表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これは魔法の書です。  作者: わおん
369/2329

369

僕が誕生して、2日目の夜、


僕1人の時間・・・



僕は、植物人間である自分の脳を、


のぞき込んだ・・・



シュンタの所に行く事が目的である。



しかし、何も、起こらない。



何度も試したが、何も起こらない・・・


恐れていた事が、現実と成った。



戻れない以前に、向こうへ行けないのだ。



『どうする・・・?』



『向こうへ行けないという事は・・・』



『僕の無意識魔法も、向こうには行けない・・・?』



『つまり、シュンタは、魔法を失っている・・・?』



その可能性が考えられた。



つまり、今後、僕は、シュンタの事は忘れ、


こちらの原始の世界で、家族と暮らす・・・



その様な選択肢もあるのだ。



『しかし、本当に、それで良いのか・・・?』


『もし、シュンタが悪魔に成っていたら・・・?』



『自分勝手に、魔法を使ったら・・・?』


『それを正義と考え、実行したら・・・?』



『何が起きる・・・?』



『やはり、確認は必要だ・・・』



しかし、もし、僕が行く事で、


シュンタに影響を与え、



それが、事件を生む可能性・・・


それも考えられた。



『どうする・・・?』



などと、悩んでも、


そもそも、向こうに行けないのだ。



僕には「あきらめる」以外の選択肢が無かった。



しかし、


『本当に、あきらめても良いのか・・・?』


『あきらめる事は、正しい事なのか・・・?』


その様な不安が生まれる。



そこで、冷静に考える。



昨日、僕は、自分の脳を観察した。



その結果、不可解な現象として、


僕の意識は、現代に移動した。



そして、その様な事が出来るのは、


僕の無意識以外に存在しない。



『なぜ、僕の無意識は・・・』



『僕に、シュンタを見せた・・・?』



『なぜ、シュンタに、魔法を使わせた・・・?』



残念な事に、僕の無意識は優秀では無い・・・


目先を優先して行動する。



自分が助かるなら良い、


他人の事など、考えない・・・



今助かるなら良い、


その先の事など、考えない・・・



それが、僕の無意識なのだ。



そんな無意識が、僕に、シュンタを見せた・・・


そして、魔法を使わせた。



『僕の、無意識の目的は、何だったのか・・・?』



『それを放置しても良いのか・・・?』



『シュンタを調べる事で・・・』



『何か、重大な発見があるのでは・・・?』



その為に、僕の無意識が、



『僕に、シュンタを見せたのでは・・・?』



と成ると、



『あきらめる訳には、行かない・・・』



しかし、


どうすれば、再び、シュンタが見れるのか・・・?



