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父と、祖母は、蒸し器に関して、
真剣に考えた。
その結果、2人は、笑い始めた。
2人は、真実に気付いたのだ。
蒸し器など不要なのだ。
僕も、その事実に気付き、
驚き、そして、動揺した。
『あぶなかった・・・』
僕は、もう少しで、粘土の作り方を、
2人に、教えてしまう所だったのだ。
そして、2人に、全く無駄な蒸し器を、
作らせる所だったのだ。
僕は、毎回、考えに考えて、
『これ以外に方法は無い・・・』
そう考え、
それを正しいと信じて、行動している。
しかし、その多くは、間違っているのだ。
僕は、その原因に心当たりがあった。
生前、僕の祖父には、
変った習慣があった。
それは、風呂前に歯を磨くのだ。
そして、口の中の泡を吐き出さずに、
そのまま、お風呂に入る。
その後、数分間、口の中の泡を、
そのまま放置する。
その後、洗い場の排水口に吐き出す。
しかし、その時、口をすすがない。
僕は、祖父に、その理由を聞いた。
すると、祖父が使っているハミガキは、
歯を再石化させる成分が、入っているらしい。
その為、少しでも長い時間、
口の中で放置した方が効果が高い・・・・
だから、吐き出した後も、
口をすすがない。
僕は、それを聞いて、
『なるほど・・・』
と納得した。
祖父の考えは正しい・・・
僕は、その様に思い、
僕も、それを実践した。
ところが、
僕の両親が、それを止めた。
「危ないから、止めなさい・・・!」
という理由だった。
一体、何が危ないのか・・・?
日本の安全基準を、
クリアしているハミガキ・・・
しかも、再石化効果がある製品である。
つまり、
その成分を、口の中に残す事も、
計算で作られているのだ。
それを、口の中で3分放置する事の、
何が危険なのか・・・?
ところが、
両親は、僕に言った。
「では、なぜメーカーは、その事を伝えない・・・」
「口を、すすがないで下さい・・・」
「なぜ、それを、消費者に伝えない・・・」
「それで、劇的な効果があるなら・・・」
「それを宣伝する事で・・・」
「ハミガキの売上げが、アップするでしょう・・・?」
「それに、湯船の吐き出してしまったら・・・?」
「どうするの・・・?」
それを聞いて、僕は、
『なるほど・・・!』
と思った。
全く、その通りである。
つまり、
祖父の考えも、
両親の考えも、
そのどちらも正解なのだ。
実用を重視するなら、
祖父の考えが正しい。
実際、祖父は、20年以上、
その方法を続けて居るし、
以前、メーカーに、その安全性を確認している。
その時、ハミガキ後、口をすすぐ事で、
その効果が減少する事も、聞いている。
つまり、祖父は、事実を言っているのだ。
正しいのである。
しかし、家族の一員として考えた場合、
両親の考えが正しいのだ。
もし、お風呂で、セキが出たら・・・?
吐き出した泡が、風呂に入ったら・・・?
その後の入る人は・・・?
当時、小学1年生だった僕の場合、
その様な問題は、必ず起こるのだ。
つまり・・・
僕が、考えに考え、
正しいと考えた事・・・
それは、本当に正しい、
その様な一面もある。
しかし、別の視点で考えた場合、
それは、明らかな問題なのだ。
山脈の緑化だって、
間違いでは無い。
しかし、僕が、再生した環境は、
自然とは呼べない・・・
『では、どららが正しかったのか・・・?』
それを決めるのは、
個人の好みである。
つまり、正しいか、どうか・・・?
それは、好き嫌いで、決まるのだ。
僕は、その事に気付いた。
『3人の価値を歴史に残す・・・』
これは、正しい事だと思う。
しかし、それは、僕の立場で考えた場合である。
3人に食われる、牛の立場・・・
それを無視しているのだ。
『なぜ、生き物は、子孫を残すのか・・・?』
実は、それに、意味など無いのだ。
機能的に、子孫を残しているだけである・・・
虫や植物は、この世界の未来を考え、
誕生している訳では無い。
人間も同じ事である。
元々、人間の誕生には、意味など無いのだ。
しかし、人間は、それでも理由を求める。
納得する「何か」を求めて苦悩する。
その結果、生まれるのが価値観であり、
それが正しいか、どうかは・・・
『好き嫌いで決まる・・・』
これは、とても危険に思えた。
好きだから守り、嫌いだから排除する・・・
これを繰り返した場合。
戦争が起こるのだ。
そして、国民が被害を受けるのだ。
一部の政治家の好き嫌い・・・
それに巻き込まれる。
それが戦争なのだ。
『困った・・・』
『では、僕は、何を判断基準に・・・』
『正しい選択をすれば良いのか・・・?』
僕の苦悩の日々は続く・・・




