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当時、小学1年生、入学から1か月後・・・
ある日、僕は、先生に言った。
「休み時間に、本を読みたい」
すると先生は、その申し出に、許可を出した。
僕は、病的に練習してしまう生徒、
先生は、その事を知っている。
その為、僕を、外で遊ばせる事に、
抵抗があったのだ。
実際、僕が、鉄棒にぶら下ると、
先生が飛んで来て、それを止めた事もあった。
先生だって、必死だったのだ。
その為、僕は、休み時間、
校庭で遊ぶ事が、困難であった。
クラスメートたちも、先生の深刻な雰囲気から、
僕には、近づかない様に、成っていた。
僕と、遊ぶと、殺人犯に成ってしまう・・・
そんな噂まで、流れていた。
しかし、先生は、どうする事も、出来ない・・・
僕の、ブドウ糖が切れた場合、
突然倒れて、死ぬ危険性があるのだ。
「みんな、仲良く遊んであげて・・・」
などと、言える訳が無かった。
そして、そんな僕が、休み時間に、
読書をしたいと、申し出たのだ。
先生に、断る理由は無かった。
結果、僕は、家から持って来た本を、
読む事が、認められた。
クラスメートも、文句を言えなかった。
誰も、僕と遊びたく無いのだ。
僕は、その事が、うれしかった。
その日の夕方、僕の家に、先生から電話があった。
そして、僕は、親に、
本を買ってもらえる様に成った。
これで堂々と、本が読めるのだ。
そこで、僕は魔法の本を、読む事にした。
そして知った・・・
『魔法の本など、存在しない・・・』
しかし、それならと、
魔法が登場する物語を、読む事にした。
ファンタジー小説である。
そして知った・・・
『この本は、愚か者が書いている・・・』
それは、日本人が書いた作品だった。
わざと難しい、漢字を使っていた。
読み仮名が、書いてあるが、
それが無ければ、先生にも読めなかった。
もちろん、先生が、悪いのでは無い・・・
そんな難しい漢字を、得意気に使う、
愚かな作家に、問題があるのだ。
おまけに、日常では使わない言葉を、
多用していた。
先生にも解らない。
『そんな言葉を使う事に・・・』
『何の意味があるのか・・・?』
表現も、誤解を生むモノが多い・・・
「一撃を放った刹那、この世界から姿が消えた」
と書かれても、そこは、ファンタジーの世界である。
死んだのか?
テレポートしたのか?
逃げたのか?
見失ったのか?
数ページ先まで解らない。
それで面白いのなら、問題は無い。
しかし、単なる説明不足である。
そして、
登場人物や地名などが、全てカタカナであった。
おまけに、
「シュラベラティス・ブーゲルグ・ブルゲル」
などと、訳の解らない名前が多い・・・・
その人物は、
ある人からは、シュラと呼ばれ、
ある人からは、ブーゲルグと呼ばれ、
ある人からは、王子と呼ばれている。
そんな人物が、何人も登場する。
無駄な混乱と、誤解を生むだけの名前・・・
意味不明であった。
解り易く伝える。
その気づかいが、欠落しているのだ。
僕の父は、地方記者だった。
新聞を読むのは、専門家では無い、
普通の人である。
だから、事情を知らない人にでも、
解る様に、書く必要がある。
父は、その様に言っていた。
僕も、その通りだと思う。
そんな訳で、
『こんな小説を、読むのは止めようか・・・』
と思ったが、毎日、新しい本を、
買ってもらえる訳では無い。
仕方が無いので、僕は、その本を読み続けた。
そして、解った。
『この作家は、本質を、理解していない・・・』
結果的に、僕は、この愚かな作品によって、
物事の本質を、理解する事と成った。
しかし、僕は、この作家には、感謝などしていない。
あくまでも、ダメな見本であった。




