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これは魔法の書です。  作者: わおん
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僕が誕生して、初めての夜、


家族は、全員寝ている。



しかし、僕は眠れない・・・



植物人間である僕の身体は、


バリアに守られ、直立状態で、


地上1メートルの位置に、浮かんでいる。



その様な訳で、僕1人の時間・・・



僕は、自分の身体を観察した。



通常、無意識的に発している回復魔法だが、


そこに意識を向ける事で、


健康状態をチェック出来る。



『全く問題無い・・・』



植物人間という、問題のある状態・・・



本来なら、大問題である。



しかし、僕には、問題点を探し出す事が、


出来なかった。



それは、当然であった。



僕の無意識は、自分の意思で、


植物人間に成る様に、胎児の僕を成長させたのだ。



つまり、僕にとって、


植物人間が普通の状態であり、


健康な状態なのだ。



植物人間であれば、


バリアの効果で、半永久的に守る事が出来る。



食事も運動も必要無い。


成長もしない。



生まれた日の状態のまま、


僕の記憶装置として、機能を続ける。



しかし、もし、僕が脳に影響を与え、


僕の身体が、動く様に成った場合、


僕の身体は、食事を必要とする。



そして、成長する。


つまり、老化する。



その結果、数十年後には、僕の身体は死に、


次の身体が必要に成る。



それを防ぐ為には、


植物人間でいた方が、合理的なのだ。



例えば、


もし、僕の身体が動く様に成った時、


僕の耳を切り落とし、


それを、バリアで守る。



つまり、耳の細胞を、僕の記憶装置として、


バリアの力で、半永久的に守る・・・



『そんな事が、出来るのだろうか・・・?』



おそらく、不可能である。



魔法は、守る為に発動する。



そんな僕の耳を切り落とす事は、


不可能なのだ。



父に、お願いして、切ってもらうとしても、


僕の無意識魔法が、それを妨害する。



つまり、僕が、僕の脳を変化させ、


植物人間を脱した場合。



そこに待っているのは、


老化であり、


肉体の死である。



結果、その後、僕は再び、


生まれ変わる事に成る。



つまり、


次の誰かを、僕の母として、


利用する事に成るのだ。



『そんな事は、出来ない・・・』



僕は、その事を、充分に理解している。



だから、僕は、植物人間であるベキなのだ。



世界への影響を減らす為には、


植物人間である事が、


最善なのだ。



ところが、


人間は、愚かである。



明日、テストなのに、


部屋の掃除を始めたり・・・



ダイエット中なのに、特別な理由を考えて、


甘いモノを食べたり・・・



生前、僕は、その様な人を馬鹿にしていた。



しかし、現在、僕は、そんな馬鹿の1人だった。



僕は、千里眼を使い、


自分の脳を観察したのだ。



脳を見る事に、何の意味があるのか・・・?


自分にも解らない。



もし、医学的な知識があっても、


脳を見た所で、


植物人間を脱する方法など、解らないのだ。



当然、僕も、それを理解していた。



だから、見ても影響など無い・・・


その様に考え、軽い好奇心で見てしまったのだ。



しかし、僕が見る場合、


それは、千里眼である。



そして、その千里眼は、


この10ヶ月で進歩している。



ズーム機能、音を見る千里眼、見えない手、


様々な機能が働いている。



つまり、


そんな僕の千里眼が、


脳を見たのだ。



心の中で、回復を願いながら、


脳を見たのだ。



その瞬間、僕は、奇妙な光景を見た。



『現代・・・?』



それは、現代のショッピングモールの光景だった。



そして、僕は、1人の人物を見ていた。



その人物は「シュンタ」仮名である。



その後、解ったのだが、


シュンタは17歳であった。



シュンタは、ショッピングモール内の、


コーヒー雑貨店に来ていた。



彼の目的は、


マカダミアンナッツチョコと、


ドライジンジャーという、お菓子を探す事だった。



彼の祖父は、カラオケ倶楽部に入っており、


その差し入れとして、


マカダミアンナッツチョコを、


持って行く事が多かった。



理由は、安いからだ。



ハワイ土産の、価値が無く成る程、安いのだ。



そして、ドライジンジャーは、


「しょうが」の、お菓子で、


祖母が、咳止めとして食べている。



本当に、その様な効果があるのか・・・?


