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現在、家の近く、
通称・台所に居る・・・
台所は、家の中には無く、
森を出て、湿地川の北岸にある。
そして、今、僕は、困っていた。
保存食を作るのだ。
200個もある芋を、
5個だけ使って、
干し芋を作る・・・
なぜ、5個しか使わないのか・・・?
理由は、僕が、作り方を知らないからだ。
だから、失敗の被害を、最小限にする為に、
5個だけ作ってみるのだ。
しかし、
それを、正直に話して、大丈夫なのか・・・?
家族の、期待を裏切る事に成るのでは・・・?
そもそも、家族は、僕の事を、
何者と思っているのか・・・?
今回、失敗する事で、家族は、
どの様に思うだろうか・・・?
心配だった。
失敗する事が、恥かしかった。
だから、僕は、この場を切り抜ける為に、
それらしき事を説明した。
今回、収穫した芋は、
大きく成長している・・・
その為、
この様な芋で、干し芋を作るのは、
蒸し器が必要である・・・
しかし、
現在、父と祖母は、
家を建てる必要があるので、
蒸し器を、作ってもらう訳には行かない・・・
だから、今回は、
お手軽に作れる方法を説明します・・・
そして、今後、家が完成したら、
その時は、今回の作り方を参考に、
蒸し器を作ってもらいます。
ですから、今回は、5個だけ作ります。
お手軽な方法なので、5個しか作れないのです。
その様に説明した。
嘘では無い・・・
父と祖母の、誇りも傷付けない、
失敗のリスクも最小限に出来る。
こうして、僕は、作り方も、知らないのに、
干し芋の作り方を、説明した。
まず、地面に穴を掘る・・・
そして、芋を洗い、
大きな葉っぱで包む、
それを穴に入れ、
軽く水をかけた土で埋める。
その後、その上で、
焚き火をする。
その説明を、母の通訳して、
父と祖母が、準備を始めた。
もちろん、母も手伝う・・・
実は、この方法・・・
以前、山菜を蒸して食べた時の方法であり、
僕は、それを、父や祖母がやっているのを見て、
覚えたモノだった。
しかし、誰も、その事を指摘しない。
僕であれば、前々から、知って居た・・・
その様に感じているのだ。
家族にとって、僕は、
何でも知っていて、
何でも出来る。
家族にとって、
僕は、絶対的な存在なのだ。
僕は、3人の蒸し芋作りを見ながら、
考えていた。
僕が、生前の世界で、生きていたら、
いまごろ、小学6年生である・・・
おそらく、小学6年生の僕は、
自分の事を、大人と同等と考え、
口が達者というだけで、
周囲の大人よりも優秀であると、
錯覚していたハズである・・・
しかし、この世界に来て、
僕は、理解していた。
僕は、幼稚なのだ・・・
何も知らないのだ・・・
もし、僕が、大人に成ってから、
こちらの世界に来ていたなら・・・
現代で、一生懸命に生きて、
人間として成長して・・・
その後、こちらに世界に来ていたなら、
僕は、今よりも役に立てた・・・
つまり、今の僕は、
役に立っていないのだ。
僕が、凄いのは、魔法であって、
僕では無いのだ。
役に立っているのは、
魔法であって、
僕では無いのだ。
もっと、多くの事を学ぶ必要があった・・・
気付いた時には、手遅れ・・・
子供として、生きれる時期は短い・・・・
子供だから、許される・・・
子供だから、学べる・・・
そんな時間は、直ぐに終わってしまうのだ・・・
まだ、生まれても居ない僕は、
今、この段階で、
子供として生きる権利を、
失っている・・・
家族に期待される存在・・・
もう、引き返せない・・・
僕には、先生が居ない・・・
僕が、先生として、家族の先頭に立って、
生きて行く以外に、選択支は無いのだ。
それが、家族を守る僕の責任である。




