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これは魔法の書です。  作者: わおん
323/2348

323

3人の寿命は解らないが、


現在、父と母が、15歳


祖母が30代と仮定して、



今後も、


僕の回復魔法の影響を、受け続けた場合、


50年以上は、生きると考えられる。



その間、3人は、


様々な発明、発見を繰り返し、進歩して行く。



今まで、僕は、そんな3人に、



革袋の作り方、


イカダの作り方、


縄文式住居の作り方、


カマド、燻製、など、



様々な事を教えて来た。



そして、今日、


粘土の作り方を、教える事に成る・・・



『しかし、本当に、それで良いのか・・・?』



生前、テレビで見た仔猫の過保護飼育が、


心に引っかかる・・・



少し困っていると助ける・・・


助ける側は、それで気分が良い、



しかし、助けられる側は、


それにより、進歩のチャンスを、


失う事に成る。



毎回、僕が、教える・・・



祖母は、それを発展させるが、


元は、僕が教えた事である。



本来なら、祖母が発明するハズのモノを、


僕が、先回りして教えてしまう。



その様な不安を感じる。



タイムトラベラーが、過去に行って、



発明者が現れる前に、


周囲の人間に、


教えてしまったら・・・?


歴史は、どう成る・・・?



僕は、この星にとって「よそ者」である。



つまり、


僕が、この星の歴史を狂わせても、


僕や、地球が、影響を受ける事は無い。



しかし、この星は、影響を受ける。



僕は、この星の可能性を、考えてみた・・・



将来、この星にも、


レンガを発明する人物は、


現れるハズである。



そして、その人物によって、


その村は発展し、


将来、国に成った、かも知れない・・・



土器を発明する人物が現れ、



その「秘伝」によって、


他の村との、物々交換が有利に成り、



それで村が栄え、


やがで国に成った、


かも知れない。



ところが、


その作り方は、最初から存在した。



全員が知っていた・・・



つまり、「秘伝」では無い・・・



全員が知っている・・・


出来て当然・・・



本来なら、国を誕生させる大発明が、


評価を受けない。



つまり、


僕が、何かを教えた場合、


発明家が、凡人と成り・・・


建国と、国益が、消滅する。



その危険性があるのだ。



魔法は駄目・・・


知識を与えるのも駄目・・・



それは、苦痛であった。



僕は、父、母、祖母の、3人には、


他の種族とは、交流せずに、


この地域で一生を終えてもらう・・・



そう決めていた。



しかし、祖母の賢さ、父の技術力・・・


それを見ていると、



このまま、終わらせてしまう事に、


罪の意識を感じ始めた。



僕は、以前、


岩塩の大地の向こう側の・・・


牛の大地の向こう側の・・・


山菜森の向こう側の・・・


狼山で・・・



原始人の子供を探し、


誘拐する事を、考えた事があった。



その子供を、3人が育て、


文化を受継いで行くのだ。



結果、3人は、死んでも、


3人が生きた価値は、受継がれて行く・・・



もちろん、その様な残酷な事は出来ないので、


その後は、考えない様にしていたが、



最近、3人の素晴らしさを、


このまま終わらせてしまう事に、


不安を感じる様に、成っていたのだ。



ところが、3人の文化とは・・・


それは、僕が教えた知識である。



祖母が自力で考えた訳では無い。



それを、文化として美化して、


残すベキなどと考えているのは、



僕の「ごうまん」ではないか・・・?


その様にも思う。



僕が作り上げた文化を、残す為、


3人を利用する・・・



そして、罪の無い子供を誘拐して、


さらに被害者を増やす・・・



僕が、守ろうとしているのは、


結局、僕の「おもちゃ」なのでは・・・?