疑問ではあるが、



彼の祖母は、これが1番効果的と言っていた。



ところが、この2つの商品は、


スポット商品と呼ばれるモノで、


毎回、店にある訳では無い。



数ヶ月間、店頭から、無く成る時期があるのだ。



その為、ショッピングモールに行った時には、


コーヒ雑貨店に行って、


売っていたら、買って帰る。



それが家族の決まりと成っていた。



そして、この日は、シュンタが、


ショッピングモール内の、


100円ショップに用があり、



ついでに、コーヒ雑貨店に立ち寄ったのだ。



そして、この雑貨店は、


通称・タダのコーヒーと呼ばれていて、


店舗によっては、紙コップ入りのコーヒーが、


無料で配られているのだ。



その為、シュンタも、


そのコーヒーをもらい、


店に入った・・・



ところが、その瞬間・・・


シュンタは「めまい」に襲われた。



『倒れる・・・』



彼は、そう感じた。



その後、彼の動作は、無意識によるモノだった。



彼は、とっさに、


ホットコーヒーの入った紙コップに、


右手で、フタをしたのだ。



火傷をするレベルの、ホットコーヒーである。


それが彼の人格なのだ。



もし、そのまま、倒れた場合、


店にコーヒーを「ぶちまける」事に成る。


誰かに、かかるカモ知れない。



しかし、倒れる一瞬の間に、


ホットコーヒーを飲み干せる訳が無い。



だから、手でフタをしたのだ。


倒れる事で、結局は「こぼれる」



しかし、被害は、床だけで済む。



彼は、自分の被害は考えず、


商品に、激突しない様に・・・


コーヒーを、こぼさない様に・・・


それだけを考え、倒れ込んだ。



床に激突する寸前、


シュンタの視界に、ゴミ箱が見えた。



それは、本来、


この紙コップを捨てる為のモノだった。



もちろん、この状況で、


ホットコーヒー入りの紙コップを、


捨てる事など出来なかった。



「ドズン」と鈍い音がして、


シュンタの手には、紙コップを潰す感触が・・・



『しまった・・・』


彼は、自分を責めた。



店内で、少年が突然倒れた。



その光景を見ていた店員が、


「大丈夫ですか!」と声をかけた。



そして、それと同時に、


シュンタは、あやまっていた。



それが彼の人格である。



コーヒーで、床を汚してしまったのだ・・・・



だから、彼は、あやまった。



ところが、彼の手に紙コップは無かった。



周囲を見渡すシュンタ。



しかし、紙コップも、


床に「こぼれた」ハズのコーヒーも無い。



その後、立ち上がり、周囲を確認するが、


見付からない。



それを見た店員に、


「何か、落とされましたか・・・?」


と質問されたので、



シュンタは、正直に、


今、僕は、コーヒーを持って、


倒れたんですが・・・


と言った。



しかし、店員が見渡しが、


周囲に、その様子は無い。



結局、気まずい雰囲気と成り、


シュンタは、店員に、


「お騒がせして、すいませんでした」と


頭を下げ店を後にした。



本当は、


マカダミアンナッツチョコと、


ドライジンジャーを探す必要があった・・・



店に迷惑をかけたのだから、


買って帰るベキなのだ。



しかし、突然、倒れた少年が、


その後も、店で買物を続けたら、


店員さんは、どう思うだろうか・・・?



探している商品が、2つとも無かったら、


どうする・・・?



その様な理由で、彼は、店を去ったのだ。


それがシュンタである。



帰宅後、シュンタは、家族に、


自分が倒れた事を、話さなかった。



シュンタは、父と母と暮らしている。


場所は、大阪、住宅街の一戸建て、



元々は、祖父母の家があった土地に、


家を建てたのだ。



その為、シュンタの家には、


乗用車が1台止められるガレージと、


四畳半ほどの庭があった。


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