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夏休み3日目・・・
午前中、母が家に居ないので、
毎日、祖父母が、家に来ていた。
夏休みの直前に、祖母は退院したのだ。
熱心に、漢字を覚える僕に、祖父母は、
ご褒美を買ってあげると言い出した。
僕は、この時を待っていた。
先生や学校が、不要に成る、この時を・・・
算数や理科の教科書は、理解出来ない。
先生に習わないと、成立しない様に、
作られているのだ。
それ以外の教科書は、答えが書いてある。
覚えれば、それで終わる・・・
しかし、算数と理科の教科書には、
答えが書いていないのだ。
そこで、僕は、算数と理科の教科書を持つと、
祖父母と姉と一緒に、大型書店に向かった。
店員さんに、教科書を見せて、
答えが書いてある本を、探してもらう。
当時、僕は、参考書というモノを、知らなかった。
しかし、夏休み前に、同級生が、
「教科書の答えが書いてる本がある!」
と言って、自慢気に持って来たのだ。
それがあれば、先生や、学校など、不要である。
『自分1人で勉強が出来る・・・』
これは、幼稚な発想では無い、事実であった。
祖父母に、参考書を買ってもらった事で、
僕は1人で、勉強が出来た。
1人で、先に進めるのだ。
小学1年生の、算数や理科など、簡単である。
結果、漢字を覚える合間に、
算数や理科の、勉強を行った。
そして、夏休み開始から1週間・・・
僕は、夏休みの宿題と、
小学校で習う、漢字、全てと、
小学1年の、算数と理科の全てを、終わらせていた。
祖父は、豪快な事が、好きである。
結果、祖父は、僕に、
小学校、全学年の、算数と理科の参考書と、
その学習ドリルを、買って来た。
僕の目的は、脳を疲れさせる事だった。
だから、妥協はしなかった。
勉強、神社、勉強、神社、勉強、
豆腐、勉強、神社、勉強、神社。
日に日に勉強の効率が上がり、
夏休み開始から2週間・・・
僕は、小学校、全学年の、算数と理科を、終了。
祖父が喜び、全学年、全教科の参考書と、
その学習ドリルを、買いに走った。
そして、両親は、異変に気付いた。
姉が、グレているのだ。
田舎の小学3年生が、不良ぶった所で、
眠たくてグズってる。
そんな程度だった。
しかし、姉は、一生懸命に、
グレてアピールを、していた。
姉から見れば、僕は、守るベキ存在だった。
ヒザから血を流すまで、殺虫剤の缶を指で突き・・・
筋肉疲労で、病院に運ばれる弟・・・
姉から見れば、僕は、自分よりも劣った存在・・・
そんな弟に、学力、体力、人望、
それら、全てが、抜かされたのだ。
僕は、1日に何度も、神社で手を合わせているので、
その事が噂に成り・・・
僕は、祖母思いの、素晴らしい孫、
という事に成っていた。
結果、僕の事が、話題に成り、
ブドウ糖が、不足体質の事を知り、
僕に、甘いモノを、くれる人まで現れた。
もちろん、姉の分もある・・・
しかし、それは「ついで」である・・・
姉は「いじけて」いた。
結果、両親は、対応に迫られた。
姉の誇りを、回復させる必要があった。
しかし、それは簡単な事では無かった・・・
夏休み中頃、僕は、全学年、全教科を、
終了させていたのだ。
これに太刀打ちする誇り・・・
そんなモノ、簡単に与える事など、出来なかった。
しかし、事態は急変する・・・
祖母は、和裁士だったのだ。
「わさいし」とは、着物を縫う技術者で、
祖母は、その資格を持っていた。
そして祖母は、ミシンを使う洋裁も出来た。
つまり、着物と洋服が作れるのだ。
そして、その様な事に、僕は、何の興味も無い・・・
「これだ・・・!」
両親は直感した。
もし、英会話教室などに通っても、
僕も通えば、結果は見えている。
その為、僕が興味を持たず、
姉だけが興味を持つ事・・・
それを学ばせる事が、
姉の誇りを、復活させる条件だったのだ。
実際、姉は、服が好きで、洋裁に興味を持った。
豪快好きの祖父が、業者から、
幅150センチ、長さ50メートルの、
水色のツイル生地を、買って来た。
ツイル生地は、作業服などに使われる生地である。
結果、その後、僕は、水色の服を、
着続ける事に成る。
僕は、我慢強いのだ・・・




