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僕は、神様など信じていない。
人間の都合に、対応してくれる・・・
そんな神様は、存在しない。
昔の人が、自分の都合で考えたのだ。
無知な人々に、神様を信じさせ、
仕事をさせる。
その為の洗脳である。
そして、
僕は、魔法使いの存在も、信じていない。
僕は、魔法使いであるが、
僕以外に、魔法使いが居る訳など無いのだ。
そんな存在が、過去に存在した場合、
その誰かの失敗によって、
世界は消滅している。
事実として、僕が、誕生した事で、
宇宙の消滅は決定している・・・
これは、回避出来ない・・・
現在の僕が、
どの様な理屈を並べても、
将来、待っているのは、
「退屈・・・」
「うんざり・・・」
その様な感情である。
その時、僕の成長した魔法は、
宇宙を消滅させてしまうのだ。
今の、僕の考えでは、
その様な事は、絶対にしない・・・
しかし、千年後・・・
その約束が、守れるだろうか・・・?
人間の知能・・・
それが生み出す精神が、
千年続く毎日に、耐えられるだろうか・・・?
不可能なのだ。
だから、魔法使いは、いつの日か、
全宇宙を消滅させる・・・
そして、消滅させた事を後悔する・・・
それなら、消滅を行わなければ良い・・・
それは理解出来る。
しかし、理解していても、
退屈はやって来る。
退屈は、苦痛を生んで、
苦痛は、怒りを生む・・・
そして、宇宙を消滅させてしまう。
それが魔法使いの末路である。
そんな魔法使いが、
僕よりも以前に居た場合・・・
僕など、誕生していないのだ。
人類など、存在していないのだ。
僕は、その様に思う。
ところが、僕は、
神様や、魔法使いの存在を、
意識する事がある。
『なぜ、台風が来ないのか・・・?』
台風が来ない事で、
僕が、助かっている事は、事実である。
苗木が折れる事も無く、
山が崩れる事も無い・・・
本音を言えば、
今年は、台風に来て欲しくない。
そして、そんな僕の希望通り、
台風が来ないのだ。
『これは、神様のお陰なのか・・・?』
『僕以外に、魔法使いがいて・・・』
『その魔法使いは、僕よりも優秀で・・・』
『その人が、一定のルールを守りながら・・・』
『僕を、助けているのでは・・・?』
そんな事を、考えてしまう。
しかし、僕には、その考えを、
否定する方法があった。
生前、僕の家の近所にあった豆腐工場・・・
そこの社長の息子・・・
通称・豆腐息子・・・
その豆腐息子は、
とにかく、チャレンジャーだった。
庭で、ドジョウを養殖して、
自給自足を計画したり・・・
田舎の利点を生かして、
楽器の練習を始めたり・・・
とにかく、
様々な事に挑戦していた。
そして、毎回、奇跡が起こる。
豆腐息子が、ドジョウの養殖を計画した日、
大量のドジョウが、無料で手に入ったのだ。
豆腐工場は、地域のホテルや旅館に、
豆腐を納品している。
そして、ある日の事、
ホテルで、トラブルがあった。
ホテルに、大量のドジョウが、
送られて来たのだ。
その送り主は、1週間後、
そのホテルで、イベントを行う会社だった。
その会社が、1週間、間違えて、
ドジョウを注文発送してしまったのだ。
そして、ホテル側で、
ドジョウを処分して欲しい・・・
その様な連絡があったのだ。
結果、大量のドジョウが余った・・・
しかし、その様なドジョウを、
ホテルで使う訳には行かない。
その様な流れで、豆腐工場の社長が、
そのドジョウを貰って来たのだ。
当然、豆腐息子は、
その様な出来事など知らない。
つまり、豆腐息子が、
ドジョウの養殖を考え、
学校で自慢した日に、
家に帰ると、
大量のドジョウが手に入ったのだ。
彼の家には、元々、池があった。
だから、そこで飼う事が出来た・・・
素晴らしい偶然である。
豆腐息子は、
