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声はするが、姿は見えない。
ドラもゴンも、
僕の存在に、納得出来ない様で、
母を「のぞき込む」様に観察していたが、
数分後には、飽きてしまい、
再び、牛にビビリ始めた。
現在、ドラは、
頭から、足までの、
身長が25センチ、
頭らか、尻尾の先までの、
全長が50センチ、
ゴンは、
身長が23センチ、
全長が46センチ程度である。
そして、ドラもゴンも、
タロの事が恐い、
『将来、どう成るのか・・・?』
ドラとゴンは、将来、
身長160センチ以上に成る。
尻尾を入れた全長は、
3メートル20センチを越える。
それが、タロの指示で動くだろうか・・・?
生前、テレビで、
犬がヒモを引き、牛を散歩させていたが、
それは、相手が牛だから出来るのだ。
恐竜の身体能力は、
狼以上だと考えられる。
以前、恐竜が、狼を狩る光景を見た。
それと同種の恐竜が、牧場で働き、
タロと共に、
『牛を誘導出来るだろうか・・・?』
そんな不安を感じていると、
その日の夜・・・
事件は起きた。
深夜、僕1人の時間・・・
父、祖母、母、ドラ、ゴン・・・
全員が同じ場所で寝ている。
僕から発する暑さ軽減によって、
快適に眠っている。
今と成っては、深夜の見張りなど、
全く無意味なのだが、
僕は、眠る事が出来ない・・・
仕方が無いので、
周囲を警戒しながら、
今後の事を考えている。
すると、次の瞬間・・・
僕の回復魔法が、何かを感じた・・・
何かが途絶えたのだ・・・
『ドラ・・・』
それは、突然の出来事だった。
ドラが死んだのだ。
『えっ!まさか・・・』
僕は、木製巣穴から、ドラを出して、
魔法で包み込む・・・
『蘇生だ・・・』
『人工呼吸・・・?』
『心臓マッサージ・・・?』
ところが、
『一体、どの様にすれば良い・・・?』
移動魔法で、ドラの口に空気を送り込む・・・?
動かす魔法で、心臓に振動を与える・・・?
『これで良いのか・・・?』
『移動魔法で、血液を循環させる・・・?』
しかし、どの方向に流せば良いのか・・・?
そんな事は解らない・・・
僕の、あせりに気付いて、
母が目覚ました。
それに続き、
父と祖母も起きる・・・
3人は、その状況から、
ドラに、何かが起きた事を、理解した。
父は、水をくみに行き・・・
祖母は、毛皮を用意した。
しかし、ドラに回復の様子が無い・・・
悩む・・・
僕には、最後の手段があった・・・
『本当に大丈夫だろうか・・・?』
僕は、以前から、回復魔法を制限していた。
あえて弱くする様に、考えていた。
極端な回復魔法を、日常的に受ける事で、
父や祖母の身体が、特殊な成長をする可能性・・・
それを感じたのだ。
『もし、不老不死に成ったら・・・』
『無意味に、生き続ける事に成ったら・・・』
また、その逆に、
成長魔法によって、老化が進むのでは・・・
無理な回復を繰り返し、
寿命を削っているのでは・・・
その様な危険性も考えられた。
だから、僕は、回復魔法に制限をかけた。
実際には『制限をかけたい!』
その様に思っていた。
そして、成功していると信じていた。
以前、僕は、千里眼の暴走に、
危険を感じた事があった。
その時は、真っ白な世界に、包まれ、
何も出来ず・・・
そして、その後、
それまで見えていた母の胎内が、
見えなく成ったのだ。
つまり、僕は、僕の魔法に、
制限をかける事が、出来るのだ。
それが、回復魔法でも可能なのか・・・?
本当に、制限が、かかっているのか・・・?
そんな事は解らないが、
僕は、今まで、回復魔法の力を弱める様に、
心がけていた。
『その回復魔法を解放したら・・・』
『一体、何が起こる・・・?』
僕は、ドラだけをバリアで包み込み、
空中に浮かせた。
すると、他の全てのバリアが、失われた。
母の横に浮かんでいた「肉」も「芋」も
地面に落ちた・・・
魔法の力は、
「うぉぉぉぉ!!!!」などと叫んでも、
上がらない。
では、どの様にすれば、
過剰な回復魔法が、発動するのか・・・?
実は、僕も知らない。
しかし、今使っている全ての魔法を中断して、
『ドラの回復に使う・・・』
『ドラの蘇生は・・・』
『重要だからだ・・・』
その思いが、
魔法の効果を上げる。
僕は、そう信じた。
結果、それは、始まった。
通常、バリアは見えない。
しかし、ドラを包み込んだバリアは見えた。
直径、50センチ、
そして、その内部に、赤い霧が充満している・・・
『血・・・?』
僕が、その事に気付いた時、
それが手遅れである事が、理解出来た。
ドラの身体の末端・・・
つまり、身体の端・・・
つまり、爪の先や、尻尾の先が消えて行く・・・
そして、それが赤い霧と成って、
バリア内に充満して行く・・・
『これは、何なのか・・・?』
『この後、どう成る・・・?』
そんな事は解らない・・・
しかし、途中で止める事は出来ない。
今、止めても手遅れなのだ。
手の先や、口の先や、足の先・・・
それらが失われている・・・
今、止めれば、完全に無駄死にである。
つまり、この現象を続け・・・
その結果、何が起こるのか・・・?
それを見届けた方が、懸命なのだ。




