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現在、北巣穴の上空・・・
巣穴の中に、赤ちゃんが居る事を確認・・・
起きているのに、移動を開始する気配が無い。
そこで、
母の横に浮かぶ肉を、
瞬間移動の応用で切り取り、
母の手の上に乗せ、
その後、着地・・・
母が、徒歩で、巣穴に接近、
先に駆け寄って着た赤ちゃんに、肉を投げ与え、
もう1匹の赤ちゃんは、
別の場所に移動、
そこで、肉を投げ与える・・・
ところが、赤ちゃんは、肉を食べない・・・
『なぜ・・・?』
『親から直接でないと食べない・・・?』
だったら、親恐竜は、
毎回、血だらけに成る・・・
常識的に考えて、その様な訳が無い。
親恐竜の口から、ぶら下がった肉に、
赤ちゃんが飛びかかり、
親の顔に爪を立て、
肉を食い千切る・・・
そんな事を、毎回していたのでは、
親恐竜は、その傷が原因で死んでしまう。
『では、どの様にエサを与えている・・・?』
もう1度、牛の大地に行って、
赤ちゃん恐竜を探すか・・・?
などと思うが、
先日、観察に行った時、
赤ちゃんの姿を全く見ていない・・・
つまり、行っても無駄なのだ。
仕方が無いので、棒の先に肉を付け、
それを、赤ちゃんの前に、ぶら下げる。
すると、赤ちゃんは、警戒しながら、
その周りを歩き回る。
『なぜ、食べない・・・?』
棒は、母が、持っているのだ。
『それなのに、なぜ・・・?』
僕は、合理主義者である。
そんな僕にとって、
この様な状況は、全く納得が行かない。
赤ちゃんは、エサを求めている・・・
母が、エサを与えている・・・
それなのに食べない・・・
そこで、母の手に、皮を巻き付け、
その状態で、肉をつまんで、
赤ちゃんの前に、ぶら下げる・・・
しかし、食べない・・・
『なぜ・・・』
などと、困っている間に、
もう一方の赤ちゃんも、
地面の肉には、関心をしめさず、
母の方へと駆け寄って来た。
このままでは、
赤ちゃん同士のケンカが始まる。
そして、おそらく、一方が死ぬ・・・
結局、母は、素手で、肉をつまみ、
それを、赤ちゃんの前に、ぶら下げた。
すると、
最初に駆け寄って着た赤ちゃんが、
食べた・・・
『どういう理由なのか・・・?』
これを行うと、もう一方の赤ちゃんは、
その場で待機をした。
兄弟が食べ終わるのを、待っているのだ。
ケンカをせずに、待つのだ。
『なぜ・・・?』
『地面に肉を投げるのは・・・』
『兄弟で殺し合えの合図・・・?』
『それが、本能に組み込まれている・・・?』
本当の事は、解らないが、
どうやら、その通りの様である。
殺し合いで、生き残ったモノだけを育てる。
その時、2匹生き残った場合、
積極的な性格のモノが、優先され、
もう一方は待つ・・・
それが、この恐竜の本能の様である。
本能に関して、疑問を持っても、
無意味である。
虫である「クモ」が、
「蜘蛛の巣」の作り方を知っているのも、
本能である。
指導など、受けていないのだ。
恐竜の習性も同じ事である。
人間の理屈など、通用しないのだ。
『本能なら、仕方が無い・・・』
と、僕は思った・・・
ところが、今回、エサを与える母の手が、
あまり傷付いていない・・・
多少の出血はあるが、
病院レベルのケガでは無い・・・
『赤ちゃんが、加減をしている・・・?』
『母を傷付けない様に、考えている・・・?』
母が、ぶら下げた肉は、
ジャンプしなくても、食べれる高さである。
その為、飛び掛る必要性など無い。
しかし、この4日間、
赤ちゃんは、肉に噛み付くと同時に、
ジャンプして、母の腕に一度しがみつき、
肉を食い千切る様に、
飛び下りる・・・
それを繰り返していた。
その時、母の手や腕は、
恐竜のナイフの様な爪で、傷付き出血するのだ。
ところが、今回、1度、その食べ方をした後、
赤ちゃんは、ジャンプをしなくなった。
その後、もう一方の赤ちゃんは、
最初から、飛び掛る事も無く、
ぶら下がっている肉を、飲み込む様に食べた。
これが、この恐竜の4日目の特徴なのか・・・?
『それとも、魔法の影響・・・?』
僕の無意識が伝わって、
母を傷付けない様に成ったのか・・・?
僕には、何も解らなかった。