『神様が、やれと言っている・・・』
その様に考えた。
ところが、ドジョウの養殖は失敗した。
鳥が、食べに来るのだ。
そこで、池に、鳥よけネットを取り付け・・・
繁殖方法を調べ、池にフタをして・・・
その様な事は、本当に頑張った・・・
しかし、結局、思う様に増えず・・・
食べるのも不安で・・・
結局は、フタもネットも取り除き、
鳥に食べてもらった。
それ以外にも、豆腐息子は、
塩ビパイプで尺八を作ろうと、
ホームセンターに向かう最中、
近所の老人の、世間話に巻き込まれた。
しかし、その流れで、
近所の人から、
本物の尺八をもらった。
そして、その流れで、老人会の指導が、
無料で受けられた・・・
その様な偶然が、何度もあった。
しかし、彼は、何もモノに出来なかった。
彼が何かを始めると、
毎回、奇跡的な幸運で、
恵まれたスタートが出来る。
しかし、
毎回、現実の壁に直面して、
挫折していた。
つまり、豆腐息子が毎回言う、
『神様が、やれと言っている・・・』
というのは、勘違いなのだ。
僕は、それを見て育ったのだ。
『神様のお陰に思える事・・・』
『それは、全て勘違いだ・・・』
しかし、それでも、
不安を感じる。
『では、なぜ、台風が来ない・・・』
『僕が、山脈上空に、行かなければ・・・』
『再び、台風は、来るのだろうか・・・?』
僕が、山脈に行かず、
魔法の影響を与え無ければ、
自然現象が復活して、
台風が来るハズなのだ・・・
こうして、僕は、1週間、
山脈の水やりを、休む事にした。
真夏に、雨が降らない・・・
水分の少ない山脈・・・
苗木が、枯れる可能性があった。
不安で、仕方ないが、
我慢する以外に、
出来る事が無かった。
一方、恐竜の赤ちゃんは・・・
元気に成っていた。
その理由は、結局、解らない・・・
暑さが原因だと考えられるが、
以前、テレビで、
ペンギンを飼育している家庭が、
紹介されていた。
日本の船員が、迷子の赤ちゃんを保護して、
それを連れ帰り、日本で飼育しているのだ。
北極のペンギンが、
高知県の夏を乗り越えているのだ。
それを考えると、
恐竜の赤ちゃんが、
生息地の夏に、
耐えられないなど、考え難いのだ。
しかし、とにかく、
バリアで守ってから、
元気に成った事は、事実である。
『祖母が、歳を取り・・・』
『寝たきりに成った時・・・』
『僕は、このバリアを使うだろうか・・・?』
『その中で、祖母は、何をして生きるのか・・・?』
『そこで生きる事に、意味があるのか・・・?』
そんな事を考え、
僕は、バリアの中から、
赤ちゃんを出した。
今後の事を考え、
タロの元へと連れて行く。
タロの仕事を、見せる為である。
現在、恐竜に赤ちゃんは、ペットである。
しかし、将来は、家族として役に立ってもらう。
それが出来ないのなら、
処分する。
家族の食料を、無駄に消費して、
ナイフとムチを振り回す・・・
そんなペットなど、不要なのだ。
そして、その様な、
役立たずに、育てない為に、
今から、指導するのだ。
以前、赤ちゃんは、
「エサ、欲しい・・・」と話ていた。
もちろん、言葉を話す訳では無い、
母に向かい、その様な意志を発し、
その意志を、僕の無意識が、
言葉に変換して、
僕に伝えていたのだ。
つまり、僕の言葉は、
意志に変換され、
それは、赤ちゃんに伝わるのだ。
実際、タロと僕は、
その様にして、会話をしている。
しかし、これまで、
恐竜の赤ちゃんに、
話しかけた事は無い。
この2匹に赤ちゃんは、
先日まで、家族では、
無かったのだ。
捨てる可能性・・・
殺す可能性・・・
死んでしまう可能性・・・
それらを考えると、
話をする事など、出来なかったのだ。
しかし、今は、違う、
『将来、牧場で働いてもらう・・・』
その為に、育てるのだ。
遊びでは無いのだ。
そこで、僕は、初めて、
恐竜の赤ちゃんに、話しかける事にした。




