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恐竜の飼育など、本来、全く必要が無い。
その事で僕は、無駄な時間を使っている。
一方、
祖母の、干し芋作りは、順調だった。
通称・芋には、適度の糖分がある様で、
干した事により、
甘みが増す様であった。
『おそらく、これは、本物の芋なのだ・・・』
DNA鑑定をしたら、
別の答えが出る可能性もあるが、
そんな事は、関係無い。
通常、サツマイモは、苗を植えて育てるのだが、
この芋は、ジャガイモと同様、
芋を植える事で、芋が増える性質を持っていた。
しかも、初めて、この芋を見た時、
それは、山の中で、自然に育ったモノであった為、
その発育は悪く、その外見が「ゴボウ」の様であり、
芋と呼ぶには、疑問を感じるモノだった。
その後、
畑で育てた結果、発育が良く成り、
外見は、「ニンジンの様なゴボウ・・・」であった。
しかし、そんな事で、悩んでも、時間の無駄である。
『結局、これは芋なんだ・・・』
僕は、この植物を「本物の芋」と認識した。
これにより、僕の無意識は、
この芋を、芋として、進化させる可能性がある。
その結果、この植物は、
本来とは違った、進化をする可能性が高い、
結果、癌の特効薬に成るハズだった植物が、
ただの食用芋に育つ可能性もある。
それは、今後の人類に、
迷惑の出来事かも知れない。
しかし、我々にも生きる権利がある。
その為に、この芋を育ってる必要がある。
魔法使いが、植物を芋と認識するという事は、
そういう事である。
僕が、何かを認識すると、進化に影響を与え、
その後の世界に、被害が出るのだ。
現在、父と祖母は、蒸し器を設計している。
地面に絵を描いて、話し合っている。
レンガで土台を作る。
その下で、焚き火が出来る構造にする。
その土台の上にレンガ小屋を建てる。
設計図の上では、肉の乾燥室と変わらない。
しかし、今回の、小屋は、
犬小屋サイズである。
そして、その床の上に、小石を並べる。
その上に、父が自作した木製バケツを置く。
バケツには、水を入れる。
その事を、祖母は、地面に描いた絵を使い、
父に説明している。
土台の下で焚き火をして、
土台のレンガを熱し、
その上の小石に伝え、
小屋の内部を暑くする。
結果、バケツの水が蒸気と成って、
芋が蒸せる・・・
しかし、問題はバケツの耐久性である。
この設計では、木製バケツで、
お湯を沸かす様なモノであった。
『教えるベキなのか・・・』
僕は、ある方法を考えていた。
この地域の土は、粘土質である。
その為、粘土で器を作る事が出来る・・・
つまり、土鍋が作れる・・・
様に思える。
しかし、不純物も多い為、
土を、そのまま使った場合、
その器は簡単に割れてしまう。
僕が、魔法を使えば、
土から、粘土だけを、
取り出す事が出来るのだが、
それでは、
父や祖母の存在価値が、無くなってしまう。
つまり、父や祖母が自力で、
粘土を取り出す必要があるのだ。
そこで考えたのが、
通称・ドロ畑である。
まず、地面に、
幅30センチ、
深さ20センチ、
長さ1メートルのミゾを掘る。
次に、バケツに、森の土を入れる。
そして、水で溶かす。
それを、ミゾに流し入れる。
すると、翌日、水が無く成り、
そのミゾの中には、
森の土が残る。
そして、その表面は、
ピカピキであり、
ヌルヌルである。
そして、それが粘土である。
この方法を使えば、
不純物の多い土から、
粘土を取り出す事が出来る。
もちろん、僕が、山に行って、
粘土層を見つけ、
それを持ち帰れば、
天然の粘土が手に入る。
そして、その後、その発見場所を、
父に教えれば、
理屈の上では、父も、
天然の上質な粘土を入手出来る。
しかし、山までは、200キロある。
そこから、粘土層のある場所まで、
さらに、進む事に成る。
つまり、現実的では無いのだ。
ところが、今回の、
ドロ畑方式であれば、
粘土が自作出来る。
その質は、天然物に比べれば、
最低レベルの物かも知れないが、
現在、僕が考えられる、最善の方法は、
ドロ畑方式なのだ。
『では、教えるベキなのか・・・?』