そして、考えた。



僕は、昨日、現代に行った。



『どうやって、行った・・・?』



そして、気付いた。



『昨日は、現代に行く事が目的では無かった・・・』



元々、僕は、自分の脳を観察したのだ。


その結果、現代に行ってしまったのだ。



僕は、シュンタを見ようなどとは、


考えていなかった。



シュンタの存在など知らなかった。



現代が見れるなど、考えもしなかった。



僕は、あの時、


植物人間である僕を、治療しようと考えたのだ。



そんな事は、絶対にしては駄目である。


それは知っている。



僕の身体は、植物人間でいる事で、


安定した記憶装置として機能する。



半永久的に使える。



つまり、次の身体探しが不要に成り、


災害を防ぐ事が出来る。



その為には、僕は、


植物人間でいる事が重要なのだ。



しかし、母に授乳をさせてあげたい・・・



僕が産まれたのに、


母は、母らしい事が出来ていない。



最初1度、抱きしめたが、


その後は、僕が、空中に浮かんで居るので、


母が、抱く必要は無く成っている。



そして、バリアの効果で、僕の身体は、


食事を必要としない。



その為、授乳も必要無い・・・



僕は、それが辛かった・・・



母が母に成れない・・・


母が母の誇りを持てない・・・



僕は、その様に考えてしまう。



それが僕に、軽率な行動を与えた。



昨日の夜、僕は、自分の脳を観察したのだ。



もちろん、見た所で、


僕に、それを改善する知識など無い・・・



しかし、僕には、変化魔法がある・・・



生前、2枚のガラス片を、


1つの固まりにした事があった。



それは、僕の希望通りの変化だったのだ。



そんな僕が、植物人間の脳を見た場合・・・



僕は、その脳を、正常な脳へと、


変化させる可能性があるのだ。



それを理解した上で、


僕は、昨日の夜、自分の脳を観察したのだ。



その結果、なぜかシュンタが見えたのだ。



では、母を為を思い、脳を観察すれば・・・



駄目だと理解しながら・・・


脳を観察すれば・・・



僕は、その事に気付き、


それを実践した。



すると、次の瞬間、シュンタが見えた・・・



シュンタは、ホームセンターにいた。



そこで、紙コップを選び、


レジに向かう。



僕には、シュンタの考えは解らないが、


彼の心は理解出来た。



現在、彼の心には、


不安、あせり、期待、


その様な感情が渦巻いていた。



おそらく、シュンタは、今日、朝起きて、


再び実験を行ったのだ。



しかし、何も起こらなかったのだ。



だから、落ち込んで居るのだ。



再び、瞬間移動を使ってみたいのだ。



その結果、原点回帰・・・



つまり、初めて、瞬間移動に成功した時と同様、


紙コップを使う事を考え、


今、それを買いに来たのだ。



その為、シュンタは、あせっている・・・


今すぐ、実験したいのだ。



再び、瞬間移動を使いたいのだ。


使える事を、確認したいのだ。



僕には、彼の、そんな心が理解出来た。



ところが、そんなシュンタが、レジに向かう途中、


前方から、カートを押した夫婦が近付いて来た。



その瞬間、シュンタは、それが当然の事の様に、


夫婦に通路をゆずった。



その後、レジで支払いを済ませたシュンタは、


それが当然の様に、レジ係の人に、お礼を言った。



そして、シュンタは、


ホームセンターを出た所の、


公衆トイレに向かった。



トイレには、誰も居ない。



シュンタは、


購入した紙コップと取り出し、


紙コップに水道水を入れ・・・


その後、個室に入る。



シュンタは、右手で、紙コップのフタにすると、


洋式便器を見た。



しかし、何も起こらない・・・


「コップが大きい・・・」



現在、彼が持っている紙コップは、


自動販売機で、使用されるサイズである。



しかし、


前日に、彼が瞬間移動を行った紙コップは、


小さいモノだった。



ピンポン球を入れたら、


少し、はみ出す・・・


その様な、小さな紙コップだったのだ。



しかし、その様な特殊なモノは、


このホームセンターでは、


売っていなかったのだ・・・



すると、シュンタは、少し考えたが、


次の瞬間、紙コップの水を口に入れた。



その直後、


紙コップの置き場所に困るシュンタ・・・



リュックは、ドアのフックに、かける事が出来るが、


紙コップを置く場所など、ある訳が無い。



便座に置くか・・・


床に置くか・・・



シュンタには、悩み所の様であったが、


シュンタは、便器から離れた床に紙コップを置いた。



そして、手を「おにぎり型」にして、


手に、すき間を作り、


そこから、口の中の水を流し込んだ。



そして、指を閉じ、


通称「おにぎり」にして、


便器を見る。



次の瞬間、シュンタは、手を開いた。


すると、その手は乾いていた。



それを見て、喜ぶシュンタ。



しかし、次の瞬間、シュンタは悩む。



床の置いた、紙コップには、


まだ、水が残っている・・・



それを使って、もう1度実験するか・・・?



それとも、新しい紙コップを出して、


水道水を入れに行くか・・・?



しかし、それを誰かに見られたら・・・?



トイレの水道水を、紙コップに入れる少年・・・


それを見た人は、何と思うだろうか・・・?



しかも、その後、その紙コップを持って、


個室に入るのだ・・・


完全に不審者である。



その為、シュンタは覚悟を決めた。



1度、トイレの床に置いて紙コップを手にして、


その中の水を口に入れた。



そして「おにぎり」・・・


結果、便器の水が波打ち、


シュンタの手は乾いていた。



これに満足したシュンタは、時間を確認した。



時刻は15時9分・・・



つまり、昼の3時9分である。



ちなみに、


原始時代で暮らす、僕の家族は、


日没に成ると、寝る・・・



その後、僕の意識は、現代に来たのだ。



ところが、その時刻は、昼の3時・・・



つまり、原始の世界と、現代世界では、


数時間の時差があるのだ。



などと、考えていると、シュンタは、


トイレの個室を出た。



そして、


今使った紙コップを、ゴミ箱に捨て、


トイレを後にした。



シュンタは、出来る事なら、


もう1度、実験したかった。



トイレには、まだ、誰も居ない。



だから、新しい紙コップに、


水道水を入れる事は出来た。



しかし、彼は、それをせずに、


トイレを後にしたのだ。



なぜなら、睡魔を警戒したのだ。



前日、彼は、風呂場での実験中に、


寝落ち寸前・・・


その様な睡魔を経験した。



つまり、


このまま、公衆トイレで実験を行うのは、


危険なのだ。



だから、彼は、実験を切り上げたのだ。



まだ、続けたい・・・


その気持ちを、振り払ったのだ。



シュンタには、その様な自制心があるのだ。



彼は、自転車に乗り、家に向かった。



途中、老人に道をゆずり、


待ってくれた人には、礼を言う。



シュンタは、好青年に見えた。



しかし、途中、無意味に思える信号があり、


シュンタは、左右を確認すると、


赤信号を無視して、道を渡った。



シュンタは、堅物では無いのだ。



ところが、次の赤信号・・・


シュンタは、停車した。



その気に成れば、強引に渡れるのだが、


シュンタは、それをしなかった。



彼は、無謀では無いのだ。



その時である。



シュンタは「咳」をした。


と同時に彼は、右腕で、口を隠した。



それを見て、僕は、理解した。



『シュンタは、発動する人間なのだ・・・』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