もちろん、僕にその様な意志は無い。



家族を、


「おもちゃ」とか、


「ヒマつぶしの道具」などとは、


考えていない。



大切な家族である。



しかし、


3人が死んだ後・・・



『僕は、どうする・・・?』


『僕は、どう成る・・・?』



『退屈を我慢する・・・?』


『何もせずに、永遠に生きる・・・?』



現実的に、それは不可能に思えた。



つまり、僕にも、生きる意味は必要なのだ。



僕が、宇宙を滅ぼさない為には、


僕にも、守るモノが必要なのだ。



『卑弥呼・・・?』



その時、僕は、不意に、


邪馬台国の卑弥呼の事を思い出した・・・



『なぜ・・・?』


そんな事を、考えながらも、



恐竜の赤ちゃんの事も気に成る・・・



増水した山脈の谷間も心配である・・・



現在、僕は、それらを放置しているのだ。



僕が、赤ちゃんに手を貸した場合、



恐竜としての本能に、


悪影響を与える、危険性があるのだ。



山脈を、僕の価値観で手直した場合、


自然の形状を失い、


自然の回復力が失われ、



人間の管理が必要な、山脈に成ってしまう。



それらを、防ぐ為には、


放置する以外に方法が無いのだ。



では、僕は、何の為に存在するのか・・・?



現在、父と祖母が、地面に、


蒸し器の設計図を描いて、


その問題点を、話し合っている。



2人は、思い付きで、作り始める事はしない。


必ず、話合って、問題点を探す。



木を1本、切倒す・・・


それを運ぶ・・・



この時代、それは簡単な事では無い。



その為、考えに考えて、


それから、製作を開始しないと、



1日、必死に頑張っても、


その作業が、全て無駄に成るのだ。



その為、父は、木製バケツ作りを、


断念していた。



木製バケツでも、


お湯が沸かせる可能性はある・・・



しかし、保障は無い。



現実的に考え、


バケツに、水を入れ、


それを、レンガ小屋に入れ、



その小屋を、焚き火で熱する・・・


そんな事が本当に可能なのか・・・?



父と祖母は、真剣に話し合い、


その実用性に疑問を感じたのだ。



1回だけなら、出来る、かも知れない・・・



しかし、今後、毎回、木製バケツを作るのは、


大変な事である。



つまり、この方法は、効率が悪いのだ。



そこで、祖母が考えたのが、


モルタル方式だった。



レンガ小屋の中に、



レンガで浴槽・・・


つまり、お風呂を作り、


それに、ドロ粘土を塗る。



今回、小屋と言っても、


面積は、1メートル四方・・・



レンガの土台を作り、


その下で、焚き火が出来る様にする。



土台の上に、レンガの風呂を製作、



そのサイズ、


50センチ四方、


高さも50センチ、



そして、土台の外周に壁を設置、



これによって、


天井の無い、小屋が完成する。



その上にイカダを乗せ、


そこに芋を並べて蒸す。



その様に考えたのだ。



ところが、


祖母が、疑問を持つ・・・



この地域の、土の性質上、


我々のレンガは、火に強い、



実際、乾燥室は、その土台の下で、


焚き火をしている。



これまで6回以上使っているが、


問題無い。



しかし、水を入れ、それを火で熱しても、


大丈夫なのか・・・?



そもそも、


蒸し器など不要なのでは・・・?



芋を、葉っぱで包み、


土に埋めて、そこの水をかけ、


その上で焚き火をする・・・



この方法で、充分なのでは・・・?



祖母は、その事に気付いたのだ。



『全く、その通りだ・・・』



僕は、衝撃を受けた。



『僕は、何を考えていたのか・・・?』



蒸し器など、必要無いのだ。



それ以前の方法で、


充分に、蒸し芋が作れるのだ。



祖母は、その当然の事に気付いたのだ。



父と祖母は、楽しそうに笑っている。



それを見て、僕は、自分が恥かしく成った。



『粘土の作り方を教えて・・・』



『この星の歴史に、悪影響・・・?』



『僕は、何を言ってるんだ・・・』


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