341
僕には、バリアを発している感覚が無い・・・
そして、そのバリアが、
何をしているのか・・・?
それも解らない・・・
ドラが死んで、玉に成った事で、
1度、地面に落ちた肉も、
付着した土が除去された状態で、
現在は、再び、母の横に浮かんでいる。
この肉は、3週間以上、腐っていない・・・
僕には、温度は解らないが、
母の話によると、
牛の体温が残っている・・・
つまり、
父が牛の皮をはぎ・・・
内臓を出し・・・
僕がバリアで包み込んだ・・・
その時の、温度が、今も残っている・・・
『それで、なぜ腐らない・・・?』
僕には、理解出来ない。
しかし、優れた能力である。
ところが、ドラは、死んだ。
夜、全員が、僕のバリアで守られた状態・・・
『なぜ、ドラが死んだ・・・?』
『やはり、僕が殺したのか・・・?』
『不要と判断して、殺したのか・・・?』
『一匹いれば良い・・・』
『弱い方・・・ゴン1匹で充分だ・・・』
『1匹を無事に育てれば・・・』
『それで僕の罪悪感は、解消出来る・・・』
僕の無意識は、
その様に判断したのか・・・?
そして、考える・・・
『バリアとは何か・・・?』
『それは、僕を守る為のモノだ・・・』
『僕を守る・・・』
『僕の都合良い状態・・・』
『それを守る・・・』
『それが、僕のバリア・・・』
この様に考えると、
何でも、僕の責任に思えて来る・・・
これまでの、全てが、
僕の悪事に思えて来る・・・
しかし、それは危険な考えである。
僕の罪悪感が大きく成って、
『僕なんて死ねば良い・・・』
などと考えた場合、
僕の無意識魔法は、何を起こすのか・・・?
全く、予想が出来ないのだ。
『バリアは僕を守る・・・』
しかし、その僕が、
死にたいと考えた場合・・・
僕の理屈では、全宇宙が消滅して、
何も無い世界が誕生する・・・
『結局、そんな日がやって来るなら・・・』
『それが今でも、同じなのでは・・・?』
『近い将来、僕は、その様に考える・・・』
しかし、希望もあった。
『死んでは、いけない・・・』
『消滅させては、いけない・・・』
『生きるんだ・・・』
『僕の魔法は、成長する・・・』
『その結果、問題が解決出来る・・・』
『その可能性もある・・・』
その前に、宇宙を消滅させた場合、
全ての素粒子が消えて無く成り・・・
僕の魔法は、役に立た無く成る・・・
だから、宇宙を消滅させては駄目なのだ。
僕は、少しでも長く生きて、
魔法の使い方を理解して、
それで、問題を解決する。
その為に、僕は、生きる必要があるのだ。
『僕には、問題を解決する義務がある・・・』
『問題・・・?』
『では、現在、問題とは、何だ・・・?』
『僕は、何を困っている・・・?』
本音を言えば、
恐竜のドラの死は、問題では無かった・・・
今、本当に困っているのは、
我々山脈の保護である。
家族の為に、必要なのだ。
山脈を再生させる為には、
苗木を成長させる必要がある。
その為には、雨が必要である。
しかし、その雨が、降らない・・・
だから、僕が、魔法で水やりを行っている。
ところが、僕が、水やりを行う事で、
バリアが発動して、
雨が降らないのでは・・・?
その様な可能性があった。
ところが、その後、
雨が3日、降り続いた。
しかし、その後は、雨が降らない・・・
本来なら、毎年、何回もやって来る台風も、
今年は、1度しか来ない・・・
と思っていたら、
台風がやって来た・・・
台風が来た事で、
1つの安心は得られた・・・
しかし、台風が来た事で、
苗木が折れるのでは・・・?
山が崩れるのでは・・・?
その様な不安がある。
僕は、魔法を使う事で、
そんな苗木や山脈を守る事が出来る。
しかし、それを行う事で、
この星の気象環境を、
崩壊させる危険性がある。
だから、僕は、山脈には行けない。
ところが、
実の所・・・
台風が来なかった原因が、
魔法の影響なのか・・・?
津波の影響なのか・・・?
山の保水力の影響なのか・・?
無関係な異常気象なのか・・・?
本当の所は、解らない・・・
『解らないから、困っている・・・』
『では、どうすれば良いのか・・・?』
そして理解する。
『比較すれば良いのだ・・・』
岩塩の大地の向こう側には、
こちらと、良く似た環境があるのだ。
僕は、岩塩の大地の向こう側・・・
つまり、山菜森へと向かった。
本当は、山菜森の向こう側の、
狼山・・・
つまり、通称・狼山脈を見たかったのだが、
そこまで行くと、
原始人と遭遇する危険性があった。
向こうには、我々の姿は見えない。
しかし、僕には見えてしまう。
未熟な魔法使いである僕が、
助けるベキ相手を、見つけてしまう。
その時、僕の無意識魔法が、
何をするのか・・・?
それを考えると、
原始人に出会う訳には行かない・・・
だから、僕は、山菜森の様子を見に来たのだ。
そして、僕は、驚いた・・・




