である。
しかし、
この帽子は、魔法の力で固定されているのだ。
自分の製作技術とは関係無い・・・
その事に気付き、
マモルは、少し、残念に思った。
その後、マモルは、大切そうに、
5作目を脱ぐと、
頭の上に、今、完成したばかりの、
6作目を乗せた。
直径8センチ・・・
これ以上、小さくすると、
生地の性質上、
不自然な形状に成ると判断して、
このサイズにした。
「残念・・・」
乗せた瞬間に、
それが無意味である事が解った。
乗っているだけ・・・
魔法で固定されていない・・・
つまり、防御魔法は発動しないのだ。
試しに10円玉を足に落としたが、
「痛い・・・」
思った通り、クッションは発動せず、
足の爪に直撃した。
つまり、この小型魔法帽は、
動物実験には、使えないのだ。
では、5作目までの魔法帽は、
自分の時だけ、魔法が発動するのか・・・?
それとも、誰がかぶっても、発動するのか・・・?
「どうやって、確かめる・・・?」
現在、魔法が発動する魔法帽は、5つある・・・
それが、他人にも有効な場合・・・
「その他人が、何をするか・・・?」
それを、考えた場合、
魔法帽を持ち歩く事は、危険であった。
だから、マモルは、
魔法帽を持ち歩く事を、あきらめた。
防御魔法があるのに、
それを持ち歩かない・・・
その不安は、大きい・・・
しかし、持ち歩いた場合、
事件が発生する危険性があるのだ。
それなら、防御魔法など、使わない・・・
それが、マモルの判断だった。
ところが、マモルには、
まだ心配事があった。
『この魔法帽・・・大丈夫なのか・・・?』




